犬の習性
前述のとおり、犬は太古から群れで生活をする動物です。犬にとって自分の群れというものは家族であり、社会ですので仲間同士で強固な連帯意識をもって暮らしています。通常の場合、群れはタテ社会で順位があると言われており、犬たちはその順位を理解しそれに応じた行動をとるようです。
人に家畜化され、ペットとして家庭で育つ犬もこれは同様です。犬は家族の関係をよく観察し、自分の立ち位置を決めて生活をしています。現在の研究では一概にタテ社会で順位をつけているのではなく、自分と相手の上下関係だけを理解しているともいわれています。
犬の自意識
犬の自意識は自分の所属している群れから発生するようで、一頭で飼われていて他の家族は人間だけの状態ですと、自分も人間と思ってしまう犬もいるようです。反対に多頭飼育の場合は犬の仲間がいるので、自分が犬である理解していると言われています。
いずれにせよ、犬は世話をしてくれたり遊んでくれたり、褒めてくれる飼い主が大好きです。一番自分にとって利を得られる人間を信頼しリーダーとします。
多頭飼育のメリット・デメリット
ドッグランなどに行くと、犬同士仲良く遊んでいる姿を見たりして癒されます。その反面、犬同士があまりに楽しそうで、「一匹で飼っているうちは寂しい思いをさせているのかもしれない」と考えてしまいがちです。
小型犬を飼っている方はサイズのハードルが低いため、多頭飼育に踏み切るかたも多いかもしれませんがちょっと焦らずに考えてみましょう。
多頭飼育のメリット
- 遊び仲間が増えてストレス解消、運動不足解消
- 群れで暮らしたいという本能を満足させられる
- 社会性、社交性の向上
- 犬同士が自発的に教育しあうのでしつけが楽
- 犬だけの留守番でも寂しい思いをさせないで済む
多頭飼育のデメリット
- 先住犬との相性を考えなければいけない
- 先住犬はあとから来た犬との年齢差、体格差、運動量の差などでストレス増大
- 愛情不足に陥る可能性
- 金銭的な負担が増大
- 災害時にトラブルが起こる可能性
- 先住犬の悪い癖などが伝染する
など、メリットとデメリットをいくつか挙げてみました。
まずなんにせよ、犬同士で遊べるようになるとお互いにとても楽しそうに(あるいは熱中して)遊びます。そのため運動量は勝手に増えるし、仲間同士で好きな遊びができるのでストレスは減るし、留守番していても寂しくないしと犬にとってはいいことづくめのように思えます。
以前はよその犬が苦手で吠えたり委縮してしまったりしていた犬が、一緒に暮らすうちに犬同士のコミュニケーションを覚えてよその犬とも仲良くできるようになったりという効果も期待できます。
しかし、それじゃあもう一匹飼おう、となる前に注意が必要なのが先住犬です。新しく犬を飼おうという場合、成犬を連れてくるより子犬の場合が多いかと思います。この時、先住犬との年齢差がありすぎると、若い個体の運動量や遊びのしつこさをストレスにしてしまう可能性が0ではありません。一説には高齢犬と若い犬が一緒に暮らすと、食欲も増えて運動をするようになり元気になるともいわれていますが、これは個体差があると思われますので十分注意してください。
また、それまで一匹で飼われていた犬の場合、新しい犬に家族の関心が集まりすぎると嫉妬したり愛情不足を感じてストレスになることもあるそうです。弟や妹が生まれて赤ちゃん返りしてしまう人間の子どもと同じですね。十分なケアをしてあげましょう。
さらに飼い主自身の年齢や家族構成も考慮に入れる必要があります。災害や病気で飼い主が亡くなってしまったり、飼える状況ではなくなってしまったりした場合、犬たちの面倒を誰が見るのか、災害が起こったときにはどのように避難をするのかなど、あらかじめ家族でよく話し合っておくのが大切ですね。
まとめ~犬にとって人より犬同士が楽しいのか~
犬は犬同士で仲間意識を持ち、遊ぶことで楽しむことができます。しかし経験上、犬同士で遊ぶことと飼い主と一緒に活動したり、褒めてもらったりすることは別なようです。ドッグランで犬同士で遊びに熱中していても、信頼する飼い主が呼べば遊びを切り上げてさっと帰ってくる子はたくさんいます。仲間と遊ぶ一体感・楽しさと、リーダーと一緒にいる楽しさ・安心感はそれぞれ違うのでしょうね。