犬に善悪の判断は出来ない
はじめに言ってしまうと、犬に物事に関する善悪の判断や区別をすることはできません。正確には人間と同じ概念での善悪の判断は出来ない、ということになります。当然のことながら人間社会と犬社会では、ルールもマナーも何もかも異なります。人間にとっては「善」であることは犬には理解出来ませんし、「悪」の部分も然りです。ただし、犬も人間も群れで生きる動物ですから、家族や仲間の絆が存在したり、秩序を守る行動などをすることがあります。そのため、人間はつい犬にも善悪の判断がつくのではないか?と勘違いしてしまいがちなのです。
犬は損得に敏感
犬は人間のように「相手から自分の行動がどう思われるか」ということに無頓着です。そのため物事の善悪を判断することはほとんど期待出来ませんが、自分の行動に対する結果についてはとても意識をしていると考えられています。自分が取った行動の後で、自分にとってどのようなことが起こるのかということをとてもよく理解し記憶します。
簡単に言ってしまえば、その行動を取ることで自分に嫌なことが起こるのかいいことをが起こるのかという損得を非常に考えているということです。これは人間以外の動物に共通している部分でもありますが、どうすれば自分に対する危害を防ぎ、命をつなぐ食べ物を確保できるかということをしっかりと把握することは野生動物にとってとても必要なことです。そのため、犬にもその本能は十分に残っており自分の得になることはあっという間に覚え、習慣づいていくのです。
犬は飼い主への「嫌がらせ」は出来るのか?
「悪いことはすぐに覚える」「飼い主の困るのを見て喜んでいる」「飼い主に対する嫌がらせでいたずらをする」などという話は多くの飼い主が口にしています。
確かに犬の行動を見ているとそう感じてしまうことがあっても無理はないかもしれません。いたずらやトイレの失敗など飼い主にとってして欲しくないことほど勝手に覚えたり、くり返し起こるからです。その反面、何度も教えているしつけはなかなか覚えなかったりするので飼い主は余計にイライラを募らせたり、犬に対して腹を立てたりするのでしょう。
犬の本心
しかしこれははっきり言って誤解です。確かに飼い主が困ることばかりをする犬はたくさんいると思いますが、それは決して「嫌がらせ=悪いこと」と認識して行っているわけではありません。どちらかというと飼い主を振り向かせたい、飼い主にかまって欲しいという一心でそれらの行動を取っていると考える方が自然です。筆者を含め、飼い主というのは勝手なもので犬が静かに寝ていたりおとなしく遊んでいる時はほほえましく思いながらもあまりかまうことなく自分の用事を済ませたり、休んだりしていると思います。しかし飼い主が好きで遊んでほしい犬にとってそれはとても不満なのです。だからいたずらをすることなどで飼い主の視線や注目を集め、追いかけてもらおうとするのです。子犬や遊び好きの犬にとっては軽く叱られるくらいならかまってもらっているのと変わらないということです。こういった犬のいたずらについては無視か目をあわせず淡々と対処し、飼い主から働きかけてたっぷりコミュニケーションを取ることでいつの間にか落ち着いていることがほとんどです。
犬は学習によって善悪の判断を行う
基本的に犬は人間と同じような概念で善悪を判断することは出来ませんが、飼い主や周囲の人間の反応を見て喜ばれる行動なのか怒られる行動なのかなどを判断します。そのため、経験を重ねることで飼い主の考える善悪の区別に沿った行動を取ることは出来るようになるでしょう。犬は善悪の判断がつかないからといって、物事を教えることを諦める必要はありません。
また、いたずらをした時に「こらー!」「やめて~」などあまり迫力のない叱り方をしても、飼い主も喜んでいる!楽しんでいる!と犬が誤学習してくり返してしまうことがあります。
犬は非常に学習能力の高い動物なので、飼い主が誤学習させないような態度で接することで困った行動なのは減っていくことでしょう。