次々に生まれる新型インフルエンザウィルス
鳥インフルエンザ、豚インフルエンザなど、動物を介して感染する新型のインフルエンザは2000年代以降の公衆衛生の大きな問題の一つとなっています。韓国の高麗大学の研究者は、様々な種類の動物に関連するインフルエンザの菌株を観察する研究を10年間行ってきました。その結果、犬や他のコンパニオンアニマルによって、人間にも拡がる可能性のある新型インフルエンザへの警戒を示唆しています。
犬から人に感染の可能性のある新しいインフルエンザ
これまで犬はインフルエンザ研究の分野において、人間への感染の可能性という点では注意を払われていませんでした。けれども、鳥インフルエンザの株から犬インフルエンザウィルス(人間には感染しない)が発生し、さらにそれが豚インフルエンザの株と結合して、新型の犬インフルエンザウイルスが発生しています。この新型犬インフルエンザが人間にも感染する可能性があると研究者は述べています。
ウイルスは宿主細胞に結合し、種によって異なるシアル酸受容体を介して感染を引き起こします。フェレットのシアル酸受容体は人間のものとよく似ているため、フェレットは新しいインフルエンザウイルスのリスクを予測するための優れたモデルと見なされています。
そして、この新型犬インフルエンザはフェレットへの感染率が高いため、人間への感染の危険性が高いと判断されました。同ウイルスはフェレットの他に猫への感染も報告されており、コンパニオンアニマルからのインフルエンザウイルス感染の監視は、綿密に強化されるべきだと研究者は求めています。
新型ウイルスへの対応はどうすればいい?
研究者はもちろんワクチンの開発にも尽力していますが、高レベルの突然変異のためワクチン開発は簡単ではありません。つまり今のところ、新型犬インフルエンザのワクチンはない状態です。報告されている症状は、鼻づまり、呼吸困難、咳、鼻水、くしゃみ、意識混濁した状態で眠り続ける、食欲不振など呼吸器疾患の典型的なものです。
愛犬や愛猫、フェレットなど、コンパニオンアニマルにこのような症状が見られたら、すぐに病院で診察を受けましょう。またふだんから食生活や運動、水分補給、過剰なストレスを避けることに気をつけて、免疫力を下げない努力も大切です。
従来の犬インフルエンザは、人間への感染の可能性は非常に低いと言われていましたが、念のため家族全員が抗菌石鹸での手洗いの徹底、生活環境の消毒、休養や睡眠を十分に取る、水分補給を心がけ、不調があれば早めに受診しましょう
まとめ
韓国の高麗大学の研究者によって、新型の犬インフルエンザウイルスが人間にも感染する可能性があると発表されたことをご紹介しました。今のところ、この新型がどの程度の脅威なのかはまだわかっていません。むやみにパニックになることは避けなくてはいけませんが、可能性を知っておくことで早めの対処や生活習慣の見直しなどもできますし、いざという時の判断にも役立ちます。
この数年、アメリカやアジア諸国では犬インフルエンザの流行が続いていますが、幸いなことに日本への影響は大きくありませんでした。けれどもいつまでも対岸の火事だと考えてはいられません。犬インフルエンザの情報について、ワクチンの開発情報も含めて、今後も気に留めておきたいと思います。
《参考》 https://phys.org/news/2019-03-dogs-source-flu.html