犬が散歩中にリードを引っ張ることで起こりうるトラブル
愛犬がお散歩中にリードを引っ張って困る...と悩んでいる飼い主さんは多いのではないでしょうか。引っ張り過ぎて咳き込んでいたり、ゼイゼイと苦しそうに呼吸する姿を見かけることもありますが、引っ張られるほうも大変ですね。
お互いが楽しく安全にお散歩する上でも、犬の引っ張り癖は直した方がいいでしょう。犬がリードを引っ張ることで起こりうるトラブルも多々あるので、覚えておいてくださいね。
飼い主さんが転倒する可能性
お散歩中は、犬にどんな誘惑が待っているかわかりません。犬が興奮して急に走り出してしまうと、リードを引っ張られて飼い主さんが転倒してしまうことも。
体重の軽い超小型犬であればまだ制御できますが、それでも4kgを超えた体重の犬では思っている以上の力で引っ張られるため、油断していた飼い主さんが転倒することも十分に考えられることです。
他にも思わぬ事故やトラブルが
しっかりリードを持っていても、手に巻き付けていたり、両手を使ってリードを持っていなければ、急に引っ張られることでリードが離れてしまうことがあります。
場合によっては、リードは持っていても首輪やハーネスが抜けてしまう、ということも考えられますね。
勢いあまった愛犬が、車道に飛び出して車と接触してしまったり、バイクや自転車と接触してしまったりと、思わぬ事故につながりかねません。
ほかのお散歩中の犬に飛び掛かったり、通行していた人に飛びついてしまって相手が転倒するといったトラブルも。
しっかりリードを持っていても、犬に引っ張られることでそういった事故やトラブルが起こる可能性は十分に考えられることです。
愛犬の体に負荷がかかる
犬のお散歩には首輪やハーネスを使用しますが、リードを引っ張ることで体に食い込み、痛みを生じることがあります。咳き込んだり吐いてしまう犬がいるのは、この食い込みによる体の負荷が原因です。
特に、犬の首にはたくさんの神経が通っていて、とてもデリケートな部位です。首に負荷がかかると、頸動脈が圧迫されて眼球の圧力が上がり目の奥の神経が傷つくことで緑内障のリスクが高まり、気管支や呼吸器官にも大きな負担がかかってしまいます。
また、ハーネスは首輪よりも体にかかる負担は少ないですが、引っ張れば胸を圧迫したり、前足の脇に食い込むといったことがあります。肩関節に負荷がかかってしまうこともあり、関節を痛めてしまう原因ともなり得ます。
犬が散歩中にリードを引っ張る原因
では、どうして犬は散歩中にリードを引っ張るのでしょうか?犬がリードを引っ張るのは、なんらかの原因や理由があります。原因を知ると、なるほど!と思うこともあるので、愛犬とのお散歩時の参考にしてくださいね。
興奮して飼い主さんの声が届いていない
犬はお散歩が大好きですね。お散歩に行ける嬉しさで、興奮して飼い主さんの声が届いていないことがあります。「大好きな飼い主さんと、大好きなお散歩に行ける!」と張り切ってしまって、飼い主さんの声が届いていない状態です。
夢中になると周りが見えなくなる人がいるように、犬もお散歩に夢中になりすぎて周りが見えていません。嬉しさあまっての行動ですが、普段あまりお散歩に行けていない子に多く見られ、お散歩に慣れていない犬も周りのものに対する怖さから飼い主さんの声が届きにくくなります。
引っ張れば誘導できると学習してしまった
愛犬がリードを引っ張ると、そのままついていっていませんか?犬はとても賢い動物ですが、教えてあげなければ学習することはできません。
飼い主さんが犬の後ろからついていくと、「自分の行きたい場所に行ける」「散歩は飼い主さんを連れて行くもの」と勘違いしていることがあります。
リードを引っ張れば大好きな飼い主さんがついてきてくれるだけでなく、自由にお散歩もできるという状況は、犬にとってご褒美のオンパレードです。毎日繰り返されることで、ますます引っ張るという行動が強化されていきます。
飼い主さんが引っ張るから愛犬も引っ張る
飼い主さんとしては、愛犬を思う方向に歩かせようと引っ張りたくなってしまいますね。ところが、この行為がリードを引っ張る原因となってしまっていることも多々あります。
飼い主さんが引っ張ることで、犬は本能で引っ張られまいと抵抗して重心を前に持って行くため、結果として引っ張ることになってしまいます。
犬がリードを引っ張ると、止まらせようと飼い主さんがリードを引っ張る場合も同様です。飼い主さんが引っ張るから愛犬も引っ張る、という悪循環を生んでしまっていたのですね。
飼い主さんとの距離が定まらない
伸縮リードを使用してお散歩している場合に多いのが、リードの長さが変わることで飼い主さんとの距離感を掴むことができず、混乱して引っ張るようになってしまうことです。
リードが長すぎれば飼い主さんの気配を感じられず自由に動いていいと勘違いしてしまいますし、短すぎても引っ張ればリードが伸びることを学習しているため、引っ張ってしまいます。
伸縮リードはとても便利なものですが、車道に飛び出して車に接触してしまったり、伸ばしたリードに歩行者や自転車が引っかかって、愛犬も相手の方も怪我をしてしまうといった思わぬ事故も数多く報告されているため、お散歩のときは普通のリードを使用するようにしましょう。
好奇心が旺盛な性格だから
好奇心旺盛な性格の犬は、お散歩中に飼い主さんを引っ張る傾向にあるようです。お散歩コースを変えて初めての道や、お散歩の時間帯などが変わっていつもと様子が違う、また、落ちているものへの興味から「この先に何があるか知りたい!」と思ってしまいます。引っ張ることはいけないことだとわかっていても、好奇心のほうが勝ってしまうのは性格も関係しているようです。
犬が散歩中にリードを引っ張る時の対策
お散歩中に犬がリードを引っ張る原因や理由を見てきましたが、愛犬が引っ張ったときはどう対処すればよいのでしょうか。そこで、犬がリードを引っ張るときの対策や練習方法についてまとめてみました。
お散歩グッズの見直し
基本的なことになりますが、愛犬のお散歩に使用している首輪やハーネス、リードの見直しをしましょう。
まず、伸縮リードを使用している飼い主さんであれば普通のリードに変えます。普通のリードでも長めのリードであれば、少し束ねるなどして愛犬との距離が1m程度(隣にいるときにリードが少したるむ程度)になるように長さを調整してくださいね。
また、愛犬のお散歩にハーネスを使用している場合、犬の体にかかる負担は少ないですが、首輪よりも指示が伝わりにくいというデメリットもあります。
気管支や心臓に疾患のない若くて健康な犬であれば、引っ張るクセがなくなるまで首輪に変える方法もあります。
首輪が抜けてしまいそうであれば、ハーネスと首輪を着用させ、ダブルリードで安全にお散歩ができるようにしてあげましょう。
ただし、気管支や心臓に疾患がある犬、高齢犬では、首輪の使用はおすすめできないため、注意してください。
アイコンタクトの練習
散歩中に愛犬がこちらを意識して歩くことは安全性の面でも、引っ張りや拾い食いなどのお困り行動を直すという面でもとても重要です。そこでおすすめするのが“アイコンタクトの練習”です。まずは手始めに車通りや人通りの少ない場所で名前を呼んでみてこちらを向いたら、すかさず「いい子だね!」と言っておやつを与えます。
繰り返し練習をしながら少しずつ人通り車通りの多い場所でも練習してみましょう。何度も繰り返して行えば、愛犬自らアイコンタクトをがとれるようになってくるので、歩きながら愛犬と目が合ったら、褒めてあげることが重要です。
こちらに意識が向くようになると少しずつリードを引っ張るが減少し、ちょうどよい位置で歩くようになってくるので、その際にもすかさず手からおやつを与えて「いい子だね、偉いね」と褒めながら歩き続けましょう。
お散歩中のアイコンタクトは、犬の散歩満足度もグッと高くなり、より良いお散歩になることは実証されています。
監修ドッグトレーナーによる補足
散歩中のアイコンタクトはぜひ練習しましょう。散歩中、飼い主さんの方を見ながら必死にリードを引っ張るような子がいないことからも分かるように、引っ張る子のほとんどが前方や地面に意識が向いていて、その意識が飼い主さんの方へ向けば自然と引っ張りは抑制されます。
散歩に慣れている子でも最初は呼んでもなかなかこちらを向かないと思いますので、まずは出来るだけ刺激の少ない場所から練習を始めてくださいね。
犬に引っ張られたら止まる
愛犬がお散歩中に引っ張るならその場で止まり、引っ張ってもついていかないことを教えてあげましょう。また、立ち止まった際に名前を呼んでこちらを見たら褒めることも忘れずに。
飼い主さんがついてこないとわかれば、徐々に引っ張るのをやめてくれます。何度も繰り返し教える必要はありますが、少しずつリードが張りそうになる前にもこちらを見るようになりますので、歩き始める際そのときに少しでも飼い主さんに合わせて歩くことができたら、「いい子だね!」と言ってたくさん褒めてあげましょう。
「おすわり」「待て」といったコマンドの指示を聞ける犬であれば、犬が飼い主さんよりも前に出たら、すぐに歩くことをやめて「おすわり」を促しましょう。座ったら「いい子だね!」と褒めてから再び歩き出します。この方法でもあるき始める際に合わせて歩くことができたら褒めましょう。
方向転換する
犬は先に進もうと引っ張りますが、飼い主さんよりも先に行こうとしたらクルリと方向転換をして来た道を戻るのも対策になります。犬は「何で?」と戸惑いますが、とりあえずは飼い主さんのあとを追って、また引っ張ろうと追い越していくでしょう。
犬に引っ張られる前にまた方向転換をすることで、リードを持つ飼い主さんに主導権があることを理解し、意識がこちらに向くようになっていきます。愛犬自らこちらを向くことがあればすかさず褒めるようにしましょう。何度も根気よく繰り返して教えてあげてくださいね。
飼い主さんが壁沿いを歩く
犬とのお散歩で、車道側を歩かせては犬に危険が及ぶ恐れがあります。車道の反対側を歩かせることが基本となりますが、飼い主さんが壁沿いギリギリに歩いて愛犬が追い越せない状況をつくりましょう。
犬は仕方なく後ろからついてくるようになり、追い越す気配がなくなってきたら徐々に壁沿いから離れて隙間をつくってあげるようにします。
興奮を落ち着かせてからお散歩に行く
お散歩が嬉しくて興奮している犬や、好奇心旺盛な性格の犬では、お散歩に行く前にできる限り興奮を落ち着かせるようにしてあげましょう。
興奮状態でお散歩に出れば、リードを引っ張る力も強く、首輪やハーネスが食い込んで咳き込んだり吐いてしまうことも。
愛犬と一緒に遊んでから外に出たり、一段落ついてからお散歩に出たり、マッサージなどでリラックスさせてからお散歩に行くなど、お散歩前にワンクッションおいてあげることをおすすめします。
監修ドッグトレーナーによる補足
多くの飼い主さんが散歩で体力を発散させようとするのですが、よく引っ張って歩こうとする犬の場合、引っ張りを助長させることになりかねません。犬も自分の体力を発散することに必死なので、こちらの指示を聞きづらくなり、トレーニングも上手く進まないことがほとんどです。
散歩の後半になると引っ張りにくくなるということを多くの方が経験されている通り、発散させておくと引っ張りが減少し、こちらへ意識を向きやすくなりますので散歩前におもちゃ遊びなどで発散させると良いですよ。
イージーウォークハーネスを使用する
少し強制的になってしまいますが、イージーウォークハーネスを使用して犬がリードを引っ張ることを予防するという方法もあります。
犬が引っ張ろうとしても、胸の部分にあるストラップの中央にリードが装着されていることと、ストラップが締まって肩甲骨と胸をおさえることで、前に進みづらくなり、自然と飼い主さんのほうに向きやすくなるという、引っ張り癖をつけないためのトレーニング用のハーネスです。
監修ドッグトレーナーによる補足
このハーネスを装着すると上記のトレーニングがしやすくなるのでぜひ試してみてくださいね。
ただし、長期間使用する中で徐々に慣れてくると再び引っ張りが強くなることが予想されますので、あくまで数週間から数ヶ月間のトレーニングを手助けする道具として使用し、このハーネスがなくとも引っ張らないように練習しましょう。
まとめ:愛犬の引っ張り癖を改善してより楽しいお散歩を!
犬にとってお散歩は一大イベントです。せっかくお散歩に行くのなら、楽しい時間にしてあげたいものですね。
犬がリードを引っ張るお散歩は、犬が自由に歩けて幸せそうに思いがちですが、危険がたくさんあるだけでなく、飼い主さんとのコミュニケーションも不足して質の良いお散歩とは言えません。
お散歩中に愛犬とアイコンタクトができたら、飼い主さんも愛犬も幸せホルモンが分泌されて、より一層楽しい時間となるでしょう。
愛犬の安全を守るだけでなく、より楽しいお散歩となるように、引っ張り癖を直す工夫や練習をしてみてはいかがでしょうか。