ドッグレスキュー「レッドゾーン! トイプーのレオンを救え!」

ドッグレスキュー「レッドゾーン! トイプーのレオンを救え!」

ドッグレスキューと言っても獣医さんの様に、犬の病気や怪我を救いに行くんじゃありません。僕の仕事はワンコや飼い主さんの「心のお悩み」を救いに行くことなんです。さて今回ご紹介するのは…。

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はじめに

わんぱぱの手と白トイプー

僕は訪問型ドッグトレーナー兼ドッグリハビリスト。犬のしつけはもちろん、犬自身のサイコロジーリハビリテーション(※1)や、飼い主さんに犬の本質や知識と関わり方をレクチャーするお仕事をしています。

愛犬家のお悩みにも様々なパターンがあり、緊急を要するものからそうでないものまで、様々なご依頼を賜ります。

その中から、特に印象に残ったエピソードをご紹介します。
あなたの、幸せなドッグライフのヒントになりますように。

(※1サイコロジーリハビリテーションとは、犬が本来持つ、穏やかで安定した精神状態を取り戻す為のリハビリテーションのこと)

トイプーアプリパピー

分離不安症?トイプーのレオン

このエピソードを書くべきか書かざるべきか迷いました。
悩んだ結果、愛犬家の方々に現実を知って頂いた方が良いのではと思い、書くことを決意しました。レオンの様な子を増やさないためにも…。

「もしもし~」
「わんぱぱさんですか?」
「はい♪そうです」
「うちのトイプーが娘や息子を血が出るほど噛んで困ってます。威嚇したりもします。子犬の時は抱けたのに今は無理です。」
「それはお困りですねぇ。何歳ですか?」
「1歳半です。娘がどうしても欲しいって言うもので買い与えたんです。小さい時は大丈夫だったのに。1歳ぐらいから噛むようになって…」(そりゃそうです)
「しつけはされてますか?」
「いえ私はしていません。私の犬じゃないので」
「はぁ?」
「娘にはちゃんとしなさいと言ってますが、全く言う事を聞きませんし。」
「お母さんは何も協力しないんですか?」
「娘の犬なのでたまに餌を上げるぐらいです。」

この時点で僕はフツフツと怒りが込み上げて来ていました。

「他にワンちゃんの気になる所はありますか?」
「先日獣医さんに連れて行ったら分離不安症かもと言われました。」
「え?そんなに酷いんですか?」
「興奮もするので薬物療法で抑えようかと言われました。」
「ちょっと待ってください!まだ分離不安症と決まった訳じゃあないんですよね?」
「でも薬でおとなしくなると言われました。でもなんか可哀想な気がして…。トレーニングでなんとかなりますか?」
「トレーニングというよりリハビリテーションで改善させる事は出来ます!もちろん飼い主さんご家族のご協力は必要ですが。是非ワンちゃんの様子を見させて下さい。」
「そうですか。分かりました。ではお待ちしています」

電話を切った後、何か釈然としない気持ちになりました。よくある事とはいえ、犬を軽視した愛犬家には闘志を燃やしてしまう僕がいます。

白トイプーパピー

そして数日後、訪問させて頂きレオンと対面した時、愕然としたのを今でも覚えています。

一見ごくありふれたご家庭で、サークルの中に入れられたレオンを見ると身体中毛玉だらけで目が血走り、異様な甲高い声で吠えていたのです。

「これは…。」今まで保護犬を救助して来た中で見てきた劣悪な環境なら解るのですが、普通の一般家庭でのこれは凄い違和感を感じます。カウンセリングを始めるも、レオンの吠えで飼い主さんの声が聞き取れない程です。

「来客時はいつもこの状態ですか?」
「はい。日常の殆どがこの状態です。噛むようになってからは殆ど出してません。」
「お散歩は…?」
「今は行ってません。子犬の時は週に1回ぐらいです。基本この子は散歩が嫌いみたいで歩かない んです。」
「……。」
一瞬、僕は声が出ませんでした。

そして、そのあと思わず出た言葉が、
「じゃあなぜこの子を飼ったのですか?」
「娘が欲しがったので。子供の遊び相手になると思っていたのに、こんな風になるなんて。騙された気分ですよ」
(プチッ!)もう限界でした。

「じゃあなんですか?ぬいぐるみを買い与えた様なものですか?お母さんはなんとかしようと思わなかったんですか?レオンが可愛くないんですか?」
「まぁ可愛いですよ。でもペットショップでも散歩は室内で運動させる程度で大丈夫だと聞きました。トイプーは頭が良いのでしつけも簡単だと…」
「それで娘さんや子供さんたちに任せっきりで今日まで…」

1時間程のカウンセリング中レオンは吠え続けていました。悲痛な悲鳴に聞こえ、切なさが込み上げて来ます。

「判りました。レオンを助けたいですか?僕としては今日からでもリハビリテーションを始めたいです。よろしいですか?それと並行してご家族には全員で犬の本質を勉強して頂きます。よろしいですね!」
「はい。よろしくお願いします…。」

何か気乗りのしない返事が返って来ました。
(大丈夫かなぁ。しかし何とかしないとレオンが…)
レオンにとってこの1年余り、この8畳程のダイニングだけが世界の全てだったのです。
しかもそこは安住の場所ではありませんでした。

白トイプー成犬

   カウンセリングサマリー
症状 犬が噛む、吠える。興奮する。人や犬に慣れていない。音にも過剰反応する。依存や執着が強い。(全て犬の本質)
原因
  • 間違った飼い主さんの接し方。(家族がバラバラでまとまりが無い)
  • 子供が犬をおもちゃ扱いする。
  • 犬の活動欲求不足によるストレス。
  • ベーシックトラストが皆無。
対策
  • 飼い主さんの意識改革。
  • 正しい犬の知識、接し方をレクチャー。
  • サイコロジーリハビリテーションを施す。活動欲求を満たし犬の精神安定をはかる

さぁレスキューです!

トイプーアプリ成犬

「最初に言っておきます。今のレオンの行動は全て犬として正常なんです。只、正に野生の”犬”なんです。疑問に思われるかも知れませんが1年以上何のしつけもせず、ストレスだけを与え続けた結果、レオンは忠実に自分を主張しているだけです。群れとの調和が無く、社会化教育もせず、ただ子供さんたちの気まぐれでいじられ続ければ、やがて成犬になった時、切れて攻撃するのは当然です。仲間と思っていても信頼関係が無いので、蓄積していた我慢がある日突然爆発したんですよ!」

ついつい熱くなってしまいました。

黒トイプー

「レオンと2人きりにしてもらえますか?」

そう告げてダイニングに向かうと、僕はレオンの2人だけで向かい合いました。
小さい野獣は威嚇しながら牙を向けてきます。凄い形相です!
そして、「ガルルル」と怯えています。
少しずつ間合いを詰め、捕まえました。
少々手荒いかもしれませんが、噛まれるのも困るのでチョークリードで確保します。なぜこんなことをするかというと、一刻も早くレオンを外に連れ出したかったのです。

そ~と引きながらダイニングのドアを出た瞬間ピタッと抵抗と吠えが止みました

「ビンゴ♪」

ここからリハビリテーションに取り掛かります。数分間落ち着かせてからそっと抱っこして外に出ました。こういう犬はある条件下の元、縄張りから出す事で嘘の様に変わるのです。

まさに「借りてきた犬」状態になるんですね。

何故か?先ず飼い主さん達の意思エネルギーをシャットアウトし、穏やかなエネルギーを注ぐ。そしてロケーションを変える。そうする事によって犬のエネルギー自体が変わっていきます。後は穏やかな状態のまま持続させ、それを脳に刷り込んでいくのです。

30分程抱っこしたまま歩いて、ベンチに座ってボーッと穏やかな時間を過ごす。この間レオンは超おとなしい全く違う犬に変わっていました。でもここからが問題なんですね。

家に帰ったら必ず元に戻ります。しかし家に帰らない訳にもいきません。家に入りダイニングに入るとご家族お揃いでいつもの雰囲気です。僕が抱っこしたまま入るとママさんが「えー!嘘!さっきと全然違うじゃないですか!何かしました?」

「はい。本来のレオンの精神状態を皆さんに見て頂きたくてリハビリテーションしました。しかし今レオンを降ろしたら元に戻ります。これがレオンの素の姿です。今後このリラックス状態をレオンの脳に覚えさせる必要があります。」

「は、はい…」と自身なさげな返事が返ってきました。

ふー。大丈夫かいな?

トイプーミスカラーパピー

僕が飼い主さんにお願いしたこと

「とにかくレオンは常に脳が緊張しています。子供さん達が学校に行っている時、親御さんがお仕事に出ている時、つまりお留守番している時が一番リラックスしていると思います。ご家族が皆さんお揃いの時に穏やかな雰囲気を感じさせてあげて下さい。それプラス散歩。歩かなくても良いので抱っこしてあげて色々な匂いや音を体験させて下さい。何よりレオンにとってご家族は群れの仲間です。誰の犬とか関係なく、皆さんで家族の一員としてレオンを信頼し認めてあげましょうね。焦らずゆっくり、レオンのペースに合わせてあげて下さい。」

それから数ヶ月間お伺いさせて頂き、リハビリテーションをし、レオンはやっと家族の一員として穏やかに暮らせるようになりました。レオンより飼い主さん達の意識を変えるのに手間取りましたがねぇ。

トイプー3匹

最後に

犬は100%飼い主の影響を受ける動物です。
我々人間も親の影響を受けますが、成長過程で様々な事を自己学習する事が出来ます。でも、犬はそれが出来ないのです。だから何から何まで教えてあげないとけないのです。

犬と楽しく暮らす事は決して簡単な事ではありません。しかし犬を育てるのは簡単です。水と餌を与えていれば成長します。でも果たしてそれで良いのでしょうか?

あなたは何の為に犬を飼いたいと思ったのか?
今一度考えてみて下さい♪
そしてどうか楽しくて幸せなドッグライフをお過ごし下さい。

黒トイプーバンダナ巻

(各写真と本文は関係ありません)

わんぱぱ 《今日の格言》

人には人格があり、犬には犬格がある。

犬を人扱いするのは逆に犬に失礼ですよ~。犬は決して自分を人間とは思ってませんから。

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