従来とは違う、介助犬候補パピーたちの育成方法
盲導犬に代表されるさまざまなタイプの介助犬。通常、彼らは専門の施設で繁殖され生後8週を目安とする離乳期間を過ぎると、ボランティアの一般家庭に預けられペットのように暮らしながら基本的な社会化の経験を積んで行きます。(ボランティアの一般家庭は日本盲導犬協会ではパピーウォーカーと呼ばれています。)一般家庭に預けられた子犬は1歳になるまでの1年間を家族の一員として暮らし、その後に介助犬となるための専門の訓練を受けるというのが、従来の介助犬候補生たちの辿る手順です。
アメリカのノースカロライナ州にあるデューク大学は、介助犬育成にユニークな形で参加しています。介助犬育成のための非営利団体と犬の認知研究センターと共同でスタートしたこのユニークな試みをご紹介します。
大学キャンパス内に「子犬の幼稚園」
デューク大学がこの秋迎えた可愛い新入生は7匹のイエローラブラドールの子犬です。子犬たちは介助犬育成のための非営利団体からやって来て、デューク大学の「子犬の幼稚園」プログラムに参加します。このプログラムは従来の一般家庭に子犬を預ける方法よりも、より多くの人間に接触し社会化の機会を得ることで、介助犬として成功する犬をより多く生み出そうというのが狙いです。
介助犬になるために生まれて来ても、実際には全ての犬が任務に就くことができる訳ではありません。訓練後、無事に介助犬になることができる犬が増えれば、それだけ多くの人が介助を受けることができます。
子犬たちは日中の時間をハンドラーと共に大学のキャンパス内で過ごします。学生を対象に、子犬たちの世話をするボランティアが募集され100人以上の学生が登録されています。
ボランティアは子犬の散歩、排泄物の掃除、子犬のために指定された認知能力のためのゲームと適性検査などを行っています。さらにキャンパスの学生はいつでも訓練中の子犬を撫でたり可愛がったりすることができます。学生たちは忙しいスケジュールに追われているので、子犬の存在が邪魔になるのではないかという懸念もあったのですが、予想に反して学生たちからの反応は非常に好評でした。小さい生き物の世話をすることは心を満たす素晴らしい経験だったという声が多く寄せられているそうです。
このように普通の家庭とは桁違いの人々と接して愛情を受けた犬たちは、血中のオキシトシンのレベルが普通の家庭のペットの4倍を示すことが確認されました。オキシトシンは愛情ホルモンとも呼ばれる、心を落ち着かせる作用のあるホルモンです。
子犬たちの卒業
子犬たちは生後8週で離乳した後に幼稚園プログラムに参加し、20週目で卒業することになっています。子犬にたずさわった人たちは涙を流して犬たちを見送ると言います。
幼稚園を卒業した子犬はこの時点で従来のコースと同じくボランティアの一般家庭に預けられ育てられます。子犬の受け入れを引き受けた人たちは、キャンパスへの再訪問を視野に入れているため、犬たちはまたたくさんの友人と再会することができます。
このプログラムは始まったばかりなので、実際に介助犬として働き始めた犬はまだいません。しかし子犬の可能性を引き出す新しい方法として多くの期待が寄せられており、国立衛生研究所から5年間の補助金も提供されています。
今後の報告が楽しみですね。
まとめ
アメリカで新たに始まった、介助犬育成のためのプログラム「子犬の幼稚園」をご紹介しました。キャンパス内に7匹の子犬がいて、世話をしたり撫でたりすることが歓迎されるというのはうらやましいことですね。犬たちも社会化の機会を多く持つことができ、その結果として最終的に介助犬として合格する犬が増えれば、win-win-winのプログラムだと言えそうです。
《参考URL》
https://www.akc.org/expert-advice/news/duke-puppy-kindergarten-studies-service-dog-socialization/