クリッカー有りか?クリッカー無しか?比較の研究
犬がトレーナーの指示通りに動いた時にカチッと鳴らしてトリーツを与えるクリッカートレーニング。犬以外の動物にも有効で、一般の飼い主さんにも浸透している定番のトレーニング方法です。
クリッカーを使うことでトレーニングが楽しいものになり、犬とハンドラーの関係性が強くなると言われています。
一方で、初心者にはクリッカーを使うことが難しい場合もあり、犬によってはクリック音によって興奮したり怖がったりして上手くいかない例もあります。
この度オーストラリアのラ・トローブ大学の研究チームによって、クリッカー+トリーツのトレーニングとトリーツのみでトレーニングをした犬たちの比較研究の結果が発表されました。
クリッカーを使っても結果に違いがない?
今回の研究では「トレーニングの初心者が家庭犬に基礎的な訓練をする場合のクリッカーの利点と欠点」がテーマです。
トレーニングセッションに参加したのは家庭犬でハンドラーは飼い主、飼い主に対してはプロのトレーナーが「正の強化」のトレーニング法を指導します。
各グループには15匹ずつの犬が振り分けられました。
- Aグループはクリッカーとトリーツを使ったトレーニング
- Bグループはトリーツのみを使ったトレーニング
それぞれに6週間ずつのトレーニングセッションを受け、セッションの半ばとすべてのセッションが終わった後に訓練の成果を見るためのテストと、ハンドラーへの聞き取り調査が行われました。
気になる結果は?
その結果、障害コースを走るテストや、いくつかの問題解決のテスト、犬と飼い主の関係性などで、クリッカーを使った場合も無しの場合もテストの結果に違いが見られませんでした。クリッカーの利点と欠点を見つけようというテーマだったのですが、どちらも見つからなかったというわけです。
クリッカートレーニングに関する研究は数多く行われていて、2016年にはイタリアのトリエステ大学の研究者によって、クリッカー+トリーツ、口頭で褒める+トリーツ、トリーツのみのトレーニングの比較研究が発表されており、3つのグループに差異がなかったことが確認されています。
今回のラ・トローブ大学の研究は先の研究と一致するものでした。
ではクリッカーを使っても意味がないのか?
クリッカーを使っても使わなくても、トレーニングの成果に違いがないなら使う意味がないのか?と言うと、そんなことはありません。
クリッカーを「カチッ」と鳴らすのを楽しいと感じるハンドラーにとってはとても有効なツールです。けれど初心者レベルの基礎的なトレーニングにおいてハンドラーがクリッカーをわずらわしいと思うなら、使わなくても何も差し支えはないと研究者は述べています。
ただしこれは、今回の研究のテーマでもある初心者レベルでの話です。
過去の研究から、シニア犬にクリッカートレーニングをすることで認知機能が向上することがわかっていますし、アジリティなど高度な訓練においては今回の結果は当てはまらないこともわかっています。
また猫や鶏など、従来はトレーニングが難しいとされていた動物もクリッカーを使うことでトリックなどを習得しています。
今後はさらに、初心者向けよりも高度なトレーニングにおいて「クリッカー+トリーツ」と「口頭での褒め言葉+トリーツ」の有効性の比較などの研究が控えているそうです。楽しみですね。
まとめ
初心者向けの犬のトレーニングセッションにおいては、クリッカーを使っても使わなくても犬の訓練習得の度合いに違いが見られなかったという研究結果をご紹介しました。
初心者がクリッカーを使うのは「どちらでもあなたの好きな方でOKですよ」と研究者が結論を出しています。
筆者はそこにもうひとつ「あなたの犬がクリッカーを使ってもOKなら」と付け加えたい気がします。なぜなら、私はクリッカーを鳴らすのが好きですが、うちの犬はクリック音を怖がってしまうので。
今後もクリッカーに関する研究は続けられるそうですが、人も犬も楽しく効果的にトレーニングができるためのツールの科学的なバックアップが取られるのはありがたいことですね。
今後の研究にも注目したいと思います。
《参考》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159118302211