ロビードッグというホテルのお仕事
ホテルと保護犬というと、なんの関係もないような気がしますが、アメリカのいくつかのホテルでは何年にも渡って保護犬のためのユニークな活動を行っているところがあります。
それらのホテルでは、ゲストが到着すると人間のスタッフと共に犬が尻尾を振って迎えてくれます。彼らの仕事はロビードッグとしてゲストを迎え、撫でられたり可愛がってもらうことです。
ホテルは地元のレスキュー団体やアニマルシェルターと提携して、一時預かりという形で犬のフォスターになります。ホテルで一時預かりされた犬たちがロビードッグとして活躍します。
ホテルの宿泊客がロビードッグを気に入った場合は、譲渡手続きをして連れて帰ることが可能です。ホテルがレスキュー団体の出張所のような形になっているんですね。
いくつかのホテルの具体的な例をご紹介します。
旅行に来て、犬を連れて帰る人も
アメリカ東海岸のメイン州にあるイン・バイ・ザ・シーは海岸沿いにある洋館風の素敵なリゾートホテルです。このホテルは4年前から地元のレスキュー団体と提携して、団体から犬を預かり、ゲストと犬が触れ合って、犬に新しい家族を作る機会を作って来ました。
これまでのところ148匹がこのホテルから新しい家庭へと送り出されてきました。このホテルはペットフレンドリーで愛犬と一緒に宿泊することもできるため、ホテルから譲渡された犬たちの多くが1〜2年後にゲストとして訪れ、スタッフとの再会を楽しんでいるのだそうです。
南カリフォルニアのホテル、ウエスティン・ミッションヒルズでも同様のプログラムを運営しています。このホテルのロビードッグは、ロビーに設置されたプレイサークルの中のホテルの建物と同じ形の特別仕様の犬小屋にいます。時折、動物にアレルギーのあるゲストからクレームがあるそう
ですが、その場合はペット不可になっている隣の姉妹ホテルに案内することになっているそうです。このホテルでは毎年8月にこのプログラムを通して犬を引き取った人と、提携保護団体のスタッフやボランティアのための無料の同窓会パーティーを開催しています。
他にも何軒ものホテルが同様のプログラムを実施しています。実際に犬を連れて帰ることはハードルが高くても、不特定多数の人に保護犬の存在をアピールするという面だけでも、大きな意味のあるプログラムと言えます。
譲渡以外の方法で保護犬をサポート
テネシー州ナッシュビルにあるボビー・ホテルのロビードッグのサーシャは宿泊客が連れて帰ることはできません。サーシャは正式にホテルの犬として採用されているからです。ボビー・ホテルがサーシャの家です。
ホテルでは客室にサーシャの顔がプリントされたタオルを用意しており、ゲストがこのタオルを購入すると、その利益がサーシャの出身団体でありホテルの提携先でもあるレスキュー団体に寄付されます。今までのところ、ボビー・ホテルはサーシャの名のもとに6000ドル以上を寄付しているそうです。またホテルがこのような保護犬プログラムを実施していない場合でも、旅行中に保護犬のための活動に参加できる方法もあります。
例えばハワイのカウアイ島にある動物保護団体カウアイ・ヒューメイン・ソサエティでは「シェルターの犬たちに遠足を」というプログラムを実施しています。このプログラムでは、通常のボランティア登録をしていない旅行客もシェルターの保護犬を連れてビーチを散歩したり、ハイキングに出かけることができます。
このプログラムはたいへん人気があり、毎日平均して18匹の犬が「遠足」を楽しんでいるのだそうです。旅先で素敵な風景の場所を歩いていると「あ〜犬といっしょに歩きたいなあ」と思った経験がある方も多いのではないでしょうか。このプログラムはそんな思いを満たすだけでなく、保護犬たちの生活にちょっとした変化をもたらしたという満足感も得ることができます。
まとめ
アメリカのホテルが実施している保護犬のための活動をご紹介しました。アメリカは決して動物福祉について進んでいる国とは言えません。けれども保護活動のアイデアについては、とてもユニークで創意工夫に富んだアイデアをたくさん持っています。
国それぞれの事情や背景が違いますから日本もこんな風にしようという訳ではありません。ただ従来の発想から飛び出して違う方向から考えること、そのために他の事例をたくさん知っておくことはきっと日本の犬たちを取り巻く環境にも良い変化をもたらすと思います。
《参考URL》 https://www.today.com/money/hotels-help-shelter-pets-find-homes-lobby-dogs-t159118