1.大きな音によるしつけ
以前はテレビ番組などで「犬の吠え癖は大きな音で驚かせて止めさせる」といったしつけ法が紹介されていました。インターホンが鳴った際に、犬が吠える前に鈴や金具などを入れた缶を激しく振って大きな音を出して驚かせる、といったような方法です。
ビックリさせても根本的な解決にならない
現在では、このような大きな音で驚かせることによる吠え癖のしつけは効果的ではないという考えが強くあります。最初のうちは愛犬がけたたましい音にビックリして吠えなくなることも多いのですが、慣れてくると結局吠え癖が再開してしまうことも多いです。
驚くことは犬にとって大きなストレスになる
犬にとって「ビックリすること」は大きなストレスとなります。愛犬に必要以上のストレスを与えることは、愛犬の健康面にも精神面にも良くありません。犬は人間の「言葉」によるしつけをちゃんと理解する能力があります。刹那的な荒療治より、根気強く愛犬と向き合ったしつけの方が確実に定着していくでしょう。そして、犬が「なぜその行動をしてしまうのか」ということを飼い主さんが理解してあげる必要があります。
2.大声で怒鳴って叱る
愛犬がいけないことをしたら叱ってあげることが愛情の一環です。しかし、その後で「正しい行動」まで導いてあげなければしつけは完了しません。感情のままに「怒る」という行為は愛犬のしつけに効果的でないどころか、愛犬にただストレスを与えるだけの行為となります。
犬を叱る時のポイント
犬を叱る時には「少し大きめの低い声」を心がけましょう。犬の唸り声をイメージしたような声色にすると、犬本来の感覚に近くなって伝わりやすくなります。犬を叱る際には、必要以上に怒鳴る必要はありません。また、言葉で叱る方が有効な場合と「無視をする」ことが有効な場合がありますので、その状況に合わせた叱り方を実践してみましょう。
愛犬の性格によっては「明確に叱る」ことが必要な場合も
テリア系の犬種はガンコで活発な一面が強いため、飼い主さんが叱ってもあっけらかんとしてあまり響いていない様子のことも多くあります。わんちゃんの性格によっては、飼い主さんの「褒める時」「普段」「叱る時」の声のトーンや大きさを明確にした方が伝わりやすい場合もあります。
3.叩くフリをする
これは1番の「大きな音を出す叱り方」と同じように、犬をびっくりさせたり怖がらせたりしてしつけをする方法です。犬は叩くフリをして大きく手を振りかざすと、耳を下げ目をギュッと閉じて防御の姿勢になるかと思います。その際に、一瞬今まで行っていた間違った行動を止めるかもしれませんが、犬にしてみれば「あ~びっくりした…飼い主さん怖いなあ」という程度でしか響いていないでしょう。
「飼い主さんに隠れてやろう」と思ってしまうかも
そうすると、飼い主さんのいないところで間違った行動を続ける恐れがあります。恐怖や力で止めさせるのではなく、愛犬に「それはやってはいけない行動だ」「それは良い行動だ」ということを理解してもらうのがしつけなのです。
4.ハウスで反省させる
ケージやキャリーバッグなどを「お仕置き場所」にしていませんか?愛犬が間違った行動を取った時に、ケージやキャリーなどの「ハウス」に閉じ込めておくのは効果的ではないしつけ方法です。適正に飼育されしつけをしてもらっている犬なら、そもそも「閉じ込める」というしつけが必要になることはほぼありません。
ハウスは愛犬のパーソナルな安心空間であるべき
本来、ハウスは犬が安心してくつろげる「好きな場所」でなくてはいけません。もちろん家の中はとても安全な場所なのですが、その中でも愛犬のパーソナルな安心空間があることで愛犬の心の安定に繋がります。そんなハウスがお仕置き場所になってしまったら、愛犬はハウスに対して嫌な記憶を抱くでしょう。そうすると、ハウスに入る必要がある時に嫌がったり心が乱れたりしてしまう恐れがあります。愛犬の安心空間を嫌な場所にしてはいけません。
5.マズルをつかんで叱る
ひと昔前は「犬のマズルをつかんで服従させる」といったしつけ方法が一般的でしたが、現在ではマズルコントロールによるしつけは推奨されていません。現在では「犬を服従させる」「飼い主の方が偉い立場になる」といったしつけの概念が効果的ではないと言われています。
マズルコントロールの必要性
犬のマズルはとても敏感で大事な部分なので、基本的に犬はマズルを触られたりつかまれたりすることを嫌がることが多いです。しかし、愛犬の歯磨きや口まわりのお手入れ、動物病院での診察など、犬のマズルや口元に触る必要がある場面はたくさんあります。そのため、マズルコントロールは「マズルを触られることに慣れる」「嫌な気持ちをガマンしてもらう」といったスキンシップ法と言えます。
つかんだ際に舌や唇を噛む危険性も
しかし、マズルを強くつかんで酷く叱ると強い不快感や恐怖感を抱き大きなストレスがかかります。精神的にだけでなく、マズルを強くつかまれると痛みを感じたり、あやまって舌や唇を噛んでしまう恐れもあります。犬を叱る際には、暴力的な行動はほぼ必要ありません。犬は飼い主さんの言葉や声色、表情、雰囲気を察して理解する能力をちゃんと持っている動物です。
まとめ
今回は「愛犬に恐怖を与える間違った叱り方」を5つ解説いたしました。
犬のしつけとは「良いこと」と「間違ったこと」を理解してもらうことです。犬のしつけ方法はたくさん存在し、トレーナーによって意見が違うこともあります。また、犬に対する研究が進むことで今までの常識が覆ることもあります。そして、わんちゃんそれぞれの性格によっても効果的なしつけ法は変わってくるでしょう。
しかし、一貫して言えるのは「叱る」と「怒る」は違うということ。
暴力的な言動でのしつけは、その時は効果があるように見えても根本的な改善になっていないことが多くあります。
- 大きな音でのしつけ
- 大声で怒鳴って叱る
- 叩くフリをする
- ハウスに閉じ込めて反省させる
- マズルをつかんで叱る
以上の5つは愛犬に必要以上の恐怖を与え、しつけに効果的でないどころか飼い主さんとの信頼関係を壊しかねない行動です。
まずは、愛犬を信頼することです。
犬は飼い主の言葉、声色、表情、雰囲気を察する能力を持った動物です。
愛犬のその能力を信頼してあげましょう。
そして、飼い主さん自身も愛犬に信頼してもらうことが必要です。