犬たちが人間を見つめる理由
犬がわたし達人間をじっと見つめるとき、それは「意思表示」であったり、信頼の証であったり、あるいは何かを観察しているときであったりします。
意思表示
目は口ほどにものをいう、とありますが、犬たちの目は人間の言葉を話せないかわりにとても雄弁です。「おやつちょうだい」「遊ぼう」「お水が飲みたい」「お散歩行こう」「あのおもちゃ取って」「ごはんちょうだい」「ここを開けて」などなど、一緒に暮らしていると様々な要求をするときの視線やボディランゲージを知ることができますね。
こういった要求をする際、犬たちは目で訴えるほかに前足でひっかいたり遊びの姿勢をとったり、じっと座り込んで見上げてきたり人のあとをずっとついて回ったりといった行動と合わせて訴えてくることが多いです。この要求の目線にはついつい応えてあげたくなりますが、すべてを受け入れていると我儘になってしまったりしますし、無視を続けると要求吠えなどの問題行動につながるので注意が必要です。
信頼の証
もともと動物は「アイコンタクト」を避ける傾向があります。目線を合わせることで「威嚇」となり、攻撃される危険があるからです。しかし犬は家畜化されていく中で言葉が通じないヒトと意思の疎通を図るため、また信頼関係を築くためにアイコンタクトをするようになりました。
現在の犬たちは犬同士では目線を合わせることは稀ですが、人間と目を合わせることで安心感を得たり信頼の情を表したりするようです。
人間を観察している
犬は群れで生活するうえで他の個体をよく観察し、効率よく学ぼうとする生き物です。そのため子犬のころから周りをよく見て、一番近くにいる飼い主の行動やその環境をよく観察しています。
さて、では犬たちはいったい人間の何を観察しているのでしょうか。
犬が観察するポイント
1.人間の行動
犬には何も伝えていないのに、お散歩に行こうと玄関に行くと呼ぶ前に犬がスタンバイしている、なんてことはありませんか? 反対に、動物病院に行くときはいつものお散歩と同じように誘っても何かを察して部屋から出てこなかったりなんてこともあるのではないでしょうか。
犬たちは人間の行動をよく観察しており、これをしたらこれ、あれをしたらあれ、とすべてを結び付けて覚えています。ジャージに着替えていたら散歩に行ける(うれしいこと)、スカートをはいていたら飼い主だけ外に行く(いやなこと)、あのカバンをもったら病院(いやなこと)、あの袋をカサカサしたらおやつだ(いいこと)、など良いこと悪いことを人間の行動に結びつけて記憶し、人間がその行動をすることで自分(犬)に何が起こるのか考えているのでしょう。
2.人間の表情
犬はオオカミより眉周辺の筋肉を動かす能力を得ているといわれています。長い時間をかけて家畜化され、ヒトと一緒に生活するようになり人の表情を観察して真似ることでコミュニケーションをとろうとしているということのようです。
人が笑顔いれば犬にとってもよいことが多く、人が顔をしかめていれば犬にとって叱られたりあまり良いことが起こらなかったりします。人が悲しんでいれば、いつもと様子が違うので気になって近寄りもっとよく観察しようとしますし、その結果どんなことが起こるのかを学んでいるのでしょう。
3.人間同士の関係
群れで生きる上で他の個体同士の関係を観察することは大切です。犬がいる家庭内の人間関係が安定してば犬は安心して暮らすことができます。反対に家庭内の関係が不安定であると、犬と接する人の表情もくもりがちとなり、犬との接し方もネガティブになってしまいます。すると犬はその不安定な関係性は飼い主のネガティブな状態を読み取り、犬自身も不安を覚えて精神的に安定しなくなってしまうのです。
まとめ
犬たちは人間と一緒に暮らすために様々なことを学びます。その学びに重要なのが「観察」することです。何気ない行動の一つ一つを犬たちは鋭い洞察力で観察しています。しかし犬たちの視線は観察のためだけではありません。アイコンタクトをしてより良い信頼関係を築き犬との生活を楽しめるといいですね。