雷の音
およそ80%以上の犬が雷や花火、子どもの泣き声などに対する“音の恐怖”を感じているといいます。犬が雷を嫌うのは、大きな音に対する恐怖からだと思われがちですが、最近の研究によると、いくつかの要因に対してショック反応を示しているといわれています。
犬の雷恐怖症の要因は、
- 音
- 光の点滅
- 風向きや空気の匂い
- 静電気
- 振動など
中には雷が鳴る前から不安症状を示す犬もいるほどです。何に反応するかは犬種や犬の性格によって個体差があります。犬の雷への恐怖反応は、不安や怒りの感情が含まれているといわれています。
いくつかの研究では、静電気の不快感は犬を不安定な気持ちにさせることが明らかになっています。落雷の際の気圧の変化で、犬の被毛に静電気が蓄積され、痛みのショックを引き起こすことさえあるのです。
雷による犬の反応はパニック症状
雲の中で氷の粒が衝突しあう摩擦によって静電気ができます。貯められた静電気が限界に達した時に地上に放電することで発生するのが「雷」の原理です。
雷が大地に放電することを「落雷」といいますが、この時のエネルギーは電圧で例えると数億~数十億V(ボルト)、電流では数万~数十万A(アンペア)といわれています。
動物行動学者によると犬が地下室やトイレ、お風呂場など狭い空間に逃げ込むのは、雷によって犬がパニック症状を引き起こした時の行動だといわれています。
花火の音
夏の風物詩のひとつ、花火に対する犬の恐怖反応も同じです。
雷の音や花火の騒音への犬の恐怖は、いくつかの要因や組み合わせによって発生する可能性があります。
また、老化や難聴によるものという説もあり、生まれつき音に敏感な犬の気質や子犬の社会化期(生後3~13週)に音を含むさまざまな刺激に適応する社会化不足などが原因となることもあります。
その他、雷の音と光=「恐いもの!」「生命を脅かす危険がある!」と犬が学習しトラウマとなってしまう場合や、飼い主が雷に対する恐怖心を持っていると犬にも恐怖心が遷る場合などがあります。
まだある!犬が嫌いな音5つ
犬が恐怖を感じる音は他にもあります。
- 掃除機の音
- 洗濯機の音
- 工事の音
- バイクの音
- おもちゃの音など
筆者の愛犬がパピーの頃の話になりますが、スイッチを入れると踊りながら歌をうたう猫のオモチャを恐がりブルブル震えてしがみ付くことがありました。
視界に入るだけで怯えていたので愛犬が見えない場所に隠しておいたのですが、成犬になってからはオモチャを見せても恐怖心は失せたようです。
犬の騒音恐怖の症状
犬の騒音恐怖の症状は軽度から重度の症状があります。
- 震える
- 隠れる
- 吠える
- あくびをする
- 手足を舐める
- 走り回る
- 「ハァハァ」と呼吸が荒くなる
- 嘔吐や失禁をする
- モノや人を噛む
- ガラスを突き破る
など発作的な行動を引き起こし、命を脅かす危険性さえあり得ます。
5つの対策
1.飼い主が花火や雷の音に反応しない
飼い主が異常な反応を示すことで、犬の恐怖心を煽る可能性があります。犬にとって「怖いもの」「危険なもの」と学習させないように平静を保ちましょう。
2.犬の快適な場所を開放しておく
トイレやお風呂場のドアを開放し、クレートやベッドの下など、狭い空間や愛犬のお気に入りの場所に自由に出入りできるようにしておきましょう。
無理やり追い出したり騒音に近づけたりしないこと。この行為は恐怖を増加させることになります。犬に快適な場所を確保させることで次第に音に慣れるようになります。
3.雷や花火の音を遮断する
家のドアや窓をすべて閉鎖し、ラジオやテレビの音量を上げて雷や花火の音を遮断しましょう。また、光の点滅を遮断するために犬用サングラスをかけるという方法もあります。
4.犬を抱きしめる
恐怖の兆候を見せている時、飼い主の多くは愛犬の“赤ちゃん返り”を感じています。つまり、成犬となった犬が子犬のように甘える仕草を見せる行動です。このような時は、優しい声で「大丈夫よ!一緒にいるからね」と話しかけ抱きしめてあげましょう。
5.花火大会やお祭り会場に連れて行かない
花火大会やお祭り会場に犬を連れて行くことは避けるべきではないでしょうか。
もちろん、雷や花火に恐怖を抱かない犬もいます。しかし混雑する人混みの中には、犬が嫌う子どもの泣き声や花火の爆音など複数の騒音が入り混じり、恐怖を感じさせるさまざまな要因があります。
このことが切欠で犬がトラウマとなり、騒音や人混みを嫌う原因になり兼ねません。
また混雑した人混みの中に犬を連れて行くことで、迷子になることもあり得ます。
毎年夏恒例の花火大会開催地で犬が逃げ出す事件が増えています。人間には聞こえないほどの遠い雷や花火の音に怯え、お散歩中に突然走り出すケースも多いといいます。
最後に
騒音を嫌う犬が雷や花火の爆音に反応すると、行動的にはパニック発作と同様の症状が現れ、心理的には他の犬に比べトラウマが継続する可能性が高いといわれています。
夏の間に発生する騒音は、花火や雷の音だけではありません。建設工事や道路工事の騒音やバイクの音など、騒音恐怖症の犬にとって梅雨から夏にかけてはストレスの多いシーズンとなります。
花火や雷の音のCDを繰り返し視聴させて騒音に慣れさせるという方法もありますが、飼い主として一番の対策は、犬の恐怖をできるだけ和らげ、リラックスさせてあげることでしょう。