罰を与える訓練方法が犬に及ぼす影響の研究結果は心が痛むものだった!

罰を与える訓練方法が犬に及ぼす影響の研究結果は心が痛むものだった!

報酬ベースの訓練と嫌悪刺激ベースの訓練を受けた犬を比較する研究の結果から、訓練方法が犬に及ぼす影響が明らかになりました。その結果は胸の痛むものでした。

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2つのタイプの違うトレーニング方法の比較研究

嫌悪刺激用のプロングカラーを着けられた犬

犬のトレーニング方法を語るとき、2つの全くタイプの違う方法がよく比較に上がります。
1つはトリーツや遊びなど報酬をベースとしたトレーニング方法、もう1つは大きな声で叱る、チョークチェーンを使う、極端な場合には体罰を伴う嫌悪刺激をベースとしたトレーニング方法です。

これらの比較は過去にもいくつかの研究が行われており、嫌悪刺激ベースのトレーニングは効果はすぐに出るけれど、マイナスの副作用があることも分かっています。過去の研究では、警察犬と研究施設の実験用の犬が対象になっており、嫌悪刺激ベースのトレーニングは電気ショックのカラーを使用するものでした。

このたび、ポルトガルのポルト大学の研究者が、もっと身近な例で2つのトレーニング方法がもたらす影響を研究してみようと、新しいリサーチとその結果を発表しました。

同じ研究者は先ごろ、報酬ベースのトレーニングを受けた犬と嫌悪刺激ベースのトレーニングを受けた犬では、飼い主への愛着度に差異があるかどうかを調べる研究を発表しています。

トレーニング中のストレス行動とストレスホルモンのレベルを比較

クリッカートレーニングを受ける犬

研究者は、犬の訓練所に協力を依頼してデータの収集と実験を行いました。
1つのグループは、トリーツや遊びなど報酬をベースとしたトレーニング方法を採用している3つの訓練所でトレーニングされている42匹の犬たちです。
そしてもう1つのグループは、大声で叱ったり、リードを強く引いたりするなど、嫌悪刺激をベースとしたトレーニング方法を採用している4つの訓練所の50匹の犬たちです。

まず犬たちのトレーニングセッションの最初の15分間をビデオ撮影し、犬たちの仕草や行動が観察分析されました。撮影は各犬につき3回ずつ行われました。
予想された通り、嫌悪刺激ベースの犬たちではトレーニング中に「あくびをする」「唇を舐める」などのストレス行動が、報酬ベースの犬たちよりもはるかに多く観察されました。

また全ての犬は自宅でリラックスしているときと、トレーニングセッションを終えた後の唾液サンプルが採取され、ストレスレベルを表すホルモンであるコルチゾールのレベルが測定されました。これも、嫌悪刺激ベースの犬たちでは、トレーニング後のコルチゾールのレベルが有意に上昇していました。

対照的に、報酬ベースのトレーニングを受けている犬たちはストレス行動がはるかに少なく、コルチゾールレベルも正常に保たれている犬が多かったことが分かりました。

嫌悪刺激でトレーニングされた犬は悲観的になる?

悲しそうな顔でこちらを見つめるチョコラブ

上記のリサーチは、トレーニング中とトレーニング直後という短期的な影響を評価したものですが、もう少し長期的な影響も調査されました。

リサーチに参加した犬たちのうち、79匹が1か月後に別の実験に参加しました。
部屋の決められた位置にボウルを置き中にソーセージを入れておきます。犬たちはその決められた位置にボウルがある場合には、ソーセージがあると関連付ける訓練を受けました。

その後、決められたのとは違う様々な位置に空のボウルを置き、犬を放してどのくらい早くそこに接近したかを測定しました。興奮して素早くボウルに走り寄る犬は「楽観的」、ゆっくりとボウルに近づく犬は「悲観的」と評価されます。

実験の結果は、報酬ベースと嫌悪刺激ベースのグループではっきりと違うものでした。
犬が受けているトレーニングの際の嫌悪刺激が強い又は回数が多いほど、犬がボウルに近づく速度は遅くなりました。報酬ベースのグループの犬はボールに近づく速度が速いだけでなく、ボウルの位置が意味するところもより早く学習しました。

犬の悲観的な心理状態は、分離不安やその他の問題行動に関連があることが分かっています。このリサーチの結果から研究者は、嫌悪刺激をベースとしたトレーニング方法は短期的にも長期的にも犬の心理状態にマイナスの影響を与え、犬の福祉を損なうリスクが高いことを示していると指摘しています。

まとめ

撫でられて幸せそうな表情の犬

報酬ベースのトレーニングと嫌悪刺激ベースのトレーニングが、短期及び長期的に犬に与える影響についての研究結果をご紹介しました。

罰を使ったトレーニングが犬のストレスレベルを上昇させ、悲観的な心理状態にさせるというのは心の痛む報告です。
犬を迎えたときに「しつけ」や「トレーニング」を行うことは、犬と人の両方の幸せのために必要なことですが、その方法自体が犬の幸せ度を低くしてしまうことは避けたいものです。

トレーナーや訓練所を利用する場合にも、このことを念頭においてトレーニングの方針を把握し、過去の利用者の口コミなどもリサーチしておくことが大切です。

報酬ベースのトレーニングは、嫌悪刺激ベースのトレーニングよりも時間がかかる場合もあります。けれど、大切な愛犬が恐怖とストレスを抱えてトレーニングを受けるのと、時間をかけても楽しみながらトレーニングを受けること、比較して考える必要がありますね。

《参考URL》
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/823427v1

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    20代 男性 匿名

    忠実と言えば忠犬ハチ公が有名ですよね。死ぬまで飼い主を待ち続けた、あり得ない話ですがそんな犬いたら会いたいですね。おそらく多くの飼い主はそんな関係を望んでいるのではないでしょうか。私自身もその一人です。どの犬より忠実で忠犬に相応しい飼い主になれるよう私は日々考え努力を惜しみません。皆さんも忠犬ハチ公を目指し頑張りましょう!
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