犬に関する豊富な知識が思い込みを生むことも…
同じ犬種を何代にも渡って飼育したり、多種多様な犬種を飼育したりといった経験をしている方は、食事やしつけ、病気などのおいてあらゆる事態に直面したことがあり必然的に犬に関する知識が豊富だと思います。特に勉強熱心な飼い主さんであればあるほど、その知識は深くプロ顔負けとも言えるほど。実際に筆者がトレーナーとしてしつけの指導をした飼い主さんの中にも犬種それぞれの特性や犬のしつけの仕方、行動学の理論など「そんなことまで知っているんだ!!」とびっくりするような知識や見識を持っている方がいらっしゃいました。
しかし、世界中で日々進歩し続けている犬に関する情報を逐一キャッチし続けることは非常にむずかしいことだと思います。そのため、自分の今持っている知識だけを信じ続けるといずれ間違った知識になってしまうことや偏った情報になってしまうことも少なくありません。また、犬種特有の気質や性格に詳しいベテラン飼い主は多いのですが、その知識ゆえに犬の個性を見落としてしまうことも。頭の中の知識はとっても有益なものですが、それ以上に大切なのは目の前にいる犬をしっかりと観察して理解することだと思います。
「うちの子はこうだから…」決めつけに注意
愛犬と長年連れ添っているベテラン飼い主は、当然のことながら誰よりもその犬のことを知っていると思います。しかし長年一緒にいるからこそ、深く理解しているつもりだからこそ意外な見落としをしていることや偏った見方をしてしまっていることもよくあることなのです。
特に犬の場合は人間の子供のように学校などに通うこともなく、他の犬と比較される機会も少ないので気質や性格の特徴を正確に把握することが案外むずかしいのです。そのため「うちの子は臆病だから…」と聞いていた犬がものすごく気が強かったり、「うちの子は穏やかで噛んだりしない」と飼い主さんが思っていた犬が実はものすごく我慢を重ねていて突然爆発してしまったり、という事例も見てきました。
愛犬のことをしっかりと把握して傾向と対策を考えることはとても大切なこと。しかし、時々その「うちの子フィルター」を外して客観的に見る努力をしてみてください。他人からどう見えるか、他の犬にとってどのような存在(ボス?下っ端?仲間?親友?)か、などを考えてみるとより正確に愛犬のことを理解できるようになると思います。
飼い主としての自信を慢心に変えないこと
愛犬の個性についてもしっかりと把握できているベテラン飼い主も多く、私もたくさんの素晴らしい飼い主に出会ってきました。そんな方たちは愛犬に対してどのような態度で接することがいいのか、今何をすることが必要か、どんなことに注意しなくてはいけないかということなどもしっかりと理解しています。そのため愛犬に特定すれば、プロのトレーナーなどよりもよほど上手に犬を扱うことができる場面も少なくありません。しかし、その自信や愛犬に対する信頼から油断や慢心が生まれ、思わぬ事故やトラブルを招いてしまうことも…。些細な気持ちや体調の変化などを言葉で伝えられないからこそ、「いつ何が起こるかわからない」というほんの少しの緊張感を忘れないようにして不幸な事故を未然に防ぐようにしましょう。
<まとめ>ベテラン飼い主が注意すべきこと
犬に関する知識を深めることともに、愛犬の個性をしっかりと見極めて理解することはとても大切なことです。犬に関する一般的な知識を持つことと愛犬の個性を尊重することは相反する場面も出てくるかもしれませんが、どちらも必要なことでそのバランスを保つことが飼い主として重要になってきます。
専門的に犬について勉強をしている方は除き、ベテランと言えど一般的な飼い主であれば犬に関する知識は基本的に本やインターネットなどによって身につけているものであったり、愛犬のトレーナーやブリーダーからの受け売りであったりすることが多いと思います。犬の食事、医学、行動学などについての研究は日々進歩し続けており、日本でもこの10~20年で驚くほどに犬に関する情報や見解が変化してきています。そのため、特にインターネット上ではあらゆる情報が乱立しており、その中から正しい、または愛犬に適切な情報を引き出すことは簡単なことではないと思います。
ベテラン飼い主だからこそ生まれてしまいがちな思い込みや油断によって思わぬトラブルが起きてしまわないように、愛犬の成長に合わせて偏りのない知識や見解を持つベテラン飼い主へと一緒に成長していきましょう!