犬の社会化教育とは
文字通り人社会に調和していくための教育ですね。
僕はしつけというより「教育」と捉えています。教え育むことが何より重要なのですよ。先ず、犬には経験を吸収する大切な時期があることを知って下さい!
我々でいう「義務教育期間」みたいなものですね。
犬の社会化期って?
生後8週齡から始まり生後12週齡で臨界期を迎えると言われています。
この期間の様々な経験がその犬の性格を決定すると言われ、犬の生涯で一番大切な時期とされています。好奇心旺盛な時期なんです!
犬に良い印象を刷り込む
日常生活の中で、犬にあなたを始めとする老若男女や子供、環境や物体などに良い印象を与えてあげてください。
サークルの中や室内はもちろん、トイレや浴室やベランダ、散歩コースに車の中。獣医さんやペットサロンetc…。
そうすることで犬はどんな場面でも堂々と自信を持って対応するのです。
犬の本質からいうと、10ヶ月齢辺りから警戒心が増幅してくるので、できれば好奇心が先行する6ヶ月齢ぐらいまでにいろんな経験をさせて上げることをお薦めします。
社会化教育の代名詞「パピートレーニング」
パピーートレーニングの意義とは?
パピートレーニング(子イヌのしつけ教室等)で、パピー同士が楽しそうに遊んだり、飼い主さんのコマンドやハンドシグナルに応えて上手に「オスワリ・フセ・オイデ」などができると、多くの飼い主さんはそれだけで安心してしまい、パピートレーニングの最も重要なポイントを見落としています。
それは、咬む力加減を学ぶことと、いろいろなタイプの犬や人間や社会環境全般に慣れさせることです。
パピーは他のパピーとのケンカ遊びの中で、咬みつく力の加減を学びます。
また、たくさんの犬や人間が集まるしつけ教室は、いろいろなタイプの犬や人間に触れ合わせる重要な機会となりますね。
クルマやバイクのエンジン音や掃除機のモーター音。玄関のピンポン音等、様々な音や振動などに馴れさせることもとても大切です。
飼い主が先手を打つ!~基本的なマナー~
深刻なケースを除き、僕は犬が何歳であっても犬の行動は修正することができると考えています。
ただ、シニア(7歳〜)になったり、それまでに全く人とのトレーニングを経験したことがない犬ほど時間がかかり、改善が難しくなるのも事実です。
犬の行動を改善するには、まず悪い癖を直すことから始めなければならず、根気と時間のかかる作業となります。
それに比べ、悪い癖が身につく前のパピーから、正しい振る舞い方を教える方が効率的なのです。云わば白いキャンバスに色付けするようなものですね。
つまり、犬が勝手に自分で「勘違い学習」してしまう前に、家の中で何を噛めば良いのか、どこに排泄すれば良いのか、いつなら吠えていいか、リードを付けて散歩するときにはどのようにすれば良いか、人とあいさつするときはどうしたらいいか、ということをしっかり教えるのです。
「オスワリ・フセ・オイデ・ツケ・マテ」などを教えるコマンドトレーニングは、自分の犬の姿勢や行動、また居場所をコントロールするためにとても重要です。
そして、このようなコマンドトレーニングは何歳になっても教えることは可能ですが、パピーの頃にトレーニングする方が簡単で、時間もかからず楽しく行うことができますよ。
タイミングが大事!~社会化~
ほとんどのパピーは、成犬に比べ警戒心が無く無邪気に誰にでもなつき、いろいろな物や刺激を怖がることなく受け入れます。
しかし、この性質は成犬になってもずっと続くわけではありません。
4~5ヶ月齢を過ぎたあたりから、徐々に警戒心が強くなっていき、それまでに経験したことがない刺激に対しては、極度に怖がったり、攻撃的になったりすることがあります。
どこに行ってもパニックを起こすことなく落ちついて過ごせるようになるためには、警戒心が強くなる前に、いろいろな刺激に慣れさせる『予防』が重要です。
従って、社会化のトレーニングはコマンドトレーニングなどと違って、パピーの時期に必ず行っておかなければいけないトレーニングなのです。その子の性格もこの時期に形成されるのです。
人に慣れさせるためのトレーニングでは、家族だけでなく、男性・子ども・獣医師・トリマー・お年寄りなど、将来接する可能性がある様々なタイプの人間とふれあう機会を作ります。
そして、抱いてもらったり、身体のあらゆる部位(特に、耳やお腹や尾っぽなど普段あまり触れられないところ)を触って、フードやオヤツを与えてもらいます。
触られることと良い経験を結びつけることで、知らない人は怖い存在ではなく、楽しい存在であるということを犬に学習させるのです。
パピークラスに参加するのもいいと思います。
その他にもパピーのうちに他のパピーと遊ぶ機会を作ったり、車・電車・掃除機などの生活音に慣れさせる、また、花火・雷など、将来犬が恐怖に感じる可能性の高い刺激を経験させておくことも、社会化教育として重要です。
パピーが何か特定の刺激を少しでも怖がっているのなら、できるだけ早いうちに克服させなければいけません。
その刺激を暴露すると同時に、フードやオモチャなどワンコにとって嬉しいものをあたえることで、良い印象、経験と結びつけるようにしていきましょう。
そしてパピーのうちに良い生活習慣を身につけさせましょうね!
家庭犬にとって最も重要なこと
家庭犬として生きていくためには、どんな状況であっても人を傷つけないように育てる必要があります。
恐怖に感じたときや自分の身を守らなければいけないときに攻撃的になるのは犬として当たり前の行動です。
しかし、パピーの時期に咬みつきの抑制を教えていれば、何か突発的なことが起きても相手を傷つけることはありません。
例えば、犬がオモチャを噛んでいるときに、近くで子どもがつまずいてワンコの上に転んで倒れるというトラブルが起きたとき、どんな犬でもびっくりして何らかの反応を起こします。
しかし、咬みつきの抑制をしっかり身につけている犬であれば、「キャン!」と鳴くか、「うぅー」と唸るか、パクッと空咬みする程度で、相手を傷つけることはほとんどありません。
ところが、パピーの時期に咬みつきの抑制を学習していない犬の場合は、ガブリと深く咬みついて、相手に深刻なケガをさせてしまう危険があるのです。
咬みつきの抑制トレーニングは、子イヌの時期に犬同士でケンカ遊びをしながら学びます。
また、犬が飼い主さんの手を甘咬みしたときに適切な対応をすることで、人を咬んではいけないことを学習します。
お近くの専門家にご相談されるのも良いでしょうね。
習わすより慣れさせろ!
社会化の基本的な考え方は「経験し慣れされる」ことです。
犬に様々な経験を積ませてあげることで何事にも動じず、いつでもどこでも『自信』を持って堂々とした振る舞いができるようになるからなんですね。
あなたもそうじゃないですか?
経験があることには落ち着いて対処できますが、したことのない経験をすると「えっ?マジで!ヤバイっしょ…」ってなりますもんね♪
それと同じような感覚です。
ちなみに大型犬は小型犬に比べおおらかで穏やかなのですが、小型犬は警戒心が強く縄張り意識も強い。自分を大きく見せようと虚勢を張る特性があるので、小型犬の飼い主さんはより社会化教育を頑張らないといけませんよ。
そして最も核心なのが
僕が社会化教育の話をするとき、一番力を入れる部分があります。それはなにか?
『飼い主さんのエネルギー』です。
犬がどうこう言う前に先ず、社会化教育をする飼い主さんが「この子にできるかな?」「大丈夫かな?」「これは無理だ」と緊張エネルギーや不安エネルギーを醸し出すことが、失敗の原因になるのです。
犬はどんな時も飼い主さんのエネルギーを感じています。
例えば他の犬と遭遇した時、あなたが「あっ!ヤバイ!吠えるかも知れない」「興奮するんじゃないか!?」と緊張が走ると「ワン!ワン!」と始まってしまいます。
慌てて犬を抱いて引き返したり、コースを変える飼い主さんもおられますよね。
どんな状況でも、どんと構えて動じない飼い主さんの態度が、犬に安心感を与える社会化教育のキモなんですね!
だから飼い主さんも犬と一緒にトレーニングが必要なのですよ。例えば犬を何かにチャレンジさせようとする時、それを犬が嫌がるとしましょう。
ではそれは、階段を降りるトレーニングとしましょうか。
そこで犬が躊躇したら「怖がってるのかな。嫌がってるから無理なんだ」とすぐに諦めたりしてはダメです。
その悪い印象のまま刷り込まれます。
チャレンジさせるなら「大丈夫!君ならできるよ♪頑張ってみな♪」とできる前提で何度も励まし応援してあげないと、犬は前に進めないのです。
ただやり過ぎるとこれまた悪い印象になるので、トリーツ等で上手く誘導するといいでしょう。
※絶対にやってはいけないことは「犬があなたの思い通りに出来ない事にイライラ」することです!穏やかに穏やかに♪
わんぱぱ《今日の格言》
社会化教育は何事も絶対に否定から入らず肯定から入ろう!最後に
犬の社会化教育とは『飼い主さんと犬が互いに学び、互いに成長していく』ことだと考えます。
そして不幸せにならないための『予防』だと覚えておいて下さい。
教え育む喜びと楽しさを噛み締めながら日々ナチュラルに取り組むことが何より大切だと思いますよ。楽しみながらです♪