【獣医師監修】犬のマーキングとは?原因から効果的な対策、処理方法まで解説

【獣医師監修】犬のマーキングとは?原因から効果的な対策、処理方法まで解説

犬の室内マーキングにお困りですか?この記事では、犬がマーキングをする理由を縄張りやストレスなどの観点から解説。去勢手術や効果的なしつけ、ニオイを消す正しい掃除方法など、今日からできる具体的な対策を分かりやすく紹介します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

犬のマーキングとは?

犬のマーキングとは?

犬のマーキングとは、主に自分の存在や縄張りを他の犬に知らせるために、少量の尿を様々な場所にかける行動のことです。これは犬にとって重要なコミュニケーション手段の一つであり、オスだけでなくメスでも見られる行動で、情報交換としての役割を持っています。

一方で、生理現象として体内の老廃物を排出するための「排尿」とは目的が異なります。一般的な排尿では、膀胱に溜まった尿を一度にすべて出し切ろうとしますが、マーキングの場合は、複数の場所に少しずつ尿をかけるのが特徴です。

例えば、散歩中にトイプードルや柴犬が電柱や壁に何度も足を上げて少量のおしっこをする光景は、典型的なマーキング行動です。室内で家具の脚やカーテンなどに同じ行動が見られる場合も、マーキングの可能性が高いと言えるでしょう。この行動の目的を理解することが、問題解決への第一歩となります。

犬がマーキングする理由

屋外で木に向かってマーキングする犬

犬がマーキングを行う背景には、犬の本能に基づいた様々な理由が存在します。愛犬の行動を理解するために、主な理由を見ていきましょう。

縄張り(テリトリー)の主張

犬がマーキングをする最も一般的な理由が、縄張りの主張です。自分の尿のニオイをつけることで、他の犬に対して「ここは自分の場所だ」「自分がここにいるぞ」というメッセージを残しています。

特に、家の内外の境界線にあたる場所や、新しく置かれた家具など、自分の縄張りだと意識する場所にマーキングをすることが多い傾向にあります。これは、犬が群れで生活していた頃からの習性であり、自分のテリトリーを守るための本能的な行動です。

異性へのアピール

特に去勢手術をしていないオス犬に多く見られるのが、異性へのアピールを目的としたマーキングです。尿には性別、年齢、健康状態、そして発情しているかどうかといった、個体を識別するための多くの情報が含まれています。

オス犬は発情中のメス犬が発するフェロモンを尿から感じ取り、その情報に惹かれてマーキングをすることがあります。逆に、自分の存在をメス犬にアピールするためにマーキングを行うこともあり、繁殖に関連した重要な情報交換の手段となっています。

また、避妊手術をしていないメス犬も、発情期の最中にオス犬へのアピールのため頻繁にマーキングを行うことがあります。これらは、自分の子孫を残そうとする犬としての自然な行動です。

嬉しさや過度な興奮によるマーキング

飼い主の帰宅時や、家に遊びに来たお客さんに対して過度に興奮してしまい、その結果としてマーキングをしてしまうことがあります。これは「嬉ション」と呼ばれる尿漏れとは少し異なり、強い興奮が引き金となってマーキングという本能的な行動に繋がるケースです。

特にチワワのような感受性の高い小型犬に見られることがあります。この場合、犬自身も意図せずに行っていることが多く、叱ることで状況が悪化する可能性もあるため注意が必要です。

不安やストレスからマーキングすることも

マーキングは、犬が感じている不安やストレスの表れである場合もあります。例えば、引っ越しや模様替えといった環境の変化、新しいペットや家族が増えたこと、留守番の時間が長くなったことなどが、犬にとって大きなストレスとなることがあります。

このような状況下で、犬は自分のニオイをつけることで安心感を得ようとします。これは、自分自身を落ち着かせるための行動、いわゆる「カーミングシグナル」の一種と捉えることもできます。

もし急にマーキングが始まった場合は、愛犬の生活環境に何か変化がなかったか振り返ってみましょう。

犬のマーキングを防ぐ対策方法

ペットシーツに排泄して褒められている犬

犬のマーキング行動は、その原因に合わせた適切な対策を根気強く行うことで改善が期待できます。ここでは、有効とされるいくつかの対策方法をご紹介します。

去勢・避妊手術を検討する

性的なアピールや縄張り意識が主な原因である場合、去勢・避妊手術は非常に効果的な対策の一つです。

手術によって性ホルモンの分泌が抑えられることで、マーキングの衝動そのものが減少する可能性があります。特に、行動が習慣化する前の若い年齢で手術を行うほど、改善が見られやすいと言われています。

ただし、マーキングの原因がストレスであったり、すでに行動が癖になっていたりする場合は、手術だけでは完全になくならないことも理解しておく必要があります。

トイレトレーニングを再徹底する

室内でのマーキングに悩んでいる場合、トイレのしつけをもう一度丁寧に行うことが重要です。

マーキングをしてしまう場所は、ニオイが残らないように徹底的に掃除し、愛犬を近づけないようにしましょう。そして、トイレシーツなど正しい場所で排泄ができた際には、すぐにご褒美を与えてたくさん褒めてあげてください。

この「ポジティブリンフォースメント(正の強化)」と呼ばれる方法を繰り返すことで、犬は「ここで排泄すると良いことがある」と学習し、正しい場所での排泄が促されます。叱るのではなく、成功体験を積ませることが大切です。

ストレスや不安の原因を取り除く

愛犬が不安やストレスからマーキングを行っていると考えられる場合は、その原因を特定し、取り除く努力が必要です。

例えば、運動不足が考えられるなら、散歩の時間を長くしたり、ドッグランで思い切り走らせたりしてエネルギーを発散させてあげましょう。飼い主とのコミュニケーション不足が原因なら、一緒に遊ぶ時間を意識的に増やすことが効果的です。

また、犬が安心して休める自分だけの場所として、クレートやハウスを用意してあげることも、安心感に繋がります。

マーキングする場所への移動を制限する

物理的にマーキングができない環境を作ることも、有効な対策です。特定の家具や壁にマーキングを繰り返す場合は、その場所にペットゲートを設置したり、家具の配置を変えたりして、愛犬が近づけないように工夫しましょう。

マーキングの対象となるものを置かないように、部屋をシンプルに保つことも予防に繋がります。行動を繰り返させないことで、徐々にその習慣を忘れさせていくことを目指します。

マナーウェアを着させる

外出先や来客時など、どうしてもマーキングをさせたくない場面では、犬用のマナーウェア(おむつやマナーバンド)を一時的に使用するのも一つの方法です。これにより、物理的にマーキングを防ぎ、粗相によるトラブルを避けることができます。

ただし、これはあくまでも一時的な対処法であり、根本的な解決策ではありません。マナーウェアに頼りすぎず、前述したようなトレーニングや環境改善と並行して進めることが重要です。

犬にマーキングされた場合の対処・処理方法

床を掃除する飼い主とそばで見守る子犬

犬にマーキングをされてしまった場合、最も重要なのは「ニオイを完全に消し去ること」です。犬は自分の尿のニオイが残っている場所をトイレだと認識し、同じ場所に繰り返しマーキングをする習性があります。そのため、中途半端な掃除では問題の再発を防ぐことができません。

まずは、乾いた布やペットシーツで尿をできるだけ吸い取ります。その後、ペット用に市販されている酵素系の消臭・除菌スプレーを使い、ニオイの元となるアンモニアを分解・消臭しましょう。

掃除の際に注意したいのが、アンモニア臭を含む塩素系の洗剤や漂白剤の使用です。これらは犬にとって尿のニオイと似ているため、逆効果となり、マーキングを誘発してしまう可能性があります。必ずペット専用か、成分をよく確認した上で使用してください。

カーペットやソファなど、洗いにくい場所は、数回に分けてスプレーと拭き取りを繰り返し、ニオイが完全に消えるまで徹底的に対処することが大切です。

まとめ

ペットシーツの上に座って上を見上げる犬

犬のマーキングは、単なるトイレの失敗ではなく、彼らにとっての重要なコミュニケーション行動です。その背景には、縄張り意識、性的アピール、不安やストレスなど、様々な理由が隠されています。愛犬がなぜマーキングをするのか、その根本原因を理解しようとすることが、問題解決への第一歩となります。

感情的に叱ることは、犬との信頼関係を損ない、問題を悪化させることにもなりかねません。去勢手術の検討、トイレトレーニングの再徹底、ストレス要因の除去、そして適切な清掃といった対策を、愛犬の状況に合わせて根気強く試していくことが大切です。

愛犬からのサインを正しく受け止め、適切な対応をすることで、より良い関係を築きながら問題を解決していきましょう。

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