犬の体にフケが出るのはなぜ?
フケとは、表皮から剥がれ落ちた古い皮膚です。人は頭皮からフケが出ますが、犬は全身からフケが出ます。白色の粉がふいていると、なんとなく不潔なイメージがありますが、健康な皮膚からもフケは出ます。
毛の生え変わりである換毛期にもフケが多く発生することがあります。急に多くのフケが出ていると心配になりますよね。注視すべきは、フケの量や頻度です。
そもそも、なぜフケは出るのでしょうか?
フケが出る仕組み
皮膚の一番外の皮は「表皮(ひょうひ)」と呼ばれます。表皮の内側では新陳代謝により新しい細胞がうまれ、徐々に表皮に押し上げられます。
古くなった皮膚は剥がれ落ち、フケとなります。この仕組みは皮膚のターンオーバーといい、表皮の油分を正常に調整しています。
フケは健康な犬でも出る
犬の皮膚は通常20日~25日でターンオーバーします。少しのフケが出るのはターンオーバーがうまくできる健康な皮膚である証拠です。
犬のフケが多くなる原因
人の皮膚が季節の変り目に乾燥するように、犬の皮膚も季節の変り目には敏感になります。特に、免疫力が整っていない子犬や、さまざまな病気がある老犬は皮膚に異常が現れやすくなります。
フケの量が少量なら問題ありませんが、多いときは注意が必要です。犬の体質や、日頃のお手入れ、病気などフケの多くなる原因はさまざまです。フケが多くなる原因を5つに分けて紹介します。
乾燥しやすい生活環境や乾燥肌の体質
冬は空気が乾燥する季節です。室内犬はヒーターやコタツの使用でさらに乾燥した環境にいます。
犬の皮膚の厚さは0.05㎜~0.1㎜と、人の皮膚の厚さ0. 2㎜と比較してもとても薄い皮膚をしています。皮膚が薄いと、乾燥に弱くすぐにガサガサになってしまいます。
皮膚が乾燥しているサインは、皮膚がガサつく、毛並みが悪くなる、フケが多くなるといった状態です。
特に、柴犬、トイプードル、ダックスフンドは皮膚の水分量がすくないため乾燥肌になりやすい体質なので注意が必要です。
誤ったスキンケアやお手入れ不足
毛の短い犬、小さな室内犬は自宅でシャンプーをする機会も多いと思います。ですが、間違ったケアはフケが発生する原因になります。
《間違ったケア》
- 体の汚れを放置している
- 人間用シャンプーを使用している
- 毎日お風呂に入れる
- シャンプー後に保湿しない
犬のために良いと思って行なっているお手入れが、逆に乾燥肌にしているかもしれません。もともと健康だった肌も間違ったお手入れを続けると、肌トラブルをおこします。
精神的なストレス
日頃フケが少ないのに、散歩から帰った時にフケの多さに驚くことはありませんか?
相性の悪い犬に会った時、知らない人に撫でられた時など、「ストレスや不安」といった心理状態の変化で急に大量のフケが目立つことがあります。
好きな人に撫でられたとしてもフケが目立っていれば「緊張や興奮」の表れです。ストレスや不安を感じると、皮膚の下にある立毛筋が収縮し、毛が逆立ちます。
皮膚がボコボコと波打つことで、表皮が剥がれやすい状態になりフケが一気に目立つようになります。
ストレスを回避しようと体を掻く仕草をする犬もいます。爪で皮膚をガリガリと削ると、表皮が剥がれフケとして表れやすくなります。
食事に含まれる栄養素の過不足や脱水
食事で摂取する栄養や水分量によって肌の状態は変化します。ビタミン・ミネラルや栄養が不足すると肌のターンオーバーがうまくいかず肌バリアが崩れてしまいます。
肌バリアが崩れると、水分が逃げやすい乾燥した肌になりフケが多くなります。
水分を多く飲んだからといって肌が潤うことには直結しませんが、体内循環を良くし健康な体を保つために適度な水分補給が必要です。
皮膚の状態を悪化させる病気の発症
✔真菌の感染(マラセチア皮膚炎)
細菌や真菌に感染し、菌を侵入させないように細胞が内側から皮膚を押し出すため、ターンオーバーが早くなりフケ、脱毛が見られるようになります。
マラセチアは健康な皮膚に存在しますが、高温多湿や、他の炎症部位で増殖し皮膚炎を発症します。
✔日布常在菌(細菌)の異常な増殖
犬の皮膚表面には「ブドウ球菌」という常在菌が存在し、ブドウ球菌を菌原とする皮膚の病気に「膿皮症(のうひしょう)」があります。膿が出て、かゆみがあるのが特徴ですが、時間とともに黄色のフケが見られます。
✔寄生虫の感染
寄生虫の感染により、患部が痒く掻きむしることでフケが発生します。毛包中(もうほうちゅう)は毛包の中、疥癬(かいせん)は皮膚の下に寄生するため目視することができません。
ツメダニというダニに感染すると、フケが大量に出ます。特に子犬の感染が多くみられます。
✔アレルギー
アレルギーは、食事やノミなど特定の刺激(アレルゲン)に対して引き起こされます。皮膚の赤みやかゆみが体に広がります。
また、花粉やハウスダストにアレルギーを起こしやすい体質の犬はアトピー性皮膚炎の可能性があります。
アトピーにかかりやすい犬種の例【柴犬、シーズー、フレンチブルドッグ、トイプードル】
✔脂漏症(しろうしょう)
脂漏症とは、皮脂量の調整が正常に機能しない皮膚病です。脂漏症から引き起こされる皮膚炎は「脂漏性皮膚炎」と呼ばれ、体質による先天的なものと、アレルギーなどにより出生後に発症するものがあります。
「油性脂漏症」は、皮脂が過剰に分泌し体がべたつき、体臭が強くなります。
かかりやすい犬種の例【アメリカン・コッカー・スパニエル、ラブラドール・レトリーバー、シーズー】
「乾性脂漏症」は、皮脂の分泌が少なく皮膚が乾燥しフケが大量に出ます。
かかりやすい犬種の例【ジャーマン・シェパード、アイリッシュ・セター、ドーベルマン、ダックスフンド、ミニチュア・シュナウザー、ミニチュア・ピンシャー】
✔内分泌の異常(甲状腺ホルモン低下症)
体内のホルモン分泌は、内分泌機能により制御されています。甲状腺ホルモン低下症は、甲状腺からのホルモンが分泌されなくなる病気です。そうすると脱毛ができ、露出した肌からフケが発生します。
犬にフケが出ている時の受診の目安
健康な状態でもフケは出るため、病院受診のタイミングは多くの人が迷うと思います。急にフケが多くなるのは、何か原因があるはずです。
以下に病院受診の目安を紹介します。もしかしたら、病気が潜んでいるかもしれません。少しでも気になれば、早期に病院を受診することをおススメします。
大量にフケが出て目立つようになった
明らかにフケの量が増えた時は注意が必要です。昨日まで気にならなかったのに、突然フケが多くなるのは何か病気が隠れているサインかもしれません。
一部にフケのかたまりが出ている、いきなり全身にすごく大量のフケが出たといった症状があれば、早急な病院受診をおススメします。
フケ以外の皮膚の症状を併発している
以下の症状がある場合は、皮膚病を発症している可能性があります。
《皮膚病の可能性がある症状》【】
- 皮膚にかさぶた赤みがある
- 体の臭いがきつくなった
- 皮膚がべたついている
- 体の一部や広範囲にかけて毛が抜ける
- 体が痒そうにしている
これらの症状があれば、病気によりフケが発生している可能性が考えられます。体臭がキツイことも病気にかかわっている可能性があります。
日々の観察から違和感を見つけてあげてください。放っておいては悪化してしまうので、原因に合った治療を受けるため病院を受診してください。
犬のフケ予防におすすめの対策・ケア
フケが大量ではない、間違ったスキンケアをしていた。という方は、フケ予防のためにお家でできるケアをしてあげてください。
フケ予防に効果的なのは生活環境の見直し、適切なブラッシング、シャンプーあとの保湿です。どれも簡単にできるので、ぜひ日常に取り入れてみてください。
シャンプーの頻度や種類を見直して適切な洗い方で行う
犬のシャンプー適正頻度は月に1回~2回です。シャンプーの頻度が多いと皮膚の皮脂を洗い流し乾燥肌につながってしまいます。
《シャンプーのポイント》- ぬるま湯で全身を十分に濡らしてから洗う
- シャンプーを泡立ててから洗う
- 爪を立てず、指の腹で優しく洗う
- 犬の体をマッサージするように揉み洗いする
- すすぎ残しの無いようにしっかりすすぐ
- ドライヤーの前にしっかりタオルドライを行う
- ドライヤーは短時間で済ませる
これらのポイントを守ってシャンプーすることで皮膚の乾燥を防ぎ、フケの予防につながります。
《乾燥対策シャンプーの選び方》- 低刺激なリンスインシャンプー
- フケに対応した薬用シャンプー
- 乾燥をケアするシャンプー
- 殺菌を目的に作られたシャンプー
手軽に購入できる犬用シャンプーにも様々な種類があります。皮膚の状態でシャンプーを変えるのも乾燥対策として有効です。
犬の皮膚や室内の保湿を心がける
保湿剤を使用し乾燥から皮膚を守ります。保湿剤はシャンプー後、ドライヤー前に使用するのが効果的です。
ローション、オイル、クリーム、泡、スプレーと質感の異なる保湿剤があるので、乾燥しやすい肉球はクリーム、全身には保湿スプレー、など使い分けてあげるとさらに乾燥を防げます。
犬にとって最適な湿度は40~60度と言われています。エアコンや暖房を使用する際は加湿器や空気清浄機で部屋の湿度を調整してあげると乾燥も防げます。
ブラッシングで抜け毛を除いて皮膚の通気性を上げる
ブラッシングは1日1回の実施が理想的です。くしで毛のほつれをとり、抜け毛を除去することで皮膚の通気性をよくしてあげましょう。
まとめ
健康な犬でも肌のターンオーバーによりフケは出ます。フケが出やすい肌にならないように、毎日のケアが必要ですね。
ブラッシングや保湿剤はすぐに取り入れられます。居住環境の改善には適切な湿度を保ち、空気と肌の感想を防ぐことが大切です。
急にフケが多くなった時は「緊張・興奮」していないか?いつもと違うことはないか?飼い主の毎日の観察が病気の発見に最も役に立ちます。
いつもと違う症状や行動の原因を探し、病気が疑われるときは速やかに病院を受診してください。