ダニから犬や人に病原菌やウィルスが感染するにはどのくらいの時間がかかるか?
愛犬に付く害虫、嫌ですね。中でもダニは様々な恐ろしい病気を媒介することもあり、細心の注意を払っている方も多いことと思います。
この記事では、アメリカのイースト・カロライナ大学とノースカロライナ州立大学の研究チームがまとめたダニと感染症のレポートを紹介します。ダニが動物の皮膚に噛み付いてから、病原菌やウィルスが実際に感染するまでの時間についての感染症別の研究文献を精査してまとめた内容です。
ダニに噛まれてから感染するまでの時間は病気によって異なる
ダニという害虫はノミや蚊と違って血を吸うために宿主に噛み付いた後、かなりの長時間そこにとどまっているという性質があります。
そのため、噛まれた場合も発見しやすく、早めに取り除けば感染を回避することができます。「早め」というのは、たいていの場合は24〜36時間以内と言われているのですが、中にはもっと早急に噛み付いたダニを取り除かなくてはいけない場合もあります。
ダニが媒介する代表的な病気別に、感染にかかる目安となる時間をリストアップしていきます。
バベシア症
ダニが媒介する病気と言えばバベシアが一番に頭に浮かぶ人も多いでしょう。マダニに噛まれた時に唾液からバベシア原虫が血液中に入り込むことで感染します。実験では噛まれた後36時間経つと、被検体の動物の9%が感染、48時間で17%、54時間で50%が感染を示しました。バベシア症の場合は噛まれた後24時間以内にダニを取り除けば感染をほぼ防げるというのが当てはまるようです。
ライム病
マダニが媒介するボレリアというスピロヘータの一種によって引き起こされます。噛まれた後24時間で7%の被検体が感染、48時間で36%、72時間で93%が感染を示しました。ライム病を防ぐには噛まれた後24時間以内にダニを取り除くことが必要です。
日本では感染例は少ないのですが、それだけに診断が難しいため、可能性を頭に置いておくに越したことはありません。
アナプラズマ症
マダニが媒介する細菌によって引き起こされます。噛まれた後24時間で9%の被検体が感染、36時間で66%、48時間経つと100%の被検体が感染していました。アナプラズマ症も感染を防ぐためには24時間以内の除去が有効です。日本での感染報告は極めて稀ですが、犬も人も外国との行き来が多くなっている現代では知識として頭に置いておきたいものです。
上記のように、マダニに噛まれてから24時間以内に取り除くことができれば感染症の多くは防ぐことができます。しかしリケッチア症の一種であるロッキー山紅斑熱は噛まれた後10時間を超えた段階で感染が始まる場合もあります。
またマダニではなくヒメダニが媒介する回帰熱の中には、噛まれて30秒で感染が確認されたものもあるので、ダニに噛まれた後すぐに取り除いたから絶対大丈夫と思わず、しばらくは注意深く観察することが大切です。
ダニに噛まれたらどうすればいい?
脅かすようなことばかり書いてきて恐縮ですが、実験においては研究用に作られた100%病原体を持っているダニが使われていますが、自然界のダニが全部なにかの病原体を持っているわけではありませんので、ダニ駆除薬を使うなど細心の注意を払いつつ無闇に怖がりすぎないことも大切です。
山や草の多い所を歩いた後は犬の体を入念にチェックしてダニが付いていないかを調べます。もしもダニが食いついているのを発見したら、可能であればすぐに病院に行って獣医さんに除去してもらうのが一番です。
休日など、病院が開いていない場合は先の平たい毛抜きやピンセットでなるべく皮膚に近い所のダニの口を掴んでまっすぐ上に引き抜きます。この時に絶対にダニの体を掴まないこと。掴んだ力で体液が押し出され患部に大量に入り込みます。素手で触るのも厳禁です。無理に引っ張ると口の部分だけが皮膚に残ってしまう場合もあります。たいていは自然に取れますが炎症を起こす場合もありますので、念のため病院で診てもらうと安心です。
ダニが媒介する病気の多くは発熱、倦怠感、関節痛(犬の場合は足を引きずったりする)発疹など、インフルエンザなどの病気と混同しやすい症状なので、犬の具合が悪くなった時、ダニに噛まれたかもしれない心当たりがあれば必ず獣医さんに伝えましょう。噛まれてからの時間の経過は病気の判定にとても重要なので、ダニを除去した場合は日時などを記録しておくと更に良いでしょう。除去したダニは透明テープなどで挟み込んで瓶に入れて獣医さんに見せる、写真を撮っておくなどするのも良い方法です。
まとめ
アメリカの大学の研究チームがまとめた、ダニに噛まれた場合感染するまでにどのくらいの時間がかかるかというレポートによると、多くの感染症は感染までに24時間という時間の壁が確認されました。噛まれてから24時間以内にダニを取り除けば病気への感染が防げる可能性がとても高いということです。
ごく稀にですが、中には24時間よりもずっと短い時間で感染する病気もあるので、噛んでいたダニを除去した後も、犬の体調に変化がないかよく観察しておきましょう。
山や野原で遊ぶ愛犬の姿を見るのは幸せなものですが、ダニ対策を万全にして人も犬も心置きなく楽しみたいですね。
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40代 女性 ポンタ
50代以上 女性 みゆっち