犬の恐怖性攻撃行動とは?
犬の恐怖性攻撃行動とは、その名からもわかるように対象に対する恐怖心から攻撃行動を起こすことを言います。遊びを除いた吠える、噛むなどの攻撃行動の理由としては、支配性・恐怖性・防衛性・縄張り性・ストレス性などがあると考えられていますが、支配性または優位性を持った攻撃行動を起こす犬はそう多くありません。支配性攻撃行動を起こす犬は問題が深刻になりやすく訓練士などプロの手による指導、矯正が必要になる場合が多いでしょう。
恐怖性攻撃行動は、対象に対して恐怖を感じた時に自分を守るため起こしてしまう攻撃行動です。知らない人や犬が怖いと感じている犬に対して不用意に近づいたり、追い詰めるような形で近づいて触ろうとしたら噛まれてしまったなどという問題がこれに当たり、幼い頃の社会化が十分でなかった犬に多く起こりがちな問題です。見知らぬものや慣れていないものに怖いと感じた時、逃げる術が分からない時、頼れる相手がそばにいない時などに吠える、威嚇する、噛むといった攻撃行動で相手を遠ざけようとするのです。
恐怖性攻撃行動を起こしやすい犬種・気質
恐怖性攻撃行動は比較的どんな犬種でも起こりやすい問題だと思います。恐怖心を持ちやすい、怖がりな気質を持っている犬ほど起こしやすいとも言えるため、犬種というよりは気質の方が強く影響するでしょう。繊細で見知らぬ人や未知のことに不安を感じやすい犬、過去に何らかのトラウマ(他の犬に攻撃された、人から暴力を振るわれたなど)を抱えている犬は恐怖性攻撃行動を起こしやすいと考えられます。
子犬の頃の社会化期に多くの人や犬、物、音などに触れて慣れてきた犬は自分に自信がありまわりのものへの恐怖心が少なく物事を寛容に受け入れることが出来ます。そのため人が好き、犬が好き、楽しいことや新しいことが好き、という好奇心旺盛なタイプの犬は恐怖性攻撃行動を起こす可能性はそう高くありません。
犬の恐怖性攻撃行動への適切な対応
恐怖性攻撃行動を起こさせないために大切なことは、犬と触れ合う時その犬の反応や様子をしっかりと観察することです。特に初めて会った犬やあまり慣れていない犬に触れ合う時は、触ろうとした時に避けようとしたり後ずさりしたりする様子はないかなどを見ておく必要があります。吠える、噛むといった強い恐怖性攻撃行動は突然起こるものではなく、その前から犬なりのシグナルを少しずつ発信していることがほとんどです。「近寄らないでほしい」「触らないでほしい」など犬が感じている恐怖や不安の兆候をしっかりと汲み取って距離を取ってあげることで犬は安心して、逆に心を許してくれることもあると思います。
しかし、犬の「近寄らないで」というわずかなシグナルを無視して強引に触ったり近寄ったりすると「この人(犬)にははっきり表現しないと伝わらない!」と犬が感じて、吠える、噛むなどの攻撃行動に出てしまうのです。そのため、恐怖心や不安感が強い犬や繊細な犬と接する時は犬の反応に十分注意しましょう。
また、恐怖性攻撃行動を予防するためには犬が怖いと感じるものを少しでも減らしていくことです。人に触られること、犬とあいさつすること、大きな音がするものや見知らぬものに近づくことなど多くの経験をさせることで社会性を身につけさせると恐怖性攻撃行動は起こしにくい犬になるでしょう。すでに成犬で恐怖を感じるものがある場合でも本当に少しずつ慣らしていって克服することは可能です。
犬の恐怖性攻撃行動を減らすためには?
攻撃行動は犬の問題行動、トラブルの中でもかなり大きな問題となり解決までにかなりの時間がかかることが多いと感じます。筆者自身、トレーナーとしてさまざまな犬とその飼い主さんに接してきた中で飼い主さんがとても不安を感じ深く悩んでしまいがちなのがやはり愛犬の攻撃行動でした。しかし、実際その問題を見ると恐怖性または防衛性の攻撃行動であることが多く解決の糸口がきちんと見えていることがほとんどだと感じました。
恐怖性攻撃行動の場合、極端に言ってしまえば犬が恐怖を感じること自体をしなければ攻撃行動も起こりません。犬がその恐怖心を克服するまでは出来る限りその行為を回避するようにし、その間に恐怖心を克服するために慣らして受け入れることが出来るような取り組みをします。もちろん言葉で言うほど簡単なことではありませんが、根気よく、犬のペースに合わせてトレーニングをしていけば恐怖性攻撃行動はきっと改善する問題だと思います。