同じ生き物なのに見た目が大きく違う犬たち
小さい小さいチワワ、ポニーほどもあるグレートデーン、鼻が低くてマズルがほとんどないパグやブルドッグ、草食動物のように鼻先の長いハウンド系の犬種、みんな同じ「犬」なのに、同じ種類とは思えないほど見た目が大きく違います。世界中のあらゆる動物の中で、同じ種でこれほどの多様性がある生き物は犬だけなのだそうです。
また犬は1万年以上もの間、人間とともに暮らしてきた歴史の中で「顔」を社会的なコミュニケーションの重要なパーツとして使っています。
これは、犬たちが自分の同族たちとコミュニケーションをするときにも同様です。そのためには、自分の目の前にいる生き物が犬であるということが認識できることが前提になります。
他に類を見ない多様性のある姿形の同族たちを、犬はどうやって犬だと認識しているのか?
フランスのリヨン大学の研究者たちが、実験と研究の結果を発表しました。
犬は犬を「犬だ」と本当に認識しているか?
犬が自分以外の犬を、別の種類の動物と区別して認識しているかどうかを調べるため、研究チームは実験を行いました。
実験に参加したのは、9匹の犬です。年齢は2歳が7匹、3歳が1匹、5歳が1匹。犬種はラブラドールとボーダーコリーが1匹ずつで、他の7匹は雑種です。
犬たちはあらかじめ、スクリーンに映し出された2つの画像のうち、犬が映っている方に移動するとトリーツをもらえるようにトレーニングされています。犬以外の画像の方に行ったときにはトリーツはもらえません。
このように準備をした9匹は、犬の顔と他の動物の顔が並んだ画像を見せられ、犬を選ぶことができるかどうかが試されました。犬の画像と並べて映された動物は、イエネコ・ヤマネコ・ヒツジ・ヤギ・ウサギ・牛・鳥・爬虫類・人間でした。
画像は合計3000種類用意されており、犬の目の前にランダムに映し出されます。犬たちは同じ画像を見ることはないように設定されています。9匹の犬たちは平均して1匹あたり144組の画像を見せられました。
その結果、9匹の犬たちは画像の中の犬のサイズやコートの長短、顔の特徴にかかわらず、正確に犬と他の動物を区別して認識しました。
犬が犬を認識するポイントは何だろう?
9匹の犬たちが参加した実験の結果から、犬が犬を認識するためには、目に見える情報をもとにしていることが分かりました。
実際の世界では嗅覚での識別も加わるため、さらに正確に犬を犬として認識できると思われます。
ただし、今回の実験では犬の身体的特徴のうちの何が認識の決め手になるのかは分からず、これは今後の研究の課題となります。
また、今回の実験の比較対象となる他の動物の画像に、オオカミやキツネなど犬とよく似た特徴を持つ動物は含まれていなかったことも、今後の課題だと考えられています。
まとめ
犬は自分の同族である犬が犬種によってどんなに違う姿形をしていても、犬として認識できるのだろうか?そしてそれはどのように行われるのか?という研究をご紹介しました。
犬たちは画像を使った実験で、みごとに犬と他の動物を区別して認識したことから、視覚からの情報が大きな役割を果たしていることはわかりました。
他の研究では、犬が人間の顔を認識し表情を読み取ることも分かっています。どうやら犬は一般的に人間が思っているよりも、ずっと多くのことを視覚から判断しているようですね。
犬による犬の認識については、今後もまだ課題が残されており、さらに深い研究が期待されます。どんなことが明らかになっていくのか、楽しみですね。
《参考》
https://blogs.scientificamerican.com/running-ponies/dogs-recognise-other-dogs-in-a-crowd/