飼い主が評価した愛犬の「支配性」に関する調査研究

飼い主が評価した愛犬の「支配性」に関する調査研究

ハンガリーの研究者が、飼い主に愛犬の「支配性」を評価してもらうことで、人々がこの言葉をどのように使用しているかという興味深い調査を行いました。

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犬の「支配性」議論が引き起こす炎上

吠え合う2匹のキャトルドッグ

犬の支配性または優位性という言葉は、トレーニングの場面でよく目にするものです。「犬が飼い主の上位に立とうとしている」「その犬は権勢症候群だ」というような言葉とセットで使われることが多く、古いと言われながらも根強く残っている説です。犬のトレーニングに関してこの言葉が使われると、必ずと言っていいほど対立が起こり、炎上と言えるような状態になりがちです。

犬のトレーニングの世界で「支配性」という言葉は、しばしば犬が望ましくない行動をしたことを意味するために使われます。そして、犬ではなく人間が支配する側に立つために嫌悪刺激を使うことにつながりがちで、犬の福祉を損なう恐れがあります。

しかし、犬のトレーニングから離れて、動物行動学においては個々の動物の支配性という言葉にはきちんとした定義があり、動物の社会の中に存在するものとされています。動物行動学における「支配性」とは、食べ物、交配相手としての異性、安全な住処など、様々な資源へのアクセスに対する支配または優位性を指します。

しかし、「支配性」という言葉はメディアや一般の犬の飼い主の間では、誤って使用されたり誤解されたりしている例が非常に多いのも確かです。そこでハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究者が、犬の飼い主が「支配」という言葉をどのように使用しているかを調査し、その結果を発表しました。

同じ家庭内の2匹の犬の間の支配性や優位性

じゃれ合うセッターとハスキー犬

この研究では、同じ家庭で飼われている2匹の犬の関係を説明するのに「支配/優位」という言葉が使われるとき、そこにどのような要因があるのかが調査されました。調査は2匹以上の犬を飼っているハンガリーの1151人へのアンケートという形で行われました。2匹の犬を飼っている場合はその犬たちの比較、2匹より多くの犬を飼っている場合は特定の2匹を想定して、その2匹だけを念頭に置いて回答するよう求められました。

質問の数はとても多く範囲も広いものですが、比較した2匹のうちのどちらがボス=支配的であるか、様々な事柄に関してどちらの犬が先に行うかなどの質問が含まれます。そして87%の人が2匹の犬のうちのどちらかを「支配的」であると表現していました。支配的であるとされた犬の行動には次のようなものがありました。

  • 特別なごちそうを最初に得る
  • 最も心地よい休息場所を陣取る
  • グループを守り率いる
  • 見知らぬ人に対して他の犬より先に吠える
  • より攻撃的かつ衝動的
  • 年齢が上
  • 他の犬のオシッコにかぶせてマーキングする
  • 他の犬の口を舐めることが少ない

また、犬の支配性と関連がなかった事柄は次のようなものでした。

  • 犬のサイズや身体的条件
  • モッテコイ遊びでボールを多く取る
  • 帰宅した飼い主に最初に挨拶をする

比較された2匹の犬がオスとメスのペアであった場合には、メスの方が支配的な傾向がありました。

飼い主が愛犬の支配性を評価したポイントは何だったか?

フレンチブルと頭を下げるピットブル

こうして導き出された回答を集計分析したところ、犬の飼い主が「支配的」だと考えた犬の行動は、動物行動学者が「支配に関連する」と定義する行動にほぼ対応していました。研究チームは「犬の飼い主は、特定の行動、資源の獲得、特定の性格特性に基づいて、犬が支配性を持つかどうかを評価している」と結論づけました。

ただし、この研究はハンガリーの飼い主のみを対象にしているため、犬の飼い方や文化が違う日本やアメリカの飼い主と比べたときには同じようにはならない可能性があります。また、調査参加者の募集が動物行動学をテーマにしたFacebookのアカウントから行われたため、参加者たちは一般の飼い主よりも動物行動学に通じていたと思われます。

それでも、一緒に暮らす犬同士の関係を飼い主がどのように認識しているかを、研究者が理解しておくことは重要なことす。人々がどのような認識でいるかが把握されていなければ、教育や情報の発信ができないからです。今回の研究はその第一歩とも言えるもので、今後さらなる研究が予定されているそうです。

まとめ

2匹の犬と散歩をする女性

ハンガリーの研究者が発表した、2匹の犬の関係における支配性について飼い主がどのように評価しているかという調査研究の内容についてご紹介しました。動物行動学における犬の支配性/優位性という言葉を正しく認識することは、犬の福祉を損なうようなトレーニング方法に疑問を持つことにつながります。「犬との生活における用語の使い方」という見落としがちなテーマの研究の重要さに膝を打つような感覚を持ちました。

《参考》 https://peerj.com/articles/6838/

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