犬が人間に何かを伝えようとするジェスチャー
犬と暮らしている人なら、彼らが様々な手段を使って私たちに何かをリクエストしてくることはごく当たり前のこととして対応していると思います。
例えば、遊んでいたボールが家具の下や隙間に入り込んでしまって自分では取れない時、犬は吠えながらソファーの下と人間を交互に見つめて「取って」と訴えてきたりします。
部屋の外に行きたい時に、前足でドアを軽く叩いたり引っ掻いたりしながら人間の方を見て「開けてほしい」という意思を伝えることもありますね。
犬の認知に関する研究は数多くありますが、今までの研究は全てが「犬が人間のジェスチャーや言葉を理解しているかどうか」という、犬にとっては受け身のコミュニケーションの研究でした。
この度イギリスのサルフォード大学の研究チームによって、初めての「犬が発信する指示的なジェスチャー」についての研究が発表されました。
家庭犬の日常的なジェスチャーを録画して分析
研究は37匹の家庭犬とその飼い主の協力によって行われました。
飼い主たちは定められた期間の数週間に渡って、彼らの愛犬が日常的に行うコミュニケーションジェスチャーを録画することを依頼されました。
犬がトリーツをねだったり、おもちゃを取ってほしい、ドアを開けてほしいなどの意味の行動をした時の様子が録画され提出されました。
犬のジェスチャーのビデオは「犬が意図する目的」「ジェスチャーが登場する頻度」「犬の意図が人間に伝わったて目的が達成されたかどうか」などに応じて、研究者によって分類〜分析され、最終的に19種類のジェスチャーが、犬が発する『指示的ジェスチャー』として分類されました。
『指示的ジェスチャー』としてみなされる条件は、そのジェスチャーが
- 対象とする目的がある(おもちゃを取ってほしいなど)
- そのジェスチャーそのものは物理的に機能しない(ドアを開けて欲しい時に引っ掻くが、その行動自体ではドアは開かない)
- 意図を伝えるための相手がいる
- 受け手に行動を起こさせる
- 明確な意図を含んでいる
の5つです。
飼い主にとってはおなじみの『指示的ジェスチャー』
最終的に条件を満たして『指示的ジェスチャー』として分類された19のジェスチャーは犬の飼い主にとっては、とても見慣れたおなじみのものでした。
- おなかを撫でで欲しい時などに仰向けに寝てゴロゴロする
- 頭を使って人間の手を自分の身体の望むところに誘導する
- 興味のあるものや欲しいものを前足で押さえる
- 取ってほしいものと人間の顔を交互に見つめる
- 物や人間の身体に鼻先を押し付ける
- 前足で人間の腕や足を軽くひっかく
- 前足を上げてハイタッチのような動きをする
これらは『指示的ジェスチャー』のうちの代表的なものです。
犬から発せられた要求やリクエストで最も多かったのは「身体を撫でて/掻いて」「食べ物/水がほしい」「ドアを開けて」「物を取って」の4つでした。
また最も頻繁に見られたジェスチャーは「ほしい物と人間の顔を交互に見る」で、37匹中35匹の犬が実行していました。
まとめ
犬が人間に対して何かを求める時の『指示的ジェスチャー』についての初の研究の内容をご紹介しました。
この『指示的ジェスチャー』は人間以外の動物が使うことはあまり無いものだそうです。
チンパンジーなどの類人猿では同種の生き物同士の間で数種類の指示的ジェスチャーが確認されています。飼育下にある類人猿では、人間に対しての指示的ジェスチャーが1〜2種類見られるそうですが、これらは哺乳類の中でも例外的です。
つまり犬が人間に対する異種間の指示的ジェスチャーを19種類も持っているというのは例外中の例外で、犬と人間の結びつきの強さを改めて感じさせるものです。
日常生活の中で当たり前のように「ボール取ってほしいの?はいどうぞ」と言うようなやり取りをしていることが生き物としては驚異的なことだと判ると、犬への愛おしい気持ちがいっそう強くなるような気がしますね。
《参考》
https://www.psychologytoday.com/us/blog/animal-emotions/201805/dogs-use-various-gestures-get-what-they-want-us
https://thesciencedog.wordpress.com/2018/05/17/get-help-pony-is-in-trouble/
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女性 匿名