犬の社会化を失敗させる行為3つ!社会に適応した犬に育てるには?

犬の社会化を失敗させる行為3つ!社会に適応した犬に育てるには?

知らない人や犬に吠え続けてしまったり、車や工事の音に反応して吠えてしまったりといった犬の問題行動のほとんどが「極端な恐怖心」が原因と言われています。飼い主さんや自宅といったパーソナルな世界だけでなく、犬には外の世界のあらゆる刺激に触れて慣れていく「社会化」が必要になります。今回は、犬の社会化に良くない影響がある行動を3つ解説いたします。

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記事の監修

ダルメシアンの犬種向上のため、2001年に「スペイン・ダルメシアン・クラブ」を創立。以降、事務局長として2020年までクラブ運営に携わり、「ブリティッシュ・ダルメシアン・クラブ」協力の下、クラブ大会を企画・開催。クラブ・ブリーダーのダルメシアン聴力検査義務化を実現。また、ダルメシアンの遠足会なども企画し、時に20頭を超えるダルメシアンと野山で遊ぶ。現在、日本におけるダルメシアンの正しい普及と犬種向上に取り組む。

犬の社会化が失敗する原因①外出が少ない

窓の外を見る茶色い犬

社会は家の外に存在しています。犬の社会化とは、

  • 飼い主さん以外の人間
  • 他の犬
  • 街の音
  • 車や自転車

などの外部刺激に順応し、慣れ親しんでいくことを指します。

外出する機会が少ないと、外の世界に身を置いて触れ合う経験が少なくなります。経験が少ないと、犬は外部刺激に対して恐怖心を強く抱く恐れがあります。

犬の問題行動は極度の恐怖心や警戒心によるものがほとんど

飼い主さん以外の人や他の犬に執拗に吠えかかったり、工事の音や車の音に極端に反応したりするなどの問題行動は恐怖心や警戒心の強さが原因であることがほとんどです。

もちろんどの犬にも恐怖心や警戒心は存在しますが、丁寧な社会化が出来ているかどうかによってその度合いに差が出てきます。

外部刺激に触れ合う機会が少ないと経験値も少ないため、些細な外部刺激にもすぐに「怖い」と感じやすくなります。

ブリーダー
鈴木桂子

室内飼いが多くなってきた昨今、散歩の時しか外界に触れないことがほとんどです。

遮音性の優れた住環境が増え、人の生活音以外のものに触れる機会が少なくなり、人との行き来が減った現代社会では、犬の社会性は飼い主の社会性そのものに大きく関わってきています。

犬の問題行動は飼い主にも大きなストレスを与えます。常に警戒していなくてはならず、緊張を強いられますね。ですが、その飼い主が感じているストレスこそ、愛犬が抱えている恐怖心と同一と言えます。

静かな家の中からいきなり騒音に満ちた外の世界に出され、理解が出来ず感じている恐怖、それが犬の社会性を阻んでいる要因です。

犬の社会化が失敗する原因②無理強いする

白い犬を嫌がる茶色い犬

他の犬や飼い主さん以外の人に対して「仲良くさせなきゃ!」と無理に触れ合わせるのも危険です。子犬でまだ他の犬や人に慣れていない状態で、いきなりドッグランを利用するのもあまりおすすめできません。

初っ端で怖い思いをさせないようにする

犬の社会化で大切なのは「慣れること」です。しかし、最初に怖い思いをしてしまうと犬は外部刺激を拒絶してしまう恐れがあります。

初っ端で怖い思いをさせないように、段階を踏んで徐々に外部刺激に慣れていく必要があります。他の犬とトラブルになりそうな場合は距離を取ったり様子を見守ったりするなど、飼い主さんが丁寧にフォローしてあげる必要があります。

「仲良くなる」よりも「平気になる」を目標に

全部の犬がフレンドリーな性格というわけではなく、わんちゃんの性格によってはクールな子もいます。

犬の社会化は「どんな人や犬とも仲良く接する」ということではなく「社会に慣れて順応すること」です。「外の世界には知らない人や犬がいる」ということを知り、慣れていくことなのです。

そのため、無理に他者と仲良くするよりも知らない犬や人がいても平気になることが大切です。知らない犬に敏感な子の場合、まずは威嚇して吠えずにやり過ごすことを目標にしてみましょう。

ブリーダー
鈴木桂子

犬にはそれぞれ個性があり、自我があります。そして飼い主の性格や生活態度といったものも、彼らの精神性を大きく左右します。

お散歩はただ運動させるために外を歩かせるという事ではありません。新しい犬や人に出会い、匂いを嗅ぎあって自分のテリトリーにいる他の存在を認識する、そういった重要な行為でもあるのです。

犬だって人間だって、誰とでもよい関係が築けるわけではありません。でも挨拶をかわせる、それが大事です。そこから先に進むかは、それぞれの相性です。

犬の社会化が失敗する原因③過保護にする

抱かれている怖がる顔の犬

②で「無理に触れ合わせるのは良くない」と記述しましたが、過保護すぎるのも良くありません。

「この子は怖がりだから」となんでもかんでも遠ざけてしまうと、愛犬は外部刺激に触れ合う機会を失ってしまいます。経験値が少ないと、愛犬にとってすべてが未知の恐ろしい存在となってしまう恐れがあります。

触れ合って対応する過程も大切

犬の社会化では「愛犬自身が考えて対応する力」を養うことも大切です。「外部刺激=怖いもの」という単純な反応にならないように、愛犬がその恐怖をどう対処していくか、どう距離を取るのかという対応の過程も大切なのです。

他の犬や飼い主さんとトラブルにならないよう見守りながらも、愛犬に経験を積ませてあげることが重要です。

ブリーダー
鈴木桂子

飼い主が必要以上に愛犬を過保護にするという事は、どういう心理からなのでしょうか。

「分離不安」は飼い主の方にも存在します。その多くは罪悪感からによるものです。長時間の留守番への罪悪感から、家にいる間だけはと過剰な接触をされる、そして留守になると誰にも構ってもらえない時間が長く続く、この濃淡のあり過ぎる生活は犬のバランス感覚を狂わせます。

犬は誰でも飼えるものではありません。きちんと散歩に出せる余裕があり、犬が快適に暮らせる環境を提供できる、それを熟慮してから生活のパートナーとして選ぶべきものです。

飼い主が出してやらなければ犬は外には出られませんし、飼い主が人に会わせてやらなければ、犬は誰にも会えません。犬の問題行動の根本原因が、飼い主の生活習慣や社会性からの場合もあるのです。

成犬からでも社会化できる?

威嚇する犬

犬の正当な社会化期は生後3週~12週(生後3ヵ月)ほどの子犬の頃ですが、犬の社会化は一生続きます。成犬から社会性を改善していくには、飼い主さんの丁寧なフォローと根気強さが必要です。

子犬の頃の社会化期はさまざまな物事に順応しやすい時期ですが、その社会化期を過ぎて成犬になった後では外部刺激に対する順応性が低くなっているためです。

社会化は海外旅行のようなもの

イメージとしては、幼い頃から海外旅行に行き慣れている人と、大人になってから初めて海外に行く人の違いのようなものです。

幼い頃から海外旅行やホームステイなどになれている人は、たとえ困ったことがあっても自分で対策を考えて対応することができます。それは幼い頃から海外に「慣れているから」です。

しかし海外に行ったことのない人の場合、現地の言葉も知らずにいきなり1人で海外にぽつんと置かれたら不安と恐怖でいっぱいになってしまいます。そこで困ったことがあればどうしていいのか分からず「やっぱり海外なんて怖い…日本に帰りたい」と思ってしまうでしょう。

飼い主さんの丁寧なフォローが大切

そこで必要なのが飼い主さんの丁寧なフォローです。見たことのないもの、触れたことのない文化を一緒に案内してあげることで、不安でいっぱいだった海外旅行が徐々に楽しい経験となるのです。

そして、愛犬が「意外と怖くないじゃん」という自信を積み重ねることで、未知の世界に耐性がついてくるのです。

ブリーダー
鈴木桂子

犬の社会化は4週齢あたりから12週齢辺りが最も吸収力があり、それ以降は恐怖心が芽生えると言われています。

生まれた環境はそれぞれ違い、そして新しい飼い主のもとで育っていく環境もまた違います。持って生まれた性格と育てられる環境により、犬の社会性は様々に変化します。

成犬の保護犬の多くは、元の飼い主とのトラウマを多かれ少なかれ抱えています。ですが穏やかな環境を与え、根気良く接していくことで、新しい社会性を学び溶け込んでいくことは十分可能です。

社会性は躾と同じ、何歳になってからでも遅い、出来ないという事はありません。ただ時間がかかるので、飼い主がしっかり向き合う必要があります。

まとめ

鼻で挨拶する犬

今回は「犬の社会化に良くない行動」について3つご紹介しました。犬の社会化とは、自分や飼い主さん、自宅といったパーソナルな領域以外の「外の世界」に慣れ親しんで順応していくことを指します。

  • ①外出する機会が少ない
  • ②触れ合いを無理強いする
  • ③過保護になる

この3つは犬の社会化にとって良くない影響を及ぼす恐れがある行動です。

犬の社会化には「経験」と「飼い主さんのフォロー」が必要です。外の世界のあらゆる刺激を知って身を置くという経験によって、犬は他者との関わり方や人間の世界にあるものに慣れていきます。しかし、最初に「怖い」と思ってしまうと外の世界を拒絶してしまう恐れがあります。

そのため、飼い主さんが愛犬の様子をよく観察して見守るというフォローをしながら、愛犬に「怖くないよ」ということを理解してもらう必要があります。

ブリーダー
鈴木桂子

犬を飼うというのは、飼い主にとっても外の世界との接触を増やします。

毎日散歩で会う人がいて、散歩友達が増える、ちょっと立ち止まってかわす挨拶の間、犬同士も匂いを嗅ぎ挨拶をする…といったように自然と広がっていきます。

無理して濃厚な関係を作る必要はなく、程よい距離の付き合いができる、そういう散歩仲間をまず作っていきましょう。

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