犬が気持ちを伝える手段「カーミングシグナル」
ワンちゃんはさまざまな方法で、飼い主さんに気持ちを伝えてくれます。そのような仕草を「カーミングシグナル」といい、「転位行動」や「ストレスサイン」ともよばれることもあります。不安やストレス、戸惑いを感じたときにあらわれる仕草で、自分自身を落ち着かせたり、相手の気持ちを鎮めるために行いますが、いずれも「やめて」という気持ちが隠されています。
カーミングシグナルは数十種類がありますが、今回は「戸惑い」の気持ちを示すものをご紹介します。
犬が戸惑っている仕草①あくびをする
本来ワンちゃんのあくびは、「自分の高まった興奮を抑える」というときにするものです。人間でいうと、「ため息をつく」や「深呼吸する」をいう仕草と同じかもしれません。例えば、これから大切な面接がある、テストがある、というときに深呼吸して、自分の興奮を抑えようとしますよね。
しかしワンちゃんの場合、不安やストレス、戸惑いを感じたときにあくびをする場合もあります。
初対面のワンちゃんの頭を撫でようとしたとき突然大きなあくびをした、なんて経験ありませんか?これは、「知らない人が近づいてきた」と戸惑い、あくびをすることで自分の気持ちを鎮めようとしているのです。
また、人間はストレスを感じるとため息をしますが、これはワンちゃんも同じです。知らない人が近づいてきたり、触ってきたりなど、ストレスを感じてあくびをすることで、相手に不快感を表明している場合もあります。
「あくびをする=リラックスしている」と思ってしまいがちですが、実は「私は不快に思っているよ」「静かにしてほしいな」という不快感を相手に知ってほしい気持ちをあらわしているのかもしれません。
犬が戸惑っている仕草②目をそらす
「目をそらす」というカーミングシグナルは、相手に対して敵意を持っていないことをあらわしています。これはドッグランなどでよくみられる仕草で、どんな性格か分からない初対面のワンちゃんに対しての戸惑いをあらわしています。
目をそらしながら相手に近づく場合は、「敵意を持っていないので、挨拶したい」と戸惑いや不安を抱きながらも少しずつ距離を詰めようとしています。
目をそらしながら相手から離れる場合は、「私に関わらないでね」という気持ちが隠されています。
犬が戸惑っている仕草③頭を振る
「頭を振る」というカーミングシグナルは、相手の行動に戸惑ったときにあらわれます。例えば、他のワンちゃんにしつこくお尻のニオイを嗅がれたり、飼い主さんに必要以上に頭を撫でられたり、気分じゃないのに遊びに誘われたり…。「もうやめて!」という気持ちから、頭を振る仕草をします。
これは、知らない人であっても飼い主さんであっても、あらわれやすい仕草です。
犬が戸惑っている仕草④口のまわりを舐める
これは、イタズラをして怒られたワンちゃんがよく行う仕草です。飼い主さんが怒っている様子を感じ取ったワンちゃんが、「そんなに怒らないで!」と相手の興奮を鎮めようとしています。
また、「口のまわりを舐める」という仕草は、人間でいうと「つばを飲み込む」と同じかもしれません。人前に立って喋るとき、大事なプレゼンを発表するときなど、つばを飲み込むことで自分の緊張や戸惑いを緩和しようとしますよね。このように、怒っている飼い主さんを見て、自分の緊張や戸惑いを抑える意味でも行います。
まとめ
カーミングシグナルは、「やめて」という気持ちが込められています。これらの仕草をしているにも関わらずさらに怒ったり、ワンちゃんにとって嫌なことをしてしまうとストレスが溜まってしまいます。最悪の場合、飼い主さんへの信頼も薄まってしまい、噛んだり、吠えることが多くなってしまうでしょう。
1つのカーミングシグナルで、2つ以上の意味を持つことがあります。飼い主さんは、その場の状況やワンちゃんの表情で、気持ちを察してあげなければなりません。難しいかもしれませんが、飼い主さんが愛犬の気持ちを理解しようと努力する姿は、ワンちゃんにも伝わります。ワンちゃんが示すカーミングシグナルをしっかり見ることで、ワンちゃんの戸惑いや不安を理解してあげましょうね。