犬がマーキングをする意味:縄張り意識
犬は、縄張り(テリトリー)意識からマーキングをします。自分の縄張りとして主張したい場所を囲むように、電柱や壁、曲がり角などに少量ずつのおしっこをかけて自分のニオイをつけます。この行動は、青年期のオス犬や発情期中のメス犬に多く見られるもの。
生後8か月頃までの子犬は、オスでもおしっこの際に足を上げることはほとんどありませんが、青年期に差し掛かる頃から足を上げるようになりマーキングもするようになります。また、メスでも縄張り意識が強かったり支配性の強い犬の場合は、足を上げてマーキングをすることがあります。
予防や対処法について
縄張り意識によるマーキングをするなら、去勢手術や避妊手術をすることでしなくなる場合があります。ただしマーキングが完全になくなるわけではなく、性格や手術のタイミングなどによって残ってしまうこともあります。それでもマーキングが減る効果はあるようです。
犬がマーキングをする意味:周囲へのあいさつ
犬がいつもの散歩コースや公園でマーキングを行うことがあります。これは、縄張り意識と同じように考えられがちですが、いつも会う犬に対してあいさつとして自分のにおいを残しておきたいという心理から行われるものです。
犬は、散歩中に地面のにおいを嗅いでいることが多いと思いますが、これは周囲の犬たちの情報を嗅ぎ取って情報収集している行動です。人間がテレビやネットなどで情報を集めるのと同じように、犬は散歩中などに地域のことや友達のこと、外で暮らす他の動物たちの情報を知ろうとしています。
これは犬にとっても非常に重要なことなので散歩中ににおいを嗅いでいたら、しばらくはそっと見守ってあげましょう。
予防や対処法について
周囲へのあいさつとしてのマーキングは、犬にとって大切なことなのでやめさせるのは難しいでしょう。情報集めのにおいを嗅ぐのと一緒にマーキングしていることが多いので、おしっこをしてほしくない場所なら、可愛そうですが少し早足でその場を通り過ぎるなどで対処しましょう。
また、マーキングをしそうなときに名前を呼んで気をそらしたり、おもちゃを投げて遊んだりして意識を変えるようにするのも効果的です。
犬がマーキングをする意味:飼い主の気を引くため
縄張りを主張する必要のない家の中でもマーキングをしてしまう場合は、飼い主の気をひくためのアピールやストレスによるものが考えられます。散歩の時間が短い、スキンシップの時間少ないなど「もっとかまってほしい!」という思いからマーキングをすることが増えるようです。こうした要求が理由の場合は、吠えたり破壊行動なども見られることもあります。
トイレ以外の場所でおしっこをされると、つい叱ってしまったり、掃除しながら文句を言ってしまうこともあるでしょう。飼い主の反応が大きいと喜んでいる、かまってくれると勘違いしてさらに気をひくためにマーキングをしてしまうことがあります。
予防や対処法について
犬が室内でのマーキングをすると「嫌がらせをしている」と思ってしまう飼い主さんもいるようですが、犬に嫌がらせという概念はありません。かまってほしくてわざとすることはあります。
トイレ以外の場所で粗相が続いたり、マーキングのような行動が見られるようになったら、散歩や遊びの時間が足りているか、スキンシップの時間を十分作っているかなど、まずは飼い主さんの行動を一度見直してみましょう。
愛犬は嫌がらせをしているのではなく、かまってほしいくてわざと気を引いているのかもしれません。満足してもらえうように愛犬との時間をしっかり取りましょう。また、粗相やマーキングをしてしまっても、大声を出したり叱ったりするのはNG。黙って淡々と片づけるようにしましょう。
まとめ
犬にとってマーキングは縄張りやあいさつ、かまってほしいなどの理由がある大切な行為です。してほしくない場所でマーキングをされると飼い主にとっては困りものですが、理由がわかればそれぞれの対処方法もあります。
縄張り意識からのマーキングは、子犬の頃から癖になってしまうと簡単にしつけで直らないこともありますが、犬の習性だと理解し、他に意識を向けさせるなど根気よく接していくことが大切です。
ただし、急に排尿の回数が増えたなど、いつもと様子が違う場合は病気の可能性も考えられます。排尿時に痛そうにしたり、飲水の量が増えたなど気になる様子が見られたら、マーキングだと軽視せず、早めに動物病院を受診しましょう。日頃から愛犬をしっかり観察することが何より大切です。
監修ドッグトレーナーによる補足
マーキングは自分の縄張りを守るために行う自己主張で犬が本能的に行うものです。本能的な行為を止めさせるのはとても難しく、無理に止めさせようとすると犬に強いストレスを与えてしまうことも少なくありません。
散歩中に電信柱などにマーキングをしたらお水をかけて流したり、室内ならマナーウェアを着用させるなども対策のひとつです。しつけをする場合は、縄張りなのか仲間との情報共有なのか、かまってほしいからなのかなど、まずはマーキングの原因をしっかりと把握し、愛犬が無理のない程度でしつけすることが大切です。