なぜ、犬を甘やかして好き放題にさせてはいけないのか?
人間と犬が一緒に暮らす時、なぜいろいろなルールを教えなければならないのでしょうか?それは、人間が暮らしている環境の中で犬に悪影響が出るようなことがあってはならないから。
そのためには、飼い主が人間社会のルール、お家などの生活環境の中のルールを犬に教える必要があります。子犬であれ、成犬であれ犬を迎え入れたなら、「家畜」や「番犬」ではなく、共に暮らしていく「家族」にするために、トレーニングをする必要があります。
愛犬を甘やかして、トイレトレーニングをしなかったら
一緒に同室で泊まる旅行に連れて行けない
近頃では犬を一緒に連れて泊まれる宿も増えてきて嬉しい限りです。しかし、「犬連れ歓迎」の宿でも、ほとんどの場合「トイレのしつけがされていること」などの条件がついています。
トイレトレーニングが出来ておらず、犬が「したい時にしたい場所で」排泄するなら、家族として一緒に旅行に連れて行きたくても、ペットホテルに預けたり、ペットシッターさんにお願いするしかありません。
家の中に悪臭がしみついている
家の中でトイレの場所がわからず好き勝手に排泄するようなら、後始末だけでも大変です。しかも、排泄する場所が複数あるなら、手入れが行き届かず家中に犬の排泄物のニオイが染みついてしまうことになります。
持ち家ならまだしも、賃貸マンション等に住んでいるのであれば、契約違反であったり、近隣に悪臭の影響が出て、思わぬトラブルを招いてしまうかもしれません。
愛犬を甘やかして、「マテ」のコマンドを教えなかったら
散歩中やドックランなどで、他の犬とトラブルになりそうな時、「マテ」のコマンドを知らないままだと、愛犬の衝動的な行動を止めることが出来ません。
犬同士の喧嘩だけでなく、リードが外れて逃走してしまっても犬の動きを止めることができなければ、交通事故に巻き込まれしまうことも少なくないのです。
愛犬を甘やかして、「コイ」のコマンドを教えなかったら
「コイ」や「オイデ」は、「呼び戻し」のコマンドで、どんなに離れても、家の中のどこにいても、飼い主さんの「コイ」の一言で戻ってくるようにしつけをします。
ドックランで犬が疲れるまで帰れない
例えば、「リードを外したりフリーすることはないから教える必要はない」と、「コイ」や「オイデ」を教えなかったとします。しかし、全力で走る犬を捕まえるのは、人間がどんなに本気で走ったとしても簡単なことではないのです。
ドックランで楽しく遊んでいる犬に、「オイデ」「コイ」と教えていなかったら、犬が飽きるか、疲れるまでずっとドックランの中を追いかけまわすしかありません。
逸走した時、捕まえることが出来ない
囲いのあるドックランの中ですら本気で走っている犬を捕まえるのは困難です。それが囲いのない場所でリードやハーネスが外れてしまい、犬が走って逃げてしまったら・・・。
迷子になってしまったり、最悪の場合は事故に巻き込まれて命を落としてしまい、二度と愛犬に会えなくなってしまうこともあるのです。他人に迷惑をかけないことも大切ですが、何よりも愛犬の命を守るためにしつけは必要なのです。
愛犬を甘やかして、「ハウス」のコマンドを教えなかったら
「ハウス」は、ケージやクレート、キャリーなどに犬を入れる時に出すコマンドです。ただ狭い場所に閉じ込めるということではなく、「安全で安心できる場所」ということも理解してもらう必要があります。
「狭いところに閉じ込めるなんて可哀そう」と、「ハウス」のコマンドを教えなかったら、他人にどんな迷惑をかけてしまうのでしょうか。
病院、ペットホテルで獣看護師さんなどに迷惑をかける
あ 犬の予防接種や去勢避妊手術、健康診断などで必ず利用する動物病院では、体調を崩したペットを連れてきている方が大勢います。待合室で愛犬が走り回ったり、好き放題させてしまうのは迷惑な行為です。
動物病院では、キャリーなどで大人しく待っている、大型犬なら足元にフセの状態で大人しくしていられるようにしておくのがベストです。
飼い主さんが常識ある人だとしても、愛犬に「ハウス」のコマンドを教えていなければ、非常識な飼い主さんとなってしまいます。病院の待合室だけでなく、入院やペットホテルに預ける場合なども「ハウス」のコマンドを知らないと、ケージに入れる時に手間がかかるなどで、スタッフの方に迷惑をかけることになるでしょう。
公共交通機関を利用できない
10㎏以下の犬であれば、公共の交通機関を利用することができます。ただし、キャリーなどに入れることが必須。「ハウス」ができなければ利用することは出来ません。
無理やり入れてしまえば、驚いてパニックを起こしてしまったり、移動中ずっと鳴き続けることも。世の中の全ての人が犬好きではありません。犬の声が耳障りな人にとっては大迷惑です。
災害時、避難出来ない
日本では災害時に「同行避難」が推奨されるようになりました。飼い主さんとペットが一緒に避難し、指定の避難所内のそれぞれ決められた場所で避難生活を送ります。 そんな万が一の際に「ハウス」のコマンドを教えていなかったら、ケージなどの中でずっと鳴き続けたり、愛犬に大きなストレスを与えてしまい体調を崩してしまうことにもなりかねません。
愛犬を甘やかして、車内を自由に動き回らせていたら
交通事故の際、車外に投げ出される危険性がある
人間の場合でも、交通事故を起こした際にシートベルトをしていなかったせいで子供が車外に投げ出されて命を落としてしまうといった事故が起こっています。
運転の邪魔になり、交通事故の原因になる可能性がある
小型犬でも突然興奮して運転中にじゃれてきたら、それが原因で事故を起こしてしまうかも知れません。さらに、また落ち着きのない子犬や大型犬だったら、事故のリスクは高くなることが想像できます。
愛犬を車に乗せる場合は、キャリーやクレートに入れるか、犬用シートベルトで体を固定することは重要です。
監修ドッグトレーナーによる補足
愛犬を膝の上に乗せて運転したり、車の窓から顔を出したままの走行は、道路交通法違反に該当します。実際にこのような運転をしていた男性が逮捕された事例もあるようです。
愛犬を車に乗せる時は「ペット用のシートベルトで動かないように固定する」「ケージにいれる」など、正しい乗せ方でお互いの安全を守りましょう。
道路交通法では、以下のような運転を禁止しています。2 車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。(引用:道路交通法第55条)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。(引用:道路交通法第70条)
愛犬を甘やかして、吠えるのをやめさせなかったら
犬は、理由なく吠えることはありません。「無駄吠え」と言う言葉がありますが、それは犬が吠える理由を人間が理解していないだけです。犬が吠える理由や原因を理解し、吠える必要がないと教えることで「無駄吠え」を徐々に減らすことは出来ます。
とはいえ、犬は本能的に吠えたり、なにかに驚いたり興奮して鳴き続けてしまうこともあります。そんな時に、吠えるのを止めることが出来なかったら、どうなるのでしょうか。
近所トラブルの原因になる
普段の生活の中で、ちょっとした物音に驚いて吠え続けたり、また、留守番中にずっと吠えているなどがあれば、「ご近所トラブル」を引き起こす原因になります。
「犬が吠えてうるさい」と恨まれて、それが原因で散歩のコースに毒物を置かれた、家のまわりに嫌がらせをされた等の事件も実際に起こっています。
人に怪我を負わせる可能性がある
犬が苦手な人なら、いくら小型犬でも吠えられたら怖くて緊張してしまいます。それが体の大きな犬であれば、なおさら恐怖を感じることでしょう。
もし、走っているバイクや自転車に吠えかかったら、運転している人が驚いて転倒して怪我負わせてしまうかもしれません。
監修ドッグトレーナーによる補足
無駄吠えのしつけには、時間を要するケースが非常に多く見られます。
しつけが完了するまでに1年~数年かかる場合も珍しくありません。焦らず、時間をかけて少しずつ行っていきましょう。諦めないことが大切です。
愛犬を甘やかして、引っ張られるままにしていたら
大型犬にぐいぐいと引っ張られて散歩をしている飼い主さんをよく見かけますが、もし、本気で大型犬が走ったら男性でも制御出来ないでしょう。
飼い主さんと犬の安全のためにも、落ち着いて歩けるようにトレーニングしておく必要があります。犬の行動を制御せずに犬の気のむくまま歩かせていたら、どんな問題が起きるでしょうか。
散歩に連れていけなくなり、飼育放棄に繋がる
運動不足は犬のストレスの原因になります。ストレスを発散しようと、家の中で走り回ったり、家具やクッションなど、物を破壊するような行動ををとるようになります。
また、家の中でトイレトレーニングが出来ていなければ、排泄のために何度も外に連れて行かなくてはならず、飼い主さんの手に余って外に繋ぎっぱなしにするなどのケースもあります。
そうなると、散歩の頻度も時間も減り、排泄物は一日中放置など、餌を与えるだけの飼育放棄に繋がってしまうこともあります。そんな状態では悪臭などにより近隣に大きな迷惑をかけることになるでしょう。
飼い主さんが怪我をする
愛犬との散歩中に、勢いよく引っ張られて飼い主さんが転倒による怪我をしてしまうことが考えられます。
もし、骨折などの大怪我なら、会社を休むことになってしまうなど、ご自身だけでなく、同僚などにも迷惑をかけてしまうことにも繋がってしまうでしょう。「犬を甘やかしていた」ことが原因で、色々なところにまで迷惑がかかることもあるのです。
運動不足になり、逸走する可能性が高くなる
犬のストレスが溜まり、何かの拍子に逃げ出してしまうこともあります。安全に犬を保護し、連れ戻すためにはたくさんの人の手を借りなければならない場合もあります。
まとめ
愛犬に惜しみない愛情を注ぐのと、甘やかして好き放題させることは、全く違います。
家族として迎え入れたからには、生涯愛犬が安心して幸せに暮らせるようにすることは、飼い主さんや家族の責任です。
また、周りの人に迷惑をかけることなく暮らすためにも、人間社会で暮らしていけるようしつけを行うことは、愛犬との信頼関係を築くだけでなく、愛犬の安全を守ることにも繋がります。
監修ドッグトレーナーによる補足
小さくても大きくても犬にかわりはありません。甘やかしすぎてしまえば、人間社会の中で生活を送ることが難しくなってしまいます。
犬だけでなく、飼い主さんも犬と過ごす生活がストレスになりかねないのです。お互いがより良く生活するためには、飼い主さんのしつけがとても大切です。
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