1.金銭の準備
犬を飼うということは人間の子供を育て、共に暮らすことと変わりありません。
違うのは、教育費や習い事のお金が掛からないことと、親離れしないことぐらいで、お金が必要であることは変わりありません。
むしろ、医療費に関しては、全て自由診療で実費となり、人間の子供にかかる医療費よりも高額になります。
子供を育てるのであれば、子供手当やいろいろな助成金を受けることができますが、犬を飼う場合、何の補助もありません。
例えば、飼い主さんに金銭的な余裕がなければもし犬がケガをしたり、病気になったりしたときに十分に治療を受けさせることが出来なくなります。あってはならないことですが、それを理由に飼育放棄する人もいます。
ですから、人間の生活だけで毎月、貯金もできず、外食や旅行も我慢しなければならないような状況では、犬を飼うべきではありません。
では、具体的に犬を飼う場合、どんなことにお金が必要になるのでしょうか?
食費
小型犬なら毎月 3千~4千円。中型犬なら5千~7千円。大型犬なら8千~9千円は最低でもかかると思います。どんなフードを与えるかによって大きく変わります。
手作り食や、療法食だともっと高額になります。
医療費
健康でも必要なフィラリアやノミ、ダニの予防で毎月三千円程度。予防薬も体重によって量が変わりますので、犬が大きければ大きいほど、これらの予防医療にかかるお金ももっと多くなります。また、子犬の時には2~3回、成犬になってからも1~3年毎に必要となるワクチンは、1回あたり五千~八千円程かかります。
また、シニアになるにつれ病気にかかることが多くなるのは人間と同じですので、犬が年をとるにつれ医療費は高額になっていく傾向があります。手術や入院をすれば高額な費用がかかるのはもちろんですが、一生飲み続ける薬が必要な場合にもかなりのお金がかかります。
その他
トリミング代、ペットホテル代、トレーニング代などの費用が必要になる場合があります。
2.躾、トレーニングの有無
プロに任せる場合
経験豊かであったり犬のトレーニングをよく勉強されている飼い主さんであれば、全ての躾を自分でできるかもしれませんが、訓練所に預けての訓練まではしないとしても、パピークラスや飼い主さんと一緒に参加するしつけ教室に通ったり、トレーナーさんに来てもらってレッスンを受けるなど、何かしら犬を正しく躾けるのにプロの力を借りる必要があることがほとんどだと思います。躾は犬に芸を覚えさえることではなく、犬自身と飼い主さん家族が他人に迷惑をかけることなく楽しく暮らすために必要なものです。小型犬であっても、どんなにおとなしい犬であっても必要です。
もし、家庭犬として自分たちできちんと躾ける自信がなかったりしたら、その犬を実際に家族として迎える前に、訓練してくれる人を探し、直接会って、決めておきましょう。
飼い主さん自身で躾ける場合
本やネットなどで知識を収集するのはもちろん、犬を飼っている人から話を聞いたり、実際にどんなふうに犬の躾をしているのかを見せてもらったりして躾けるのも一つの方法かもしれません。しかし、どの様な方法が良いのかは犬によっても違いますし、良いとされている躾の方法は時代によっても違います。全く犬を躾けた経験のない人が本やネットで情報収集をしただけで犬を躾けるのは難しいことが多いと思います。躾は犬が何歳になってもできますが、最初が肝心ですし、社会化期にある子犬の時期が最も早く効果的に色々なことを覚えてもらえる時期です。また、好ましくない習慣が出来てしまってから修正するよりも最初から正しい行動を教える方が飼い主さんも犬自身も楽です。プロの力を借りる方法も色々とありますので、犬を飼うと決めたらまず、どんな形で犬を躾けるかをよく考えてみましょう。
3.かかりつけの病院を決めておく
きちんと犬の健康管理をするのであれば、遠慮なく質問できて、愛犬の体のことをよく知っておいてもらい、なおかつ、飼い主さんとも円滑にコミュニケーションが取れるかかりつけの動物病院を決めておきましょう。
これも、ネットでの口コミで確認する方法もありますが、近所の犬を飼っている人から情報を収集するのが最も的確な情報が得られると思います。
また、もし、愛犬のトレーニングを訓練士さんやドックトレーナーさんにお願いするのであれば、そういったプロの人たちから動物病院について、話を聞いてみるのも良いでしょう。
予防薬とワクチン接種
どんなに健康であってもノミ、ダニ、フィラリア症の予防薬と、狂犬病ワクチンと混合ワクチンといった予防接種が定期的に必要です。
成犬になってからも年間で、最低2万円以上はかかるでしょう。犬が大きければ予防薬にかかる費用はもっと高額になります。
健康診断
シニア期になってからや、病気になってから初めて病院を受診するよりも、若く、健康なときから定期的に健康診断をしておくと、状態の良いときの数値がわかり、病気になった時に役立ちます。
さらに、ずっと同じかかりつけの動物病院でなら、継続して診てもらえることで愛犬の健康状態だけでなく、精神状態も獣医さんに伝わりやすくなり、上手に診察してもらうことが出来ます。
避妊去勢について
愛犬に対して、避妊手術や去勢手術を受けさせるかどうか、家族で話し合っておきましょう。避妊手術も去勢手術も一般的にはデメリットよりメリットが多いと考えられていて、若いうちに避妊・去勢手術を受けることが動物病院でも勧められます。
4.シニア期への準備
バリアフリー
人間同様、犬も歳を取ると足腰が弱ってきます。
家中全てをバリアフリーにする必要はありませんが、無理をして飛び上がったり、飛び降りたりしなくても良いように、犬が生活するスペースでは部屋の家具を買えたり、踏み台を用意したりする必要があります。特に、飼い主さんが軽々とだっこをできない大きさの犬を飼う場合には、犬の介護が必要になった時のことを考えておく必要があるでしょう。
滑りにくい床
フローリングは滑りやすく、足の関節に大きな負担がかかります。
また、滑って怪我をする可能性もあるので、犬を迎える時点でクッションフロアなど、愛犬の足に優しい床材を敷いておくのが良いでしょう。しかし、シニア期になって若い頃のように動けなくなると、よりふんばりのきく床材や汚れても掃除がしやすい、取り換えやすい床材が必要になることもあります。
静かな住環境を整える
シニア期になると、眠っている時間が多くなります。
ゆっくりと落ち着いて、静かに眠れる場所が確保できるように、金銭的な準備や家の住環境が整えられるかどうかも、考えておきましょう。
5.看取りへの心構え
愛しく思い、たくさん楽しい思い出があればあるほど、別れは辛いはずです。
ですが、その別れからは絶対に逃げられないのです。
愛犬を家族として迎え入れる決心をするときには、その子の最期を看取れる覚悟はあるか?、どんな状態になっても最期まで責任を持ってお世話をしてあげられる覚悟と時間的、金銭的な余裕があるか?と、今一度しっかりと家族で話し合いましょう。
まとめ
犬は、あなたの家族となったとき、あなたとあなたの家族に愛情を持ち、生涯、家族として生きていこうとします。
正直、人間だけで暮らすよりも煩わしいと感じることもあるとは思いますが、犬を飼う以上は責任をまっとうしなければなりませんし、煩わしいと感じる以上に犬は私たち飼い主にたくさんの幸せを与えてくれます。
犬を飼うときには、金銭や知識も絶対に必要です。
けれども、それと同じくらい大事なのは愛犬となる犬に、幸せな時間を与えられる飼い主になれるように努力することではないでしょうか。努力している中で金銭や知識の面で困った場合には、かかりつけの動物病院や周囲の犬仲間などに相談してみましょう。きっと解決法が見つかるはずです。