犬の問題行動って
犬の問題行動と言っても、どの段階からそう判断するのがいいのでしょう。
僕は犬の問題行動というのはあくまで人間目線の判断で、犬にとっては当たり前の行動だと思っています。
確かにお行儀が悪い行動として、人社会には受け入れ難いこともありますが、それを「ダメだよ!良くないことだよ。こうしなさい!」と穏やかに教えて導いてあげるのが、いわゆる「しつけ」であり飼い主さんの役割だと思うわけです。
問題行動とは大きく分けて5つ
1、分離不安
不安レベルが上がり、吠えたり破壊行動や排泄、飼い主につきまとう等、依存性が高くなる。
2、攻撃行動
触ろうとしたり抱こうとしたときやおもちゃを取り上げようとしたときたなどに噛み付く。
3、恐怖症
雷や電車、花火の音等でパニックを起こしてしまう。
4、常同障害(じょうどうしょうがい)
尾追い、尾かじり、影追い、光追い等頻繁に行う。
5、咆哮行動
無駄吠え、要求吠え、警戒吠え等。
ドッグトレーナーという仕事柄、僕の所にはいつも飼い主さんから何らかのSOSが入る訳ですが、それは、
「トイレがうまく行きません。どうしたらいいですか?」といったライトなご相談から、「今すぐ助けて下さい!」と、泣きながら電話がかかってくるヘビーなご相談まで様々です。
ヘビーな内容はもちろん飼い主さんが手に負えなくなった「レッドゾーン」な犬たちの事です。
そういう場合出来るだけ早く駆け付けて対処するのですが、ぶっちゃけ犬より先に飼い主さんの方をケアする必要があります。
何故なら、僕が来るまでに様々な方法を試したが上手くいかず、また違う方法へと必死に自分で何とかしようと本を読んだりネットで調べたり、DVDを買ってみたりと悪戦苦闘されています。心底悩んでおられます。
かなりのストレスを溜め込んでおられわけですが、まずそんな精神状態で犬と向き合っても上手くいくはずがないんですね。
そんな飼い主さんをたくさん観て来た中で、そういった飼い主の方には、ある共通点があることに気付きました。
まずチェックしてみましょう!
その共通点についてご説明する前に、まずあなたをチェックしてみましょう。
あなたは何個丸が付きますか?
- ①愛犬が可愛くて可愛くてついつい溺愛してしまう。愛犬の行動に一喜一憂してしまう。
- ②私は神経質な所があり、心配性で不安や心配が拭えない性格だ。
- ③愛犬に対し感情的に喜怒哀楽を露わにしてしまう。
- ④犬は自由奔放にさせるべきだと思う。
- ⑤愛犬は小型犬なので散歩はあまり必要ない。
- ⑥自分の愛犬は大丈夫だが他の犬は苦手だ。
- ⑦私の愛犬は自分の事を人間だと思っている。
- ⑧私の愛犬は犬や人が苦手でおまけに抱かれたり散歩を嫌がる。
- ⑨私は奇麗好きでどちらかというと潔癖な性格だ。
- ⑩私はいつも愛犬に話し掛けて聞いてもらってる。
- ⑪愛犬を人間の様に、我が子のように思う。人間と愛犬の心理は変わらないと思う。
- ⑫いつも留守番をさせて可哀想で申し訳ないので、帰ったら思いっきり抱きしめて可愛がってあげている。
- ⑬我が家は犬を飼っているが子供が飼うと言ったので私の愛犬ではない。
以上です!
さぁ!あなたは何個当てはまりましたか?
さて解説しましょう!
実は上のチェック項目13個は僕が今まで携わったレッドゾーン犬の飼い主さんの共通する特徴なんです!項目のうち一つでも当てはまるのなら注意が必要かも。5つ以上あった方!かなりお悩みじゃないでしょうか。あなたは何番をチェックしましたか?
各項の解説
①愛犬が可愛くて可愛くてついつい溺愛してしまう。愛犬の行動に一喜一憂してしまう。
犬に愛情を持つことは当然であり必然です。しかし人間的愛情表現は時として仇になってしまいます。犬的愛情表現(注1)を理解しないと犬はあなたをご機嫌を取る下位者と認識してしまうかもしれません。
②私は神経質な所があり、心配性で不安や心配が拭えない性格だ。
犬は飼い主の負のエネルギーを浴び続けると、精神的に不安定になります。細かい事は気にしない穏やかさと毅然とした態度が犬に安心感や信頼感を与えますよ。
③愛犬に対し感情的に喜怒哀楽を露わにしてしまう。
②と付随して飼い主さんは犬と接する時は穏やかに毅然とした態度が望まれます。あまり感情的になると「危険」と認識され縄張り内でも警戒されたりします。犬との信頼関係が築き難い傾向があります。
④犬は自由奔放にさせるべきだと思う。
犬は自由奔放にすると「私がリーダーだ」と認識してしまいます。あなたがリーダーであるべきで縄張り内でのルールはとても重要な意味があるんです。
⑤愛犬は小型犬なので散歩はあまり必要ない。
犬にとって散歩は活動欲求を満たす体力の発散を意味し、狩猟本能を刺激する上でもとても重要です。小型犬であろうが絶対に必要です。何より犬との信頼関係を築く上で散歩は有益な手段です。
⑥自分の愛犬は大丈夫だが他の犬は苦手だ。
これは深刻な部分です。基本的に動物が苦手で矛盾がある為しつけが苦手な方が多く、なかなかリーダーになれない方ですね。
⑦私の愛犬は自分の事を人間だと思っている。
犬は「人間だ!」「猫だ!」という判別能力はありません。むしろ我々人間は犬からすると「二本足の変な姿の犬」なんです。だから人間扱いしてはいけません。
⑧私の愛犬は犬や人が苦手でおまけに抱かれたり散歩を嫌がる。
典型的な社会化不足です。しつけが出来ていない犬にこのタイプが多いですね。明らかに飼い主さんを下位者と認識しています。
⑨私は奇麗好きでどちらかというと潔癖な性格だ。
犬の体臭や排泄臭に過敏に反応してしまう方。犬は綺麗好きです。その神経質な負のエネルギーが犬に悪影響を与えてしまいます。お気持ちは解りますが小さな事は気にしない努力をしましょうね。
⑩私はいつも愛犬に話し掛けて愚痴やいろんなことを聞いてもらってる。
あなたは独り言を言っていますね。犬はなんのことやらさっぱり判らず聞いているフリをしていますが、実は苦痛なんですねぇ。言葉じゃなく穏やかで温かいエネルギーシャワーを注いであげてください。それは犬にとって安らげる時なんです。
⑪愛犬を人間の様に、我が子のように思う。人間と愛犬の心理は変わらないと思う。
これも深刻な部分です。人間と犬は感情が似ている部分も多いですが、思考回路が全く違う部分があるのです。ここは最もあなたに理解して頂きたいポイントです。あなたがリーダーでありたいなら犬は犬として扱い、決して人間の感覚で扱ってはいけません。
⑫いつも留守番をさせて可哀想で申し訳ないので、帰ったら思いっきり抱きしめて可愛がってあげている。
これは人間的愛情表現の一種ですが、犬には必要ありません。なぜならリーダーは縄張りに帰り着き部下に「ごめんね遅くなって」と挨拶はしません。そんなことをしたら逆にリーダーにご機嫌を取っているみたいになってしまいます。お気持ちは解りますがそこは凛とし毅然とした態度で「ご苦労」ぐらいで充分です。
⑬我が家は犬を飼っているが私の愛犬ではない。
犬にとってはそのご家庭は一つの「群れ」です。にも関わらず非協力的な人がいれば犬は不信感を持ちます。犬と暮らす上で家族一丸となって協力することは群れとしてとても大切ですね。
(注1:犬的愛情表現とは犬が感じる愛情のことで人間的愛情とは全く違います。人間的愛情表現は犬にとって「弱者」と認識されてしまう事が多く主従関係に深く関係します)
犬は飼い主を写す鏡
犬は100%飼い主さんの影響を受ける動物です。人間も親の影響を受ける部分は同じです。僕の持論は「問題のある犬は存在しない。問題のある飼い主さんはたくさんいる」です。
我々人間は子供の頃から成長過程で友人知人ができ、やがて自分でどこに行くとか何をするとかどんな遊びをするかなどを選択し、大人になっても、誰とご飯に行こうとか、淋しければ友人に電話したり、一杯呑みに行ったりと自主的選択の余地が常にあります。
犬が我々と決定的に違うところは、犬はあなたのご家庭に迎え入れられたその日から生涯、飼い主さんだけしか頼れる相手が居ないのです。
だから飼い主さんの影響が全てなんです。この部分をしっかりご理解いただき最後に読み進めてください。
最後に
僕は決して飼い主さん達をやり込めるつもりも批判するつもりもさらさらありません。
それは今も日本中にはびこる「間違った犬の常識」を信じ、犬の本質を知らなかっただけのことだと思うからです。
別に恥じることなく、今からでも犬への考え方や心構えを改れば良いんです。
飼い主さんが犬のことを知ることは、犬が幸せになれるということ、コミュニケーションが取れるようになるということ、何よりあなたが幸せになれるということです。
知っていると、
「おっと!そう来たかコノヤロー!よし!じゃあこれでどうよ!」と次の手を打てる訳で、知らなかったら、「なんでなの?」と悩むしかありません。
僕はこの「悩む」ということを飼い主さんにして欲しくないのです。犬と楽しんで頂きたいんです。
そのためにこの記事を書きました。飼い主さんが悩むとそれ以上に犬が困惑するのです。
そしてそこから負のスパイラルが始まってしまいます。飼い主さんはあれやこれやと様々な方法を模索します。すると犬は余計に訳が分からなくなっていくのです。
「どうすればいいの?」とお互いが思っているので収集がつかなくなります。だから飼い主さんから先に変わってあげるのです。
飼い主さんが変われば犬は必ず変わります!揺るぎない自信と揺るぎない愛情を備えれば必ずあなたのドッグライフはキラキラときらびやかで幸せに満ち溢れることでしょう。どうか犬と幸せな日々を♪
ユーザーのコメント
20代 女性 まかろにぐらたん
そうですね、犬の問題行動とは、飼い主にとってそして人と関わる社会生活において困ったり治したい部分なわけで、人間の基準で問題と捉えているんですよね〜
ドッグトレーナーをされているなら、SOSは多いんじゃないかな〜と思います。
特に困ったことがなければ、わざわざ安くはないお金を払って頼もうとはあまり思わないですからね。
子犬のうちからレッスンを兼ねてトレーナーさんやしつけ教室にお願いすることもありますが、成犬になってからの場合は、今すぐどうにかして〜という場合多い気がします。
中にはノイローゼ?になるくらい追い詰められている方も多いんですよね。自分じゃどうにもならない!お願い!と縋り付く気持ち、分からなくもないです。
チェックリストですが私は6つ当てはまりました〜!!!
我が家の愛犬の問題行動は、出かける際に吠える、ピンポンに吠える、食い意地が張っていて気をつけないと誤飲をしてしまう可能性がある。でしょうか。
特に噛んでしまうとかトイレができないとかその辺りは大丈夫なんですが・・・留守番が苦手なのは分離不安までは行かないですが、治せるなら治してあげたい点ではありますね。
人が不在になるお留守どきの吠えを治すのは難しいそうですが。
元々の性格や気質にも左右されるので何もしなくても問題行動がない子や、レッスンに通っても通ってもなかなか治らないなどわんちゃんによりその辺は差はあります。
猟犬として産まれ吠えやすいとされるダックスと、ほぼ吠えないとされるパグやブルドッグでは、吠えに関するしつけの大変さは違うと思っています。
飼うまえにその犬種の本能やわんちゃんの気質なども含めて迎えるのも大事かなぁと思います。
あと問題行動がなくても、力で支配した躾をする方法はあまり好きではありません。
もちろん犬種にもよるのでなんとも言えない部分もありますが、、(闘犬や危険犬種は未知なので分かりませんが)
飼い主さんも愛犬ちゃんも楽しく幸せになれるような方法で躾やトレーニングをしてくれるようなトレーナーさんもいますので、そういった方を探してみるのも良いと思います。
せっかくわんちゃんを迎えたなら悩んで辛いより、愛犬と楽しく過ごしたいですもんね。
女性 タンママ
私が個人的に始めに気づいた事は、生活環境に対する不快感。寝床やトイレ、サークルなどの個室に対する好き嫌い等…。
犬もみんなが同じ性格ではないのですね。
個室が欲しい子もいれば、室内フリーが安心する子もいるんですね。
それもおそらく、私達飼い主の影響を受けての事ですよね。
ずっと家に誰かが側にいる家庭なら、やはり1人になれる個室は必要なのではないでしょうか?
逆に、お留守番の多目なワンちゃんなら、1人でも自由に過ごせるフリーな空間はストレスを減らす為に必要かもしれません。
とはいえ、お留守番多目のワンちゃんでもサークルがある方が落ち着いていると言う話も聞きますし…。
その子の個性を見極めてあげれるように愛を持って見守っていく、できる範囲でワンコの個性にあった生活環境を整えてあげる事がとても効果的なのではないでしょうか。