『カイカイ犬のためのプロジェクト』
イギリスのノッティンガム大学の獣医療科学校では、The Itchy Dog Project(カイカイ犬のためのプロジェクト)と名付けられた、アトピー性皮膚炎の犬のための研究が行われています。
このたび、そのプロジェクトの一環として、アトピー性皮膚炎の犬は健康な犬と比較して、ストレスを示す問題行動が多いかどうかという調査分析が’行われました。
人間の場合、アトピー性皮膚炎などで慢性的にかゆみを持っている人は、ストレスから来る大きな心理的負担を報告しており、睡眠障害、うつ病、不安障害などにもかゆみが関連しています。
言葉を話せない犬が、アトピー性皮膚炎から来るストレスをどのように表現しているかが、この研究から分かるかもしれません。
アトピー性皮膚炎の犬の行動に関するアンケート
調査は、アトピー性皮膚炎と診断された343匹の犬と552匹の健康な犬の飼い主に、犬の行動に関するアンケートとかゆみの重症度スコアに回答してもらいデータとしました。
データを均質にするため、犬種はラブラドールとゴールデンレトリーバーに限定されました。
データ分析の結果は、アトピー性皮膚炎の犬は次のような問題行動を高い頻度で示していました。
- マウンティング
- リードを過度に引っ張る
- 多動及び落ち着きのなさ
- 注意を惹きたがる
- 食べ物をねだる
- 過度のグルーミング
- 触れられることを嫌がる
- 反復行動
またアトピー性皮膚炎を持つ犬は、かゆみによって集中力が削がれがちになるため、訓練可能性のスコアが低いことも分かりました。
これらの行動はかゆみの重症度が上がるほど多く見られ、ストレスの指標と見なされる行動とも一致していました。研究者は「犬のかゆみが問題行動とどのように関連し相互作用するのかを正確に知るには、さらなる研究が必要と言っています。
今回の調査の結果は、アトピー性皮膚炎と診断された犬が低レベルの慢性ストレスを経験している可能性を示していると言えます」と述べています。
かゆみは犬の生活の質に悪影響を与えている
犬にとって、かゆみがストレスになることは容易に想像がつきます。けれど、当然ながら犬は言葉でどのくらいかゆいのかを伝えることができないため、かゆみとストレスの指標になるものが必要です。
ここで紹介したプロジェクトは犬のアトピー性皮膚炎について、そのような明確な指標を作り治療に役立てようとしています。かゆみはストレスレベルを上げ、犬の生活の質に悪影響を与えます。アトピー性皮膚炎の治療のポイントとして、ストレスを軽減することがとても重要であることが分かります。
また、アンケートで多く挙げられていたような問題行動が目につく場合、その原因がアトピー性皮膚炎のかゆみから来ていることもあります。アトピー性皮膚炎の他にも、何かしらの痛みや不快感から、人間にとって問題に見える行動につながるのもよくあることです。いつもと違う行動が見られるときには、ぜひ体全体のチェックもしてみてください。
まとめ
アトピー性皮膚炎の犬の飼い主へのアンケートから、アトピーのかゆみが犬にとって慢性的なストレスになっており、それが問題行動につながっている可能性を示した研究をご紹介しました。
犬が痒がっているということに飼い主が素早く気づき適切な治療をすることが、犬の生活の質の低下を防ぐためにも重要です。
愛犬がかゆがっている姿を見るのは辛いものです。治療や予防の研究が進んでかゆみのコントロールが容易になっていくことを祈ります。
【参考資料URL】
https://www.mdpi.com/2076-2615/9/10/813