広い牧場で華麗に羊たちを操る牧羊犬
「牧羊犬」や「羊飼い犬」と呼ばれる犬たちについて、羊を飼うという習慣がない私達日本人にとっては馴染みが薄い使役犬です。
この牧羊犬のお仕事は「牧場内を歩き回る羊や牛の行動を誘導・監視する」ことです。機敏な動きと素早い判断力等で羊や牛を誘導したり、家畜たちを天敵や盗難から守り、牧場主の仕事の手助けをしています。
訓練された優秀な牧羊犬だと、3~4頭の少数の犬たちで800~1000頭もの羊の大群をまとめる事が出来るそうです。飼い主が犬笛や口笛などで指示をし、それに従って羊や牛を誘導していきます。牧羊犬はとても賢く、運動能力に優れた犬なのです。
そんな優秀な牧羊犬がどのようにして羊や牛を誘導しているのかを研究した研究者がいます。
今回は牧羊犬の驚きの知能を紹介していきます。
牧羊犬は2つのアルゴリズムを使って家畜をまとめていた!
牧羊犬は人間が羊たちをコントロールするよりも効率よく操る事ができます。
今回イギリスの大学が行った研究で、牧羊犬がどのようにして家畜をまとめているかが明らかになったのです。研究を行ったのはイギリス・スウォンジー大学の生物学者アンドリュー・キング博士率いる国際研究チームです。この研究チームが発表した論文では牧羊犬が家畜をまとめる手法が解き明かされています。
羊は狼などの天敵に襲われた際「自分の命を守る為、群れの中心へ紛れ込もう」という心理が起こり、群れの中心に向かいます。全ての羊が我先にと群れの中心を目掛けて走り出すため、羊の群れは集団の中心に向かおうとする強い向心力が発生します。それによって羊の群れは密度を高くし、1つの大きな塊のような動きを見せます。
牧羊犬はこの羊たちの心理と行動を本能的に理解して家畜をコントロールしていると見られ、実際に牧羊犬は2つの行動を巧みに使い分けている事が調査の結果明らかになったのです。
研究対象となる牧羊犬と羊にGPSセンサーを取り付け、牧羊犬と全ての羊の行動を詳細に記録していきました。赤い点が羊、青い点が牧羊犬です。
羊たちは赤い枠の中を見ても分かるようにバラバラな状態になっています。青い枠で囲まれている牧羊犬は羊たちに向かって走り、全ての羊を1か所にまとめていきます。
この行動が1つ目のアルゴリズム「集合化」の動きになります。
出典:https://motherboard.vice.com
羊たちは牧羊犬の動きによってまとめられていきます。
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群れが形成されると牧羊犬は左下にある目的地から離れた群れの後ろに回り、群れを刺激し動かし始めます。羊の群れは牧羊犬から逃げようと、青い矢印の様に左下に動いていきます。
この動きが2つ目のアルゴリズム「駆動」です。
出典:https://motherboard.vice.com
進んでいくうちに群れから外れてしまう羊もいます。
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すると牧羊犬は羊たちの中心となる群れを追うのを中断し、群れから外れてしまった羊たちを戻すように働きます。この行動は「集合化」のアルゴリズムの動きです。
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はぐれた群れがまた中心の群れに集まったところで、再び目的地を目指して羊の群れを進めて行きます。この行動は「駆動」のアルゴリズムの動きです。
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牧羊犬の行動をモデル化してコンピューター上でシミュレーションを実施し、シミュレーションの動きをまとめました。右上から左下へ向かう「駆動」とコースから外れてしまった群れを集め直す「集合化」という2つのアルゴリズムが青い線で再現されています。「driving」が駆動、「collecting」が集合化です。
出典:https://motherboard.vice.com
研究チームはこの研究の結果をもとにして家畜管理ロボットを制作して家畜の管理を自動化すれば、原油の流出などによる環境汚染の除去や人間の混雑した集団をコントロールする技術にも役立てる事が出来ると言います。
まとめ
この研究で牧羊犬の素晴らしい能力が判明しました。犬達にはまだまだ秘められた能力が存在しているのかもしれません。
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40代 女性 くっきー