人間の表情は犬の脳でどんなふうに処理されているんだろう?
犬が人間の表情を読み取って感情を認識しているという研究は今までにもたくさんあります。けれども犬の脳内で「人間の顔に表れた感情」という情報がどのように処理されているのかは明らかになっていませんでした。
このたび、メキシコのケレタロ自治大学の研究チームによって、MRI(磁気共鳴映像装置)を使って犬が人間の表情を見た時の脳の状態を観察する研究が発表されました。
犬が人間の顔を見た時の脳の状態が科学的に明らかになる、どんな結果だったかをご紹介します。
MRIを使って「犬が見ている世界」を探る
実験に参加したのは4匹のボーダーコリーです。犬たちは拘束のない状態でMRIのマシンに入り脳のスキャン画像が撮影されます。
まず最初の実験では、犬たちと面識のない人間の「うれしい顔」と「無表情な顔」を見せた後にMRIによる撮影を行いました。
そして次の実験では、「うれしい顔」「怒っている顔」「悲しい顔」「恐怖の顔」を見せた後同じように撮影を行いました。
人間の表情を見た犬の脳に起こっていたこと
すべての表情を見た犬の脳のスキャン画像を比べると、1種類だけ他と違うパターンのものがありました。それは「うれしい顔」の表情でした。
犬が人間の「うれしい顔」を見た時、脳の側頭皮質および尾状核において脳の活動が増加することが確認されました。脳のこの部分は顔の表情を含む複雑な視覚情報の処理に関与していると考えられています。
一般的にネガティブな感情と呼ばれる「怒り」「悲しみ」「恐怖」を区別することは難しいということもわかりました。
さらに興味深いことには、人間が同じような実験で脳のスキャン画像を撮った場合、今回の犬のそれとたいへんよく似ていたそうです。
研究者は、
と述べています。
今回は被験者の犬が4匹という小さいサンプルサイズですが、犬の神経システムの研究と、表情から読み取れる感情を脳が処理する過程が犬と人間でよく似ているという点で、今後の重要なステップだと言われています。
おまけの参考動画
ところで、犬を拘束しないでMRIの撮影をするってどうするの?と疑問に思われませんでしたか?
今回の研究のものではないのですが、他の研究者による犬のMRI画像撮影のための光景が動画に収められているものがあります。
犬たちは自主的にMRIの装置に入るように訓練されているのですが、それが素晴らしいのでぜひご覧ください▼
まとめ
犬が人間の「うれしい顔」「怒った顔」「悲しい顔」「恐怖の顔」「無表情」を見た時の脳のMRIスキャン画像を比べると、うれしい顔を見た時だけ脳の働きが活発になることがわかったという研究結果をご紹介しました。
この研究は今後もさらに続けられ、犬の脳と認知機能についてさらに深いことがわかるだろうと期待されています。
犬はたとえ面識のない人であっても、うれしい顔の表情を見ると脳が反応をするなんて犬と人間の関係の深さがはっきりと現れていますね。人間との長い歴史の中で犬が人間の表情を読み取ることに長けてきたということが科学的に証明された形です。
科学が犬と人間のよりよい関係を作る助けになるというのはとてもワクワクさせられますね。