自然の保全活動のために働く犬たち
アメリカのモンタナ州に、犬と人間が共に働くユニークな非営利団体があります。団体の名は、Working Dogs for Conservation(保全活動のために働く犬たち)と言います。
絶滅の危機に瀕している動植物を守るために、探知犬として犬を訓練し、その嗅覚を使って様々な方法で保全活動を行っています。その活動はアメリカ国内に止まらず、アフリカ諸国などの団体と協力しながら世界中で活躍しています。
犬の嗅覚がどのように保全活動に生かされているか
アフリカ大陸のいくつかの国では、同団体の犬たちが密猟者の取締り、違法な野生動物取引の取締りに参加しています。密猟者の銃や、違法な動物の輸送などを嗅覚を使って探知しています。
また、動物だけでなく貴重な野生植物が外来種の雑草などに駆逐されないよう、対象となる雑草が土の上ではびこる前に匂いで探知し、駆除するための準備を行います。生態系に悪影響を及ぼす外来種の昆虫も嗅覚を使って自然の中から探知します。
そして最も注目されているのは、犬の嗅覚を使って絶滅危惧種の動物の追跡調査を行うという方法です。サンホアキンキットキツネ、灰色オオカミ、クーガー、ボブキャット、ムース、カワウソ、アメリカミンク、クロアシイタチ、さらには北大西洋セミクジラの追跡まで成功例があります。
絶滅危惧種の生き物をトラッキングする
このたび新しく発表されたリサーチは、アメリカで絶滅危惧種に指定されているヒョウトカゲという爬虫類の追跡調査です。
科学者は保全犬にヒョウトカゲの糞のニオイを検出するよう訓練しました。追跡調査は対象となる動物の糞のニオイを識別して追跡していくことで行います。これによって絶滅危惧種の生き物がどこに生息しているか、その地域にどのくらいの数が生息しているか、何がその生き物を脅かしているのかを明らかにすることができます。
従来から行われている、ワナを仕掛けて生き物を捕獲し、調査の後に元の場所にリリースするよりも安全でストレスのない方法です。
ヒョウトカゲの追跡調査では、メスのジャーマンシェパード1匹とオスのボーダーコリー2匹が4年以上に渡って、カリフォルニアのトカゲの生息地でヒョウトカゲの糞サンプルを検出していきました。
犬たちは1日に1〜2時間働き、トカゲを見かけたときには近づかないよう訓練されているそうです。科学者は採取した糞サンプルから、性別、集団遺伝学、食事、寄生虫、健康状態などを判断します。この方法は今後さらに研究され、大規模な調査に応用することが期待されています。
まとめ
訓練された犬の嗅覚を使っての、絶滅の危機に瀕している野生動物や植物の保全活動についてご紹介しました。研ぎ澄まされた犬の嗅覚というのは一体どこまで能力を発揮するのだろうかと、今更ながら驚くばかりです。
犬の嗅覚を使って働くと言えば、従来はそのほとんどが人間のためでしたが、犬たちが野生動物のために働き、絶滅から救うかもしれないと考えると、嬉しい気持ちになりますね。
《参考資料URL》
https://wd4c.org
https://www.cnn.com/2019/10/30/world/conservation-dogs-endangered-lizard-scn/index.html