犬の甲状腺機能低下症の正しい知識~症状から治療法まで~

犬の甲状腺機能低下症の正しい知識~症状から治療法まで~

”甲状腺機能低下症”というとっつきにくい難しそうな病名ですが、「なぜ発症するのか」「どういう症状なのか」「どうすれば治るのか」など知りたいことをわかりやすくご説明致します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

元気ない犬

犬の甲状腺機能低下症の概要

甲状腺機能低下症とは、のどにある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの不足によって引き起こされる内分泌疾患で、特に高齢の犬に多く見られます。小型犬や、大型犬で多く見られる疾患です。

甲状腺ホルモンは、エネルギー、タンパク、ビタミン、脂質代謝などに関わる動物の生命活動に必要なホルモンであり、身体への影響が大きいため、様々な症状があらわれます。

しかし、症状が現れても、加齢によるものなのか病気によるものなのか、境目が非常に難しいため、
「もう少し様子を見てから病院に連れて行こう」となり、気付かぬうちに重症化してしまうケースも珍しくありません。

難しそうな病名ですが、簡単にいうと「身体を上手く動かすホルモンが出なくなる病気」です。

主な症状

  • ぼんやりしたり、散歩に行きたがらないなど、なんとなく元気がない
  • 食事の量は変えてないのに、体重が増える
  • 寒がる
  • 尾が脱毛する(ラットテイルと呼ばれます)
  • 皮膚が乾燥する
  • 被毛が粗くなる
  • 左右対称の痒みがない脱毛
  • 皮膚の色素沈着(お腹の皮膚が黒ずむなど)

さらに重症化すると

  • 発作
  • 前庭障害(首を片側に傾ける、くるくる回るなど)
  • 顔面神経麻痺

また、適切な治療をしないと衰弱し死に至る事もあります。

原因

甲状腺から甲状腺ホルモンが分泌できなくなる、または少なくなるために起こります。犬において、甲状腺機能低下症のほとんどは、甲状腺自体の機能不全が原因であるといわれています。

そのなかでも代表的な2つの要因が考えられます。

1.特発性甲状腺萎縮

甲状腺そのものがなぜか萎縮して機能が低下してしまう。現在、原因はよくわかっていません。

2.免疫介在性のリンパ球性甲状腺炎

自己免疫反応(自分を病気から守る仕組みが、間違って自分自身を攻撃してしまう)により、甲状腺が破壊されてしまう。遺伝的素因が関係しているのでは?と考えられていますが、こちらもよくわかっていません。

また、クッシング症候群などの他の病気が引き金となることもあります。

かかりやすい犬種

ゴールデンレトリーバー

小型犬や大型犬に多い疾患です。また、5歳位からの発症が多いとされていますが、若い犬でも発症します。

犬種としては、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、シベリアンハスキー、ドーベルマン、ビーグル、シェットランドシープドッグ、アフガンハウンド、アイリッシュセッター、エアデールテリア、ボクサー、プードル、ダックスフンドなどでの発症が多くなります。

甲状腺機能低下症の予防と対策

薬

予防することは非常に難しく、なによりも早期発見・早期治療してあげることが重要となります。

甲状腺機能低下症は高齢の犬に多く見られる疾患であり、
「散歩に行きたがらない」「元気がない」
などの症状がでても「年のせい」だから仕方ないと考えられてしまうため、少しでも
「最近なんだかおかしいな」と思ったら診察を受けると良いでしょう。

治療方法

残念ながら完治はできない疾患ですので、治療としては、産生・分泌できなくなった甲状腺ホルモンを薬として投与する事になります。比較的安価な薬が多いので、経済的な負担も軽いでしょう。

投与する量が多すぎると甲状腺機能亢進症という疾患を引き起こしてしまうため、数ヶ月おきなど定期的に病院で血液検査などの診察を受け、コントロールしながらの投与となります。

1度発症してしまうと甲状腺ホルモン製剤は生涯投与する必要がありますが、適切な量のホルモン製剤を投与し続ければ、予後はいい状態が続きます。

また、他の病気の影響で発生した甲状腺機能低下症の場合には、その基礎疾患を治療することによりホルモン製剤の投与を中止できる場合もあります。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    50代以上 女性 フーガ

    なじみのない病名なので甲状腺機能低下症という病気は記事を読むまで知りませんでした。
    甲状腺ホルモンの不足によって引き起こされる内分泌疾患ということで、予防することは非常に難しいので、早期発見・早期治療が肝心ですね。 万が一発症したら、飼い主としてできる限りのことをしてあげたいと思いました。
    高齢になると、つい「年のせい」だから仕方ないと考えてしまいますが、最近なんだかおかしいなと思ったら診察を受けようと思います。
  • 投稿者

    30代 女性 なーこ

    甲状腺の病気について詳しく知らなかった頃、動物病院で全身の毛が抜け落ちて皮膚も黒くすごく太ってるわんちゃんを見た事がありました。

    私は、皮膚病が酷いみたいだけどちょっと太らせ過ぎじゃないかな?と感じていたのですが、犬の病気を勉強するようになった今、あのわんちゃんは重い甲状腺機能低下症だったと知りました。太らせたんじゃなく、病気のせいで太ってしまっていたんですね。飼い主さんは悪くないのにそういう目で見てしまった自分…申し訳なく思いました。
    甲状腺はホルモン系統の異常なので、完治する事は難しいですがホルモン剤で辛い症状を抑えたりまだコントロールする事ができます。ただ、犬は不調があってもどういう感じで具合が悪いのか人に教えられないので、飼い主が気付くしかありません。

    うちも、脱毛があったり皮膚が黒ずんだりした時に甲状腺を疑い検査を受けた事があります。幸い、甲状腺の数値は正常値で一時的な脱毛だったみたいでホッとしました。

    記事の項目に当てはまるわんちゃんはぜひ一度甲状腺検査を受けて欲しいです。
  • 投稿者

    50代以上 女性 オリゴ糖。

    皮膚が乾燥してフケがひどく、厚く堅くなってきたようで、痒みもありました。
    膿皮症と思い病院で治療。抗生剤1ヶ月。皮膚の状態は改善されず。
    アレルギーも持っていた為、そちらからきているとの判断でアポキルを始めるも、良くならず、セカンドオピニオンへ。
    そこで検査をすると、肝臓の数値が非常に悪く、甲状腺の検査もし、それは外注に出したので1週間後だった。
    その結果、甲状腺の機能低下が判明した。
    ビタミンと、ニチファーゲンとチラージンを処方された。

    皮膚病を繰り返して、ステロイドをよく使っていた。感染症にかかりやすいとの事で皮膚病になりやすかったようだ。
    まだ全ての検査が終わってないので、まだクッキング症候群の疑いもある。(もう少し肝臓の数値がよくならないと、検査はかわいそうとの事で先延ばし。)
    薬のせいか、もともと甲状腺が悪かったのか、今の段階では原因はわからない。
    それと、今納得した事だが、とても寒がりで、3枚重ねでお散歩していたが、寒がるのも、甲状腺の症状のひとつだった。
    オリゴ糖。の投稿画像
  • 投稿者

    30代 女性 びび

    自分の愛犬(ヨーキーの女の子)は甲状腺機能抗進症(クッシング症)の方なので、その反対にコルチゾールが出すぎる方です。

    ホルモンの病気も色々ありますが、平たく言えばクッシングはステロイドを過剰に出してしまう病気だそうです。
    原因がステロイドが主に出る副腎(腎臓に小さく着いてる)に異常があるか、分泌を促す脳の下垂体?が分泌を過剰に促している状態だそうです。
    コルチゾール自体は、悪い物ではなく、元気になるようなホルモンだそうです。

    以前行っていた動物病院で、五年ほど太りすぎと言われて、色々やって来ても痩せずにあばら骨近くまで腫れるビール腹体型になりました。
    普通ホルモンは異常は脱毛(ホルモンの場合左右対象の脱毛が多いらしい)があるようですが、脱毛もなくただビール樽体型なだけでした。
    しかし、そんな体なので呼吸が圧迫されて咳き込んだりすることもありました。

    あまりにも異常過ぎて、周りの評判を聞いて他の動物病院へ。
    まず体型を見て、レントゲン検査。
    脂肪が殆どなく見た目とは違い痩せていることと、肝臓と脾臓(あばら骨の下に左右に分かれて脾臓と肝臓がある)がものすごく膨らんでいる事を言われ、簡易血液検査で肝臓の数値も高いので、ホルモンの病気を疑い血液検査を専門機関に以来。
    費用がクッシングだけなら一万位だと思います。
    外のホルモンの検査もすると、三万ほどかかったかも。
    結果は一週間ほどかかりました。
    それからエコーで副腎の状態を見て、大した変形がないので、原因が脳の下垂体の方だということになりました。
    副腎の場合、取るのは簡単な方ですが、わざわざ脳まで開く方がリスクが高いのと、獣医大学とかのハイレベルな場所でないと出来ないので、費用もかさむと言われました。
    しかも愛犬は当時10歳を越えていたので、麻酔は避けたいのもあり、飲み薬で押さえられるからと、飲み薬を毎日与える事になりました。

    それから分泌を押さえる飲み薬を与えて抑えますが、薬剤を素手では触れません。
    薬自体がホルモン剤で、クッシングを押さえる為に反対のアジソン症(副腎皮質機能低下症)に与える側の人間がなる可能性もあるとの事です。
    どうやらこのホルモンの薬は、微量でも皮膚からも吸収されるようです。
    人間用の代用する時は丸薬なので素手では触れませんが、犬用のはカプセルです。
    薬が効果なので、小型犬でも状態によって分量違いますが、1日500円以上かかるのは覚悟が必要です。
    大きくなればさらに使う量も増えるから、割高になります。
    1日一回必ず決まった時間に与えるのですが、毎日続けるのは大変です。

    そして、クッシングが続くとステロイドの影響で血糖値も上がるので、平たく言えば糖尿病と同じ状態になったような物です。
    自分もその後に突然なる糖尿病になりわかったのですが、血糖値が上がると、余分な糖分を尿として出そうとして喉が乾いて沢山飲んで、出そうとしてトイレによくいきました。

    そういえば愛犬も多飲む多尿、食欲旺盛でした。
    糖尿病と同じなので、免疫力も下がったり、合併症にもなりやすいです。
    あの体型以来、愛犬は角膜ジストロフィーとかの目の病気、なかなか治らないお腹のコンディション、咳き込みすぎて肺に異常が起きたり、膀胱炎になったりと、度々薬を貰い検査をしたりと大変です。
    もう16歳ですが、まだまだ元気に過ごしてほしいです。
  • 投稿者

    40代 女性 まみぞう

    うちは、もうすぐ14歳になるわんこ。
    もともと、いろんな大病を乗り越えてきているので、通院は2週間に1度です。
    血液検査も月に1度行なっています。
    甲状腺の異常に先生が気づいたのは、赤血球が少し減ってきたことです。
    毛が抜けたりもなく、お散歩も歩いていたので、血液検査がなければ気づかないままでした。
    早めに気づいて治療ができるので、本当に良かったです。
  • 投稿者

    50代以上 女性 さんご

    10歳のトイプードルは、元々てんかんの持病があり、定期検診を受け続けています。5歳のころの検診で、体重が激増していました。それがきっかけで判り、ホルモン剤を飲ませ始めました。手作り食ですが、食材も量も変えずに、体重が戻りました。 なんとなく悲しそうな表情をしていたのは、改善されてから、写真を見て気付きました。 最近、また動作が鈍く、少し悲しそうな顔つきなので受診しました。数値に問題が見つかり、ホルモン剤を少し増やします。高価なお薬ですが、とにかく早期発見です。定期検診も欠かさない事で、改善します。
  • 投稿者

    40代 女性 いちご

    初期症状として「動きたがらない」「食事量が変わっていないのに太る」などがありましたが、年を取ると自然とそういう傾向にもなるので、見分けるのが難しいなと思いました。だから年だからと言って「おばあちゃんだからね」で済まさないで、気になることがあったら必ず相談するようにした方がいいなと改めて思いました。
  • 投稿者

    50代以上 女性 フジ、甲状線機能低下

    甲状線機能低下に、愛犬が成りました。
    血液検査を、しましたが
    まだ結果が、分かりません
    フジ、甲状線機能低下の投稿画像
  • 投稿者

    女性 チキン

    こういった特殊な病気は原因が不明ということは遺伝的な要素がある犬種は気を付けるくらいしか手立てはないのでしょうか。気を付けるといっても、予防ができるような症状ではなさそうなので、症状に早く気が付いてあげるということが最大限で唯一飼い主としてできることかもしれませんね。
  • 投稿者

    40代 女性 marimomama

    こんにちわ。
    私はビーグルを飼っていますが甲状腺機能低下症の完治は難しいと思います。
    うちの子は尻尾の毛が無くなりラットテイル状態、後元気が無くなりました。
    心配になり病院で血液検査をしてすぐに投薬を始めました。
    残念な事に一生投薬は続きます。
  • 投稿者

    40代 女性 匿名

    柴犬で室内で飼っています。
    老化からくる慢性的な皮膚炎で13歳過ぎから投薬を続けていて症状は落ち着いていたのですが14歳の誕生日を迎えて10日後くらいに急に状態が悪くなり脚がガクガクで突然まともに歩けなくなってしまいました。それまでは普通にスタスタ歩いていたのに急にです。毛も抜けて皮膚もボロボロになりさすがに老化ではないと思い受診して血液検査をすると甲状腺機能低下症と診断されました。
    老化ってこんなに急に来るものなのだなーと楽観視してしまった数日間を後悔しています。
    うちの子は急に歩けなくなったことに一番驚きました。
    匿名の投稿画像
  • 投稿者

    40代 女性 rei

    フレンチブルドッグの1歳8ヶ月♀に成ります。2歳前の健康診断で、甲状腺機能低下症を疑われ、只今詳しい再検査の結果待ちです。此れまで勿論、大きな病気もなく来ましたが、湿疹が中々良くなったり、悪くなったりだったので、先生の進めも有り今回、甲状腺の検査を追加しました。早期に診断診断まで出来そうなので、今はホッとしています。健康診断を受けて良かったと思っています。
  • 投稿者

    50代以上 女性 ごん太

    今、甲状腺治療中です、最初は足がおかしく病院かかったら、大きな病院に紹介され、色々検査したら 、貧血があるこの事3ヶ月貧血数値上がらず
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