犬が骨をかじることと口腔衛生の関係
犬のオヤツや好物と言えば、アイコン的にイラスト化した骨が示されるなど、犬と骨というのはセットで考えられがちです。けれども、実際に犬に本物の骨を与えている飼い主さんはそれほど多くないかもしれません。骨をかじらせたり噛んで飲み込んだりすることで起こるリスクについても、獣医師などから多く呼びかけられています。
一方で、骨をかじったり噛んだりすることで歯石が除去され、綺麗になる効果があるとも言われています。犬の歯石や、それが原因で起こる歯周病に悩む飼い主さんはとても多いため、歯磨きよりも犬が喜ぶであろう骨を与えるという方法は魅力的に聞こえます。
犬が骨をかじることで、歯と周辺組織の口腔衛生にどのような影響があるかという継続的な研究が、ブラジルのリオグランドスール連邦大学の動物科学の研究者によって行われ、その結果が発表されました。
骨が犬の口腔衛生に及ぼす影響を調べるための実験
骨を咀嚼することが犬の歯根、エナメル質、歯肉に与える影響を調べる実験には12匹のビーグルが参加しました。犬たちは無作為に2つのグループに分けられ、1つのグループには皮質骨、もう1つのグループには海綿骨が与えられました。
皮質骨というのは、私たちが「骨」と聞いて一般的にイメージする、骨の外側の硬くて密度の高い部分です。海綿骨というのは皮質骨の内側にある海綿スポンジのような構造の比較的柔らかい部分です。犬たちに与える骨は、サルモネラ菌汚染を防ぐため高圧蒸気滅菌されたものが使用されました。
犬には13日間連続して、毎日新しい骨が与えられました。評価の方法として、骨を与え始める前と13日間骨を与えた後の口腔レントゲン撮影、骨を与えて0日目、3日目、6日目、9日目、12日目、14日目に歯の画像を撮影して、歯石が歯全体の面積を占める比率を測定して比較しました。
骨を与えた結果と考察
骨をかじったり噛んだりすることによる影響のうち、歯石の除去については非常に効果的であるという結果が得られました。歯の部位では奥歯である小臼歯と大臼歯についた歯石はほぼ完全に除去されていたということです。
皮質骨と海綿骨の比較では、海綿骨の方がより効果的に歯垢や歯石を除去していました。海綿骨を与えた犬では、最初の3日で大きな歯石が取り除かれ、14日間でほぼ90%の歯石が減少していたということです。
骨を与えるリスクとして懸念される歯根やエナメル質の損傷、食道や腸内での詰まりは確認されませんでした。歯肉への影響は皮質骨では見られませんでしたが、海綿骨を与えられたグループでは4匹に歯肉病変、2匹に歯の間に骨のカケラが詰まっていたことが確認されました。柔らかい海綿骨は小さく尖ったカケラになりやすいことから、歯肉を傷つけたと考えられます。
研究者は、獣医師やトレーナーが骨を与えるリスクを呼びかけているものの、骨の咀嚼は犬の歯石の制御に効果的であると結論付けています。
しかし、骨を噛んだり飲み込んだりすることのリスクを計測するには14日間12匹というサンプル数はあまりにも少な過ぎてデータになりません。実際に骨をかじって歯が欠けてしまったり、飲み込んだ骨が腸に詰まったりして開腹手術が必要になったという例はたくさんあります。
骨を咀嚼することが口腔衛生に良い影響があることが確認されたという研究結果が、骨と同じ程度に効果的で、より安全な代替物の開発につながってほしいものだと思います。
まとめ
骨を咀嚼することが、犬の歯垢や歯石を除去し口腔衛生に好影響であるという研究の結果をご紹介しました。
一方で、アメリカの食品医薬品局は市販されている骨オヤツに対して公式に警鐘を鳴らしています。
犬の「骨オヤツ」にアメリカ食品医薬品局が警鐘!与える際の危険性を考える
犬の飼い主は骨を与えることのメリットとリスクを知り、よく考えた上で選択することが重要です。硬質ゴム製の噛むオモチャや、消化が良く硬すぎない咀嚼オヤツなど、骨の代替となるものも選択肢として、愛犬にとってのベストを考えたいと思います。
《参考URL》
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0228146