犬の「満腹感」はとぼしい
ドッグフードのパッケージには、犬の体重ごとに与える量の目安が記載されています。しかし、その量を目安に与えているにもかかわらず、愛犬が「もっと食べたい!」とおねだりしてくることもよく目にします。「足りないのかな?」と思ってさらに与えるものの、その胃袋はまるでブラックホールのように際限がなく…
犬の「満腹」はどこにあるのでしょうか?
本能的な「食い溜め」の習慣
犬がまだ野生で生きていたころは、狩りをして他の動物を食べていました。鋭い牙や速く走れる足をもってしても、狩りは簡単に成功するものではありません。何日も狩りが成功せず、ごはんにありつけないこともあります。
「次はいつ食べられるか分からない」という状態なので、犬は生きていくために1回の食事で目一杯食べておく「食い溜め」の習性があります。その時にすぐ満腹感が押し寄せてしまうと食い溜めができません。ですので、もともと犬は満腹感を感じにくいようになっています。
噛まずに丸飲みスタイル
犬は鋭い歯を持っていますが、その歯は獲物を狩る時や毛皮や骨が付いたままの獲物を食べる時に「引きちぎる」ことに特化した形になっています。人間の歯のように口に入れた食べ物をよく噛んでから飲み込む作りにはなっていないため、犬は基本的にあまり噛まずに飲み込んで食べ物を摂取します。
人間はよく噛んで唾液と混ぜることで食べ物の消化をし始めますが、犬の唾液に消化酵素がほとんど含まれないことも丸飲みスタイルによるものです。胃に入れて初めて消化が始まるシステムのため、人間よりも満腹感を感じるのが遅くなります。
子犬の頃の空腹の経験
ひもじい思いをした子
犬の個性によって、食に貪欲な子もいれば食が細い子もいます。一概には言えないのですが、子犬の頃にひもじい思いをした子は食に貪欲になりやすいという説があります。
子犬の頃に与えられるご飯の量が少なすぎたり回数が少なかったりすると、子犬は生きるために「すべて食べなければ、いつもらえるか分からない!」とごはんに貪欲になるということです。
子犬の頃に「残す」ことを覚えた子は
常時お皿にフードを山盛りに置いておく「置き餌」のスタイルで育った子犬は「いつでも食べられる」という安心感と、目一杯食べてもまだごはんがあることで、満腹になったら食べるのをやめたり残すことを覚える子もいます。
「満腹」でも食べ続けてしまうとどうなるの?
ドライフードは後から膨れる!
ドライフードの場合、お腹の中で消化が始まってふやけるとカサが増します。犬は一気に丸飲みして食べる習性なので、時間差でお腹がパンパンになってしまうことも。物理的に胃がパンパンになると、食べてすぐに吐き戻してしまうこともあります。
嘔吐、下痢
食べ過ぎは胃や腸などの消化器官に負担がかかります。胃の許容量を超えると嘔吐してしまったり、消化不良により下痢になってしまうこともあります。
肥満
人間同様、摂取カロリー過多は肥満の原因となります。特に室内犬は運動量が少ないことが多く、肥満を解消しにくくなるので注意が必要です。肥満は循環器系の病気や呼吸器系の病気、糖尿病や肝臓などの病気、腰や関節を痛めてしまう原因にもなります。
胃拡張、胃捻転
胃拡張とは、食事の際にフードと一緒に飲み込んだ空気や体内で発生したガス、胃液などが胃に溜まることにより胃が膨れてしまう病気です。
胃捻転はその胃拡張が悪化して胃がねじれてしまう病気です。胃捻転になると胃の口がねじれて塞がってしまいゲップもできなくなります。血液の流れも遮断されてしまうことで重い不整脈が出たり、胃壁の壊死などの重篤な症状に発展し、最悪の場合死に至る危険な病気です。
胃拡張や胃捻転は特に大型犬や胴体の長いダックスフンドなどに多い病気です。
犬が満腹の時に見せる仕草
ゆっくりと舌なめずりをする
犬が自分の口の周りをゆっくりと舌なめずりする仕草は「満足している」というボディランゲージです。食後にゆっくりと舌なめずりするのは「ごちそうさま」のサインです。
横たわる、寝る
人間でも、お腹がいっぱいになると横になりたくなりますよね。犬もお腹がいっぱいになると食後に横たわり、グッスリと寝てしまうことも。
食後にお腹を触って満腹チェック!
犬の満腹感は人間よりも鈍く、ドライフードは後から胃が膨れることもありますので、飼い主さんが犬のお腹を触って満腹かどうかをチェックすることもできます。
まずは食前に愛犬のお腹を触り、その見た目や感覚を覚えておきましょう。食後にもう一度お腹を触り、横腹や下腹部の張り感をチェックします。皮がパンパンに張っているならば「もう許容量いっぱい」のサインです。
まとめ
犬の胃袋はブラックホールなのではないかと思えるほど、食欲旺盛なワンちゃんはたくさんいます。モリモリと勢いよく食べる姿は大変可愛らしいものですが、食べ過ぎてしまうと消化不良や肥満の原因になりますし、胃拡張や胃捻転などの重篤な病気の原因になる危険性もあります。飼い主さんが愛犬の「満腹サイン」を見極めてフード量をコントロールしてあげることが大切です。