スポーツ競技場の騒音と犬
雷や花火など、突然の大きな音に恐怖やストレスを感じる犬は多いものです。しかし、雷のような突発的な騒音ではなく、継続して大きな音が聞こえるスポーツ競技場の騒音は犬にとってどのような影響を及ぼすでしょうか?
サッカースタジアムなど、スポーツ競技場からは観客の歓声や応援のための笛や楽器が聞こえてきます。試合のある日とない日がありますが、工事現場などよりも恒常的に長い期間に渡って騒音に晒されることになります。
このような環境が近隣の家庭で飼われている犬に与える影響について、ブラジルのポンティフィカル・カトリック大学の研究チームがサッカースタジアムの近くに住む家庭犬についてリサーチを行い、その結果を発表しました。ブラジルのサッカースタジアム周辺の騒音はなかなか凄そうですね。
サッカーの試合中の騒音の犬への影響をリサーチ
ブラジルでサッカーの試合のある日のスタジアム周辺では、車の通行、歓声、笛、さらには花火が打ち上げられることもあり、かなり高いレベルの騒音が発生します。研究チームはブラジルの2箇所のサッカースタジアムの周辺地域で、サッカーの試合のある日とない日で騒音レベルを測定しました。
騒音レベルはスタジアムから0〜400mの範囲でサウンドレベルメーターを使って測定されました。試合のある日はより大きな騒音レベルが記録され、スタジアムからの距離が250m未満と250〜400mでも騒音レベルの違いが確認されました。
また、スタジアムの近くに住んでいる犬の飼い主に対して、犬の年齢や性別などの基本データ、犬の性格、犬の行動について定型化した聞き取り調査が行われました。飼い主の回答と、試合のあった日となかった日の騒音レベルの記録とを比較分析して、スタジアムからの騒音と犬が受けた影響の関連が明らかにされました。
騒音を聞いた犬が見せた行動は?
分析の結果はほぼ予想された通りでした。調査対象となった犬の90.6%が、サッカーの試合のある日には恐怖や不安を示す行動がより激しくなっていました。具体的には、激しい震え、過度のヨダレ、興奮、落ち着きのなさ、キュンキュン鳴く、食欲低下といった行動が挙げられています。
スタジアムからの距離が250m未満の場合は、激しい震えと過度なヨダレが250m以上離れている家の犬よりも多く観察されました。一方250m以上離れた家の犬では、吠え行動、遠吠え、食欲低下が250m未満の家よりも多く見られました。このように、サッカースタジアムの周辺に住んでいる犬に対して、サッカーの試合の際の騒音が有害な影響を及ぼしていることが示唆されました。
スタジアム周辺に住んでいれば犬も騒音に慣れているのではないか?と思われがちですが、約9割の犬が恐怖や不安を示していることから、犬は継続して怖い思いをしていることがわかります。このようなリサーチのデータは、スポーツ競技場周辺の騒音の予防策や緩和策を検討する際に有効な資料となります。
まとめ
ブラジルの研究者が発表した、サッカースタジアム周辺に住む犬が、サッカーの試合のある日の騒音に対して恐怖や不安を示す行動を多く見せているというリサーチ結果をご紹介しました。
日本でも大きいスポーツ競技場の近くに住んでいる方は心当たりがあるかもしれません。このリサーチ結果から私たちが心しておかなくてはいけないことは、日常的に大きな音に晒されている犬は慣れて平気になるのではなく、常に不安やストレスを感じている状態になるということです。この点を意識して対策を立てることで、愛犬のQOLの向上につなげることができそうですね。
《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1558787820300344