食べ物を報酬として犬をトレーニングする方法
犬が人間にとって望ましい行動をするために、また犬が日常生活を恐怖やストレスから解放されて過ごせるように、犬のトレーニングが行われます。
そして今日では、犬が望ましい行動をした時に食べ物(トリーツ)を報酬として与え「こういう風に行動すれば良いことが起こる」と犬が学習することで良い行動を定着させる方法が推められています。けれど、なぜこのような報酬ベースのトレーニング方法が良いのでしょうか?そして報酬として食べ物が最も一般的に使われているのはなぜなのでしょうか?
食べ物を使うのは最も簡単で最も効果的だから
アメリカのバージニア工科大学の動物・家禽科学の研究者は犬の基本的な学習プロセスに対して、最も効果的で人道的なトレーニング方法の研究を続けています。その一つとして、犬にトレーニングを行う際の報酬として「食べ物」「撫でる」「褒める」の3つを比較する実験を行いました。
結果は明白で、犬は撫でられたり褒められたりと言った人間との社会的な関わりよりも食べ物のために熱心に行動し素早く反応しました。心理学者で犬に関する著作もあるザジー・トッド博士はこのことについて「上司がいくら褒めてくれても給料をもらえないなら、仕事をすることをやめるでしょう?犬も現実的な報酬を得ることでやる気を起こすのです」と述べています。わかりやすい表現ですね。
食べ物を使うことはトレーニングのほとんど全ての場合に最も簡単で効果的です。それは犬にとっても人にとっても負担やストレスが少ないということでもあります。また飼い主の望む行動を取ると良いことが起こると学習することは、人と犬とが良い関係を築くことにもつながります。
食べ物を使わずに効果的にトレーニングする方法はないの?
食べ物に代表される報酬を使わないで犬の行動を変える方法に、罰を使うものがあります。自然界では痛みを避けることは生き延びることを意味しますから、望ましくない行動に対して痛みを伴う罰を与えることは手っ取り早く犬の行動を変化させます。
しかし罰を使う方法には深刻な副作用があることは、過去の研究から明らかになっています。罰を与えられた犬は、恐怖、ストレス、不安を感じます。それが繰り返されると罰への脅威から、犬が攻撃に転じるリスクが高くなります。またある研究では罰を使った方法で訓練された犬は、報酬ベースの方法で訓練された犬よりも飼い主の顔を見る頻度が低いことがわかりました。罰を使うことで犬は飼い主を嫌なことと結びつけて考えるようになり、犬と人の関係を悪化させることにつながります。
犬が攻撃的になることで咬傷事故が起きるリスクが高くなりますし、飼い主との関係も悪化してしまうのですから、いくら手っ取り早く結果が出るとしても罰を使ったトレーニングを採用するのは賢明とは言えませんね。
食べ物を報酬とした方法を試してみたけれどうまく行かなかったという場合、犬に食べ物を与えすぎている可能性があります。トレーニングの報酬として与えられる食べ物は余分なカロリーではなく、1日の摂取カロリーの一部でなくてはなりません。つまり普通の食事の量を少し減らして、トレーニングでトリーツを食べても摂取カロリーが1日分をオーバーしないようにします。また、犬のやる気を起こさせるためには普段のフードよりも犬にとって価値のあるものを提供することも大切です。チーズや茹でて小さく切ったレバーなど、匂いの強いものが理想的です。
まとめ
犬にトレーニングを行う時食べ物を使った報酬ベースの方法が多く採用されている理由や、罰を使った方法がなぜ望ましくないのかをご紹介しました。
犬のトレーニングはただ単に何かができるようにするためだけに行うのではありません。犬が人間社会の中で不安やストレスを感じないで快適に生きるための望ましい行動に導き、お互いに信頼し合える関係を作るためのものです。このポイントが分かると、食べ物の報酬が持つ意味の大きさがよく分かります。
《参考URL》
https://www.apnews.com/ffebe57f88f640ff92211f84324490c7