犬の攻撃は「恐怖」と「嫌悪」の心理から行動を表す
犬のルーツを辿ればオオカミにたどり着くと言われているように、犬は群れの中で暮らす本能を持っています。犬の社会は、群れの中の他の仲間との関係性や上下関係に基づいているといわれています。
群れの中では、犬とオオカミの本能や社会システムが異なるため、愛犬が飼い主に対し、「自分の方が上だぞ!」と優位性を主張することは滅多にありません。人間と共存する愛犬の攻撃行動(唸る・歯を剥きだす・吠える・噛むなど)は、恐怖と嫌悪の心理を表すメカニズムがあるということです。
犬が噛む時、感情ではなく本能に基づいた行動をしている
犬が攻撃する多くの場合、飼い主の行動や環境に反応しているといいます。犬が問題行動を起こした時、飼い主の怒りに対して、犬が罪悪感を感じることはなく、単純に飼い主が「怒っている」と察知したことに反応しているのです。
犬が取る行動は、その直前に発生した環境や刺激に基づいています。感情ではなく本能に基づいた行動であることを理解しましょう。
1.人間に伝わらないことでイライラ・・・
犬の問題行動の中でも、「噛む」という行動は、事故につながる可能性が高く、飼い主として一番重大で深刻な問題ですよね。
大人になった犬が飼い主を噛むのは、犬の恐怖や嫌悪という心理が人間に伝わらず、「噛む」という行動に至るケースがほとんどだといいます。
2.犬が人間と目を合わせる心理
人間が犬を見て「友好的」に感じても、犬にとっては「敵意」とみなすことがあります。
お散歩の途中、見るからに犬好きな人が近寄ってきて、愛犬の顔を直視し「可愛いね~」と頭を撫でることがあると思います。
目を合わせる行為は、人間にとっては相手に友好的な感情を示す場合が多いかもしれませんが、犬の場合は、敵意を持っている相手の目を見つめることがあります。
この時、犬の表情は険しくなり、鼻にシワを寄せたり歯を剥き出しにして唸り声をあげて威嚇しているはずです。
このような場合、人間に対して制御できない可能性があり、初対面の人や飼い主が鼻を噛まれることがあり得ます。愛犬の表情を良く観察して「敵意を表しているのか好意的なのか?」を察してあげましょう。
3.侵入者に対する縄張り意識と攻撃本能
わが家はマンションでインターフォンがなると同時に愛犬が急に吠え捲るのですが、玄関に現れる宅配業者さんには特に警戒します。
これは自分のテリトリーを侵す存在に対して「吠える」という行動に出る犬の本能です。わが家には玄関ポーチがあるので、宅配業者さんに「噛む」という問題行動が起こらないように飼い主として「怪しい存在」ではないことを学習させています。
4.見知らぬ人や不侵入者に対する恐怖心
犬にとって見知らぬ存在や、不侵入者に対する恐怖から「噛む」という行動に至ることがあります。
例え人間が犬に対して好意的な気持ちがあっても、犬には恐怖心があり、相手に攻撃される前に「吠える」「噛む」など攻撃しようとする犬の本能なのです。
この本能が高く評価され、番犬や警察犬として活躍するジャーマン・シェパード・ドッグやコリー、ドーベルマンやボクサーなど大型犬のイメージが定着していますが、小型の室内犬でも、自分の群れを侵入する存在に対し、攻撃する本能を持っているのです。
5.自分の食べ物を守るための行動
愛犬が食べ残したフードボウルの回収や、放置したおやつに手を差し伸べた瞬間!・・・飼い主の手や指を「ガブリ!」と噛むことがありますよね。
わが家の後住犬は、自分のフードを完食後、まだ食べ終わっていない先住犬の餌を狙うことがあります。
こんな時、先住犬が自分の餌を守るために攻撃的になり、2頭で噛みあうほどの喧嘩になることも。
筆者が喧嘩を辞めるように2頭を引き離そうとしても犬が興奮をしている最中で、手を噛まれるということがありました。
これは群れの中で生活する犬が自分の食料を守る、という本能から来る衝動的行為なのです。
6.自分の所有物を守るための行動
犬が自分のお気に入りのおもちゃや所有物を守るために攻撃的になることがあります。
わが家の愛犬のケースでは、首に巻いているバンダナが視覚に入り、必死に守ろうとお気に入りの場所(家具の下)に入り込み、覗き込むと「ウー!」と唸り声を発することがあります。
また、洗濯物のハンカチや靴下を咥えて家具の下に隠れたり、こたつの上の布巾を咥えて守ることも。
こんな時は、犬から無理にモノを奪おうとしても攻撃性がエスカレートするばかりで、噛むという行動に発展する恐れがあります。
犬が目の前の所有物に飽きるまで、放置しておきましょう。
7.人間の行為がしつこいと感じた時
歯磨きを嫌がるワンちゃんに、強引に歯ブラシを口に入れようとしたり、歯磨きを習慣にしようと繰り返し試行錯誤を重ねることがありますね。
また、愛犬が愛しいあまりに、飼い主の感情でちょっかいを出した時の犬のリアクションにハマり、ついもう一度、もう一回だけ・・・なんてことはありませんか?
その行為、愛犬にとって一番嫌な行為かもしれませんよ。
犬にも人間と同じようにいくつかの感情があり、自分にとって嫌な行為を繰り返されることに攻撃的になり、衝動的に噛んでしまうことがあります。
自分の嫌悪感が相手に伝わらないストレスから攻撃がエスカレートして「噛む」という行為に発展するケースです。
人間社会と同じように、犬にとって嫌悪を感じる行為を飼い主が見極めてあげましょう。
最後に
愛犬の心理は飼い主が一番理解してあげたいことですね。
愛犬と暮らす生活の中で、「言葉が通じたらいいのになぁ」と思う場面がありますよね。
犬にとっても同じ事。
元々群れの中では、ボディランゲージを使って仲間とコミュニケーションを取りあう犬が、人間と暮らす中で、学習することはたくさんあります。
犬も、飼い主家族や他の人間に対して自分の感情を必死に伝えようとしているのです。
恐怖や嫌悪といった感情がエスカレートした瞬間! 犬の攻撃する本能から「噛む」という行動に出ることがあるのです。
愛犬が飼い主を噛んでしまう時、噛む側の犬にもストレスがかかっているはずです。
「噛む」という問題行動が続く場合は、早めにドッグトレーナーさんや専門家に相談することをおすすめします。
《参考資料URL》
http://dogattackinjury.com/why-dogs-bite/dog-psychology/
https://www.docdog.jp/2016/08/lab-arata-02.html
https://www.psychologytoday.com/us/blog/decoding-your-pet/201412/dogs-dont-bite-out-the-blue
https://haney.jp/1697
http://kamuinu.pet-siiku.com/dog50
https://www.docdog.jp/2016/08/lab-arata-02.html
《参考書籍》
イヌの心理学 堀 明著