犬の多頭飼いに必要条件
犬を複数頭飼うにはお金がかかる、気もつかう・・・避けられない現実。まずは以下の点をしっかり念頭におきましょう!
費用
- 畜犬登録(初年度)と毎年の狂犬病ワクチン
- 避妊、去勢手術
- 健康診断や血液検査
- フィラリア検査とフィラリア予防薬
- ノミ・ダニ予防薬
- 混合ワクチン
- トイレシーツ
- フード
- 犬具(リード、カラー、おもちゃ)など
- トリミング
- 留守番時のシッターまたはペットホテル
年間の目安として、医療費含めトータルで小型犬なら10万円超、大型犬なら20万円前後かかると言われています。我が家の4キロ弱の小型犬1頭で、医療費だけで初年度に約7万円(去勢手術含)、2年目以降は毎年、約5万円。
フードその他トイレシーツなど諸経費含めると、目安通り約10万円程度となり、我が家は2頭飼育なので倍の20万円/年となります。ただし、ペット保険に加入していないため保険料は無し。
2頭とも持病がなくワクチンなど基本的な医療費のみ、トリミング犬種ではく、シャンプーや爪切りなどは基本、私が行っているのでゼロでの金額。持病があれば治療費だけでなく薬や定期検査、価格の高い療法食が不可欠ですし、突然のケガや病気、またシニア期からの健康リスクも視野に入れた備えも無視できません。
日常ケア
1頭飼育なら爪切りなどもトリマーさん任せという人は少なくありません。でも、多頭飼いでは、よほど経済的に余裕がなければ自分で行わなければならず、その他ケア含め、かかる手間はなかかなのもの。
特にトイレ関係の世話は、1頭以上になると想像以上に大変!家族の協力は不可欠です。以下、最低限必要になるケア項目。
- トイレの始末
- シャンプー、ブラッシングなど日常的な被毛の手入れやトリミング
- 爪切り、肛門腺絞りなど
- 歯磨き
- 水やフードの管理と衛生の管理
- 散歩
環境
家屋の環境
犬に関する苦情の1位が「吠え」。複数頭では、どれだけしつけをしても、完璧に全頭を黙らせておくのは難しいものです。サッシをしっかり締めても、犬の吠え声は結構外に漏れるもの。
実際に外に出てみて、どれくらい聞こえているか確認し、場合によっては防音対策の必要もあるでしょう。また、多頭飼いではニオイや家周辺の抜け毛の落下なども苦情の原因になりやすく、衛生面の配慮は不可欠です。
室内の環境
犬にはパーソナルスペースがあり、日常的に犬どうし一定距離が保てない状態が続くとストレスになります。
その距離は2~3mだとか、互いにリラックスして眠れる距離、または食餌の時に喧嘩せず食べられる距離など諸説ありますが、個体差もあるようです。
犬達が自由に動き回るのに十分な広さ、他の犬から離れて休んでもジャマされないスペースが確保できるかどうか。各自の休息場所となるハウスやサークルが必要な数だけ置けるかどうか。何頭までが人と犬双方にとってストレスなく暮らせるか、十分考慮する必要があります。
もしものときの心がまえ
チワワのような極小犬だと、経済条件と住環境が許せば、10頭、20頭と飼えてしまったりするもの。しかし、飼い主が失業して20頭もの犬達の飼育継続が困難になり、里親探しを保護団体に依頼せざるを得ないケースが実際に起きています。
失業だけでなく突然の病気など、犬の運命は飼い主によって簡単に左右されてしまいます。その他、災害時の対応も含め、犬を複数頭飼う責任の重さをよく考え、飼えない事態に陥った時のことも視野に入れて、手に負える範囲の頭数をよく考えてほしいと思います。
多頭飼いの重要課題 ! 犬の学習能力と飼い主の対応
「犬は学ぶ生きもの」
このことは絶対に頭に入れておいてほしいこと。厳しい言い方をすれば、1頭ですら、きちんと愛犬をコントロールしきれていない飼い主さんが目立つのが現状です。1頭めの問題に対処しなかった結果、2頭め以降も同じ問題行動を身につけるケースは少なくありません。
実際に、最初は友好的だった子が、神経質な同居犬をマネて、2頭揃って気に入らないと咬む犬になってしまったケースもあります。犬は良いことも学べますが、悪いことも学びます。多頭飼いの場合、問題行動の芽は他の犬に波及する前に早めに積むことが肝心。いつでも相談できる、信頼できるドッグトレーナーを身近に確保しておくことも大切です。
吠え
「吠え」の問題は多頭飼いでは、避けては通れない問題です。後から迎えた犬が要求が強く吠える子だと、先住犬も吠えるようになりがちですし、学習期の子犬なら、「そうか、こういう時は吠えるものなんだな?!」と先住犬の行動からすぐに学んでしまうわけです。
また、分離不安傾向のある先住犬の場合、飼い主の外出時に吠えると、他の犬も飼い主の外出=不安なこと→吠える、と学んで、ほどなく同様の分離不安的な傾向が強まって行くこともあります。2頭め以上を迎えたいなら、まず先住犬の気質、性格をしっかり把握し、まずはすでに起きているその子の吠えの問題に対処するのが先決です。
イタズラ、してほしくないこと
これは、我が家のイタイ失敗。安全のためキッチンとリビングの間にゲートを置いていたのですが、2匹めに迎えた子がよじ上って越えるのを見て、先住犬の中に「これは越えられるモノなんだ! 」と新たな概念が生まれたようです。アッという間に跳び越えることを学んでしまいました。
様々ないたずらも同様、最初の1頭の現場を押えたら、即、他の子が同じことをできないよう環境そのものを工夫して防ぎましょう。
犬の多頭飼いで気をつけたい相性
同性どうしはダメ、異性どうしはOKなど、様々な意見がありますが、実際に「これなら確実!」と言えないのが現実のようです。同性でも仲良くなることもあれば、女の子のほうが強くて男の子のほうが小さくなっているケースもよく見かけます。
犬を熟知したトレーナーですら「犬の好みだけは分らない」と苦笑します。ただ、相性が悪いどうしが一緒に暮らすことは、多大なストレスになります。2頭め以降を迎えたい場合、ドッグランなどで他の犬との関わり方をよく観察して先住犬の性格や様々なタイプの犬との相性をしっかり見極めましょう。
また新たに迎えたい犬を見つけたら、本格的に迎える前に、相性を確かめるお試し期間を設けると良いでしょう。
以下、様々な組み合わせについて。
シニア犬と若い犬
先住犬がシニアになったら若い犬を迎えると良い、という説があります。確かに若い犬に触発されて活気がよみがえる場合もありますが、どの犬にも当てはまるわけではありません。静かな環境で飼い主さんとゆったり暮らすのを好む子もいますし、持病があれば元気な新参者の存在がストレスにしかならないこともあります。
興奮、攻撃の傾向がある子
基本的に、興奮しやすい子や攻撃性が出やすい犬の場合は、新たに犬を迎えるのは考えもの。新しく迎えた犬も興奮しやすく攻撃的になることがあります。逆に、大人しい気質の犬だとやられっぱなしで逃げ場のないストレスに絶えずさらされることになります。
甘えん坊
飼い主への所有欲が強い子や甘えん坊の子の場合。その子にとっては大好きな飼い主の存在で十分満ち足りているわけで、他の犬との暮らしは望んでいないかも。逆に、飼い主に対して依存心が強過ぎる子が、他の犬も交えて暮らすことで、人と犬1対1の過剰な密着が緩和され、よい結果につながることもあります。
犬に対して友好的
犬同士で遊ぶことが好きな子、どんな犬にもおっとり構えている落ち着いた子は比較的、新しく迎える犬にも適応しやすいと言われています。でも、これもやはり新たに迎える犬との相性しだいです。
犬たちの年齢の間隔
愛犬家の中には次々と1~2才くらいの間隔で子犬を迎えるケースがあります。年が近く互角で遊べる点では良いのですが、年齢が近ければシニア期も同時に訪れます。傷んだ歯の抜歯、病気の発現、個々によって異なる療法食への切り替え、おむつや排泄の補助など、医療費等の経費とケアも倍増します。長期間を視野に入れて、飼い主自身の年齢と犬達の年齢の間隔をよく考える必要があります。
犬にとって多頭飼いは幸せなのか
たくさんのワンちゃんに囲まれてにぎやかに暮らす・・・それは愛犬家にとってこの上ない幸せ。でも、犬達にとってはどうなのでしょう?犬達を幸せにするためにも、正しい知識を身につけ賢い飼い主になりましょう。
犬の順位を飼い主も守るべき?
多頭飼いの場合、よく耳にするのが先住犬を立てるべし! ということ。あるいは新たに迎えた犬が優位なら、犬社会の順位付けに人間も従って、その子を優先すべき、という説もあります。実際には、どちらの説も完全に正しいとは言えないようです。最近の研究で、犬達の間にはある程度の順位はあるものの、状況によってリーダーシップを取る犬が変わることが分ってきています。
例えば、食べることに関してはAが常に先でも、遊ぶ時にリードするのはBが先というように。ある犬だけを常に優先することは、逆に犬達にとって非常に不条理な対応となる場合もあるのです。
ただ、新参者を前に戸惑う先住犬の自尊心を保ってあげることは大切です。その意味で、これまでの習慣を守り、様々な場面で優先することは決してマイナスではないと思います。
それでも、先住犬が新たに迎えた犬に対して、フードを横取りするような時には、無言で遠ざけるなど、人の介入が必要な場合もあります。どの犬を優先するかは、その時その時の状況に応じて判断する必要があります。
飼い主は犬達を安心させ、正しく導く賢い飼い主を目指して
複数頭が共に暮らす中では、争いや順位を示すような行動が見られることは多々あります。飼い主の役割としては、まず犬が争うような状況を最初から回避してやること、唸り出したら叱らずに、状況から気をそらしてやるなど、犬達を安心できる状況に導いてあげること。
そのためには、日頃から犬達の行動や、それぞれが折りにふれて発しているサインをよくよく観察しておくことがとても大切ですし、それらの意味を正確に判断するための知識も必要です。
複数の犬に人間がどう関わるかについて、写真を多用して分りやすく説いた本があり、大変参考になるのでご紹介します。すでに多頭飼いをしている人、これから考えている人もぜひ一読をお勧めします。
最後に
全体を通して、デメリットのほうを多く上げた感がありますが、もろちんメリットもあります。1頭だけでは見られなかった表情や行動を見せてくれることは、思いがけない喜びと発見をもたらしてくれます。実はこんな子だったの?と犬達の隠れた才能に気付くこともあります。
実際、私自身も2匹めを迎えたことで、これまでの思い込みをずいぶん覆され、それは嬉しい驚きでもありました。優位と思っていた先住犬が調子に乗って同居猫にしつこくじゃれついていた時、いつも控えめな新参者に唸られて割り込まれ、反撃する余地なくポカンと放心状態になっている様子を見た時には、おなかを抱えて笑いました。
それで喧嘩に発展することはなく、特に仲良しではないものの、互いに上手にサインを出し適度な距離を保ちながら共存している姿には、とても学ばされます。2頭めを迎え、まだ半年余ですが、徐々に互いを遊びに誘うプレイバウも見られるようになりました。今後の展開がとても楽しみです。
多頭飼育において最も大切なことは、1頭飼育と同じように、1つずつの命、個性と真剣に向き合い付き合うことだと思います。ご自分が1頭1頭に対して、どれだけ1対1で接することができるのか、生涯面倒を見切れるのか、真剣に考えた上で飼育可能な頭数と、楽しくにぎやかなワンコライフを送ってほしいと思います。
ユーザーのコメント
30代 女性 Mimi
多頭飼いにはもちろん金銭的な余裕が必要ですが、それと同じくらい大切なのは「気持ちと時間の余裕」です。1匹でもしつけやケアをしっかりとしようとすると大変なところ、もう1匹ですから、その子にも向き合う時間の余裕と精神的な余力がないときちんと飼う事はできないかと思います。
確かにワンちゃんは賢いですから、もう一匹からいい事も悪い事もすぐに学ぶというのは本当だと思います。うちの実家のシェパード達がそうでした。
実家では大型犬の多頭飼いという事もあり、ご近所さんに迷惑がかからない様にしつけ教室に通い、専業主婦の母が付きっ切りで見ていました。
しかし、小型犬は問題行動も大型犬ほど手に負えないレベルではないからなのか、飼い主さえ気にしなければそれなりに過ごせてしまうからなのか、きちんとしつけをせず無駄吠えをしたり、他のワンちゃんや人に攻撃的でも気にしていない飼い主さんが、大型犬の飼い主さんよりも多い印象はありますね。もちろん本当にしっかりと躾をしている飼い主さんもいらっしゃいますが。
私は犬が好きで自分でも飼っていますが、うちの子のお散歩中に知らない多頭飼いのワンちゃん達に一方的にワンワン吠えられるとあまり気分の良いものではありませんので、飼っていない人や犬が苦手な方からすると不快に思うことも多いのでしょう。それもあり、ご近所トラブルでも多頭飼いの話を聞く事も多いですね。
決してワンちゃんは悪くなく、しつけをきちんとしていない飼い主の問題なのですが、ご近所トラブルになると どうしても ワンちゃん自体を受け入れてもらえなくなってしまうので、こういった話を聞く度に悲しくなります。
個人的には沢山のワンちゃんに囲まれる生活は憧れですが、住環境・経済・時間に余裕が出来ないときちんと育てるのは難しいなぁと思っているので、あと10年後になりそうです。
20代 女性 てとまる
我が家でも今いるシニア犬のために仲間が欲しいと多頭飼いを考えましたが結局、やめたことがあります。ブリーダーさんの元へ愛犬を連れていき相性が少しでも分かればと何回か連れて行ったこともありますが、結局は住んでみないと分からないのでそこを踏み切ることが出来ませんでした。愛犬の散歩をさせていると多頭飼いに成功していて毎日、楽しそうな飼い主さんも多く見かけますが、結局相性が合わずに一匹は広いゲージにいたり、部屋を1階2階で分けているなどという方もそれなりにいます。我が家は家が賃貸なのもあり部屋を分けさせるような改造が出来ないので、断念しました。相性が合わなかった時にどう解決するのかを多頭飼いをする前に決めた方が良いと思います。
女性 かえまり
しかし、多頭飼いをすることでしか感じることのできない喜びなんかもあります。それは、愛情を注いでるほうのわたしたちがかえってわんちゃんたちのほうから愛情を返してくれるかのように健康で幸せな表情でかえしてくれたりします。教えられることも多くあり、勉強になります‼