犬が車に反応する心理①追跡本能
走っている車に反応して追いかけようとしたり、吠えかかったりする犬の心理として最も多いのが「動物としての本能」です。
特に羊や牛を追い立ててまとめる仕事をしていたボーダーコリーやシェットランドシープドッグ、コーギーなどの牧畜犬や牧羊犬は、動いているものを追いかける習性を持っているため走っている車やバイク、自転車などを追いかけることが多く見られます。
他にも、害獣を追いかけ駆除していたテリア種や目で動くものを捕らえ高速で追いかけるサイトハウンドなどにも見られることがありますが、これらの犬種はどちらかというと猫や鳥など小さなものを追う習性の方が強いことが多いでしょう。
「車追い」は非常に危険な行動!
本能的な行動は、衝動性が強く抑制が難しいとされていますが、「車追い」は非常に危険な行動です。
車に反応して飼い主を引っ張って倒してしまったり、犬自身が走っている車に激突して大けがを負う可能性もあります。興奮状態で周囲が見えないことでさまざまな事故やトラブルを引き起こすこともめずらしいことではありません。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬の中には、電車や飛行機などにも反応して追いかけてしまう子もいます。気が付かずに油断してしまうと、リードを離してしまいあっという間に逃走してしまうトラブルになることも少なくありません。
犬種によるところもありますが、愛犬が何に反応してしまうかは日頃から観察して万が一のときにも慌てず行動しましょう。
犬が車に反応する心理②恐怖心や警戒心
車に反応して吠えたり、追いかけたりする行動の多くは「動物としての本能」によるものですが、中には過去の経験やトラウマから車に対して強い恐怖心や警戒心を持っていることで起こる場合もあります。
車に轢かれて痛い経験がある場合はもちろんですが、それ以外にも社会化不足などから大きなものが近くを通り過ぎたり、走行音に恐怖を感じる犬も少なくありません。
恐怖心や警戒心から吠える場合は、あまり積極的に追いかけるようなことはありませんが、車に対して過剰反応してしまうようでは日々の散歩でも緊張感がつきまとい犬も飼い主も十分楽しむことができない上、ストレスの原因にもなります。
監修ドッグトレーナーによる補足
車に恐怖を感じているのではなく、「飼い主から離れたくて車に吠える」ケースもあります。
散歩中などに飼い主さんから叱られたりすると、その恐怖から逃れるために自分の意識を車に向けて吠えてしまいます。飼い主さんとしては複雑な心境かもしれませんが、犬がこのような行動を取ってしまうこともあると覚えておきましょう。
車に反応する犬のトレーニング方法
「車追い」と呼ばれる行動は、牧畜犬や牧羊犬に多く見られる傾向がありますが、本能的に体が反応してしまうため行動を抑制するのは簡単ではありません。動いている車を見た瞬間にスイッチが入り、ロックオンして一気に興奮状態になってしまうので飼い主の静止や指示の声も耳に届かないのです。
しかし、車追いは事故やトラブルの原因になるとても危険な行動です。また、恐怖心などから車に過剰反応することも精神的な負担を考えればできるだけ改善することが望ましいでしょう。
飼い主に意識を向けさせる
車追いをやめさせるには、車から気をそらして飼い主に意識を向けさせることが大切。本能的なスイッチが入ってから行動を抑えることはとても難しいため、スイッチが入る前に飼い主に意識を集中させて車を冷静にやり過ごすトレーニングをしなければなりません。
犬が車に気づく前に名前を呼び、「おすわり」や「まて」などの合図を出して動きを止めましょう。はじめはまったく聞く耳を持たないかもしれませんが、車がいても落ち着いて過ごせるよう時間をかけてトレーニングを続けることで、徐々に車追いを減らしていけるでしょう。
車に「いいイメージ」をつけてあげる
車や車の走行音に恐怖心や警戒心を抱いている犬の場合は、車に良いイメージをつけてあげることが大切です。
車を見かけたり横を通り過ぎる時におやつをあげたり、車が見える公園で大好きなおもちゃ遊びなどをすることで、少しずつ車に対する意識を変えていきましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
私のしつけ教室での一例ですが、最初は1時間ほど吠え続け、上手に指示に従ってくれたのはトレーニング中に1回程度・・・。何度もトレーニングを続けていくうちにかなり改善が見られるようになりました。
本能からの行動や習慣になっていることを改善していくことは、思う以上に簡単なことではありません。しつけは根気と諦めない気持ちが何より大切です。
<まとめ>犬が車に反応する心理について
車に反応して吠えたてたり追いかけることは、犬の本能によるもので犬にとっては自然な行動とも言えます。
しかし、車追いは犬や飼い主の事故や怪我の原因になったり、周囲への迷惑に繋がる可能性が高いため、できるだけ抑える必要がある行動の一つです
車に過剰反応しないためのトレーニングだけでなく、「追いかけたい」「走りたい」という犬の本能は、他の方法で満たしてあげてストレスをため込まないようにすることも大切です。
車追いは、放っておいて改善する問題ではありません。行動を改善するためには根気と時間が必要かもしれませんが、少しでも早く適切な対処を取るようにしてみてください。