夏に生まれた犬は心臓の病気になりやすい?
アメリカのペンシルバニア大学の研究者が、夏生まれの犬は心臓や動脈などの循環器系の疾患を発症するリスクが高いという論文を発表しました。
特定の月に生まれた個体が特定の疾患に罹りやすいという傾向は人間にも確認されており、夏生まれと心臓疾患の関連についても人間で同様の調査結果が報告されています。
気になるその内容をご紹介していきます。
なぜ夏生まれに心疾患が多い?
研究は253犬種129,778匹の医療データを用いて行われました。
この膨大なデータから分析した結果、6月〜8月の3ヶ月間に生まれた犬は他の生まれ月の犬よりも心臓と動脈の疾患に罹る割合が高いことが示されました。
特に7月生まれがピークで、他の生まれ月に比べて平均で1.5倍、低リスクの生まれ月に比べると約2倍も心臓疾患発症の割合が高くなっています。
分析データからは元々心臓疾患の素因がある犬は除外して統計を取っていますので、ここで心臓疾患を発症したとされる犬の数字には、純粋に生まれ月からの傾向が見て取れます。
同じ研究者が過去に発表した、人間の場合の生まれ月と心臓疾患に関する研究では、受胎時期や妊娠のごく初期の頃に大気汚染(時期的に特定の物質が増えるもの)にさらされたことが疾患と関連していると考えられています。
今回の研究では、人間といっしょに生活する犬にも同じ傾向が現れているものと考えられます。
研究からわかったことと解決の糸口
生まれ月と心臓疾患の関連については、興味深い他の要素もわかりました。
ノーフォークテリアやキングチャールズスパニエルなど、遺伝的に心臓疾患を発症する割合が高いと言われる犬種には、この「夏生まれと心臓疾患の関連」が見られなかったということです。
これはつまり、夏生まれの犬の心臓疾患に関わる遺伝子は、通常心臓病に関連する遺伝子ではない可能性があるということですので、今後の治療や予防の研究の糸口になるかもしれません。
また、これらの犬種では心臓病に対する注意や観察がきめ細かくされており、心臓病を発症した個体は繁殖から外すなどの配慮を取っていることも関係しているかもしれないとのことです。これは今後の研究課題のひとつです。
人間の心臓疾患の研究には犬の同じ疾患がモデルになる例が多く、この生まれ月と心臓疾患の関連についての研究も引き続き行われていく予定です。
犬の疾患の治療が人間に応用されるということは、犬の心臓疾患に関する最先端の医療が研究されているということです。疾患はないのが一番ですが、これは心強くもありますね。
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まとめ
アメリカのペンシルバニア大学の研究者によって発表された、夏生まれの犬は将来的に心臓疾患を発症するリスクが高いという研究をご紹介しました。
夏生まれの愛犬と暮らしている方にはショッキングな内容でもありますが、人間にも共通するこの傾向は今後も引き続き研究が行われていく予定です。
また、心臓や血管の病気のリスクが高いことがわかっているなら、早いうちから食事やサプリメントに注意を払ったり、心臓への影響が大きいと言われるデンタルケアを念入りにするなど対策を立てておくのも大切ですね。
毎日の生活の中でできることをしながら、今後の研究に期待したいと思います。
《参考》
https://www.nature.com/articles/s41598-018-25199-w