世界小動物獣医師会が呼びかける健全なブリーディング対策

世界小動物獣医師会が呼びかける健全なブリーディング対策

繁殖される動物の健康を第一に考えたブリーディングを推進するために、世界小動物獣医師会が委員会を立ち上げ、方針発表を行いました。一般の飼い主も知っておきたい大切な事です。

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遺伝病に苦しむ動物を少なくするために

暗がりで伏せるフレンチブルドッグ

行き過ぎた選択繁殖のために、極端な姿形になり、健康上の問題が頻発する犬の問題が、数年前にイギリスのテレビ番組などで取り上げられて以来、世界のブリーディングの流れは、少しずつですが、犬の健全性を取り戻そうという方向に行きつつあります。

とはいえ、犬の遺伝性疾患は「犬種特有の病気」として仕方のないものとして受け止める人が、まだまだ多いのも現実です。遺伝性疾患を持って生まれてきた犬の情報を隠すブリーダーもいるため、繁殖をきちんと管理すればできるはずの遺伝病の撲滅が、なかなか進まないことも問題です。

犬だけではなく、猫でも見た目の可愛らしさのためだけに行われた繁殖のせいで、生涯に渡って苦痛を抱えながら生きていく個体も多くいます。

世界の獣医師たちが立ち上がった!

横を向いて立つジャーマンシェパード

欧州獣医師会および、欧州小動物獣医師会はこのような状態を重く見て、2018年6月に「生まれてくる動物の健康を第一に考えたブリーディングを推進する」という方針説明書を発表しました。
世界小動物獣医師会は、欧州のこの発表を受けて全面的な支持を表明しています。

そして2018年12月、20万人以上の獣医師を代表する世界小動物獣医師会が、遺伝性疾患対策委員会を立ち上げ、「遺伝性疾患の影響を軽減するための、健全なブリーディングと遺伝子検査の役割」と題した方針を発表しました。

委員会があげる外見的な健全性の問題では、次のようなものが含まれています。

  • ティーカップサイズなど極端な小型化
  • パグやシャーペイなどに見られる、皮膚炎を起こしやすい皮膚のたるみ
  • ジャーマンシェパードなどに見られる、極端な背中の傾斜
  • パグ、ブルドッグなどに見られる、極端な短頭症

外見ではわからない遺伝性疾患に関する対策も、もちろん深く触れられています。

健全なブリーディングのための対策とは?

遺伝子検査の試験管

遺伝性疾患対策委員会は、ブリーダーに対して「繁殖に使用する予定の動物について、獣医師による詳細な健康診断や病歴の徹底的なスクリーニングを行い、健康な子孫を産生する可能性の高い動物のみを選抜すること」を呼びかけています。

委員会はさらに、犬種ごとに発症しやすい疾患に関する遺伝子検査、遺伝性疾患についてのスクリーニング、専門家による遺伝カウンセリングをするべきだと述べています。
また、これらの遺伝子検査やスクリーニングに関して、適切なアドバイスができるよう、一般の獣医師に対して知識や情報を得ることを求めています。

ちょっと小難しい言葉が並んでしまいましたね。けれどもこれは、決して遺伝子の専門家や、シリアスブリーダーだけに関係のある話ではないのです。犬や猫を愛している人なら、彼らが病気や障害に苦しむ姿を見たいと思う人はいないでしょう。しかし現実には、遺伝病や遺伝性障害に悩まされている動物や飼い主さんはあとを絶ちません。

この委員会が推進しているような対策は、パピーミルや安直な素人繁殖では対応できることではありません。つまりパピーミルや素人繁殖が蔓延っている限り、健全なブリーディングが多数派となることは難しいのです。

まとめ

一緒にくつろぐヨークシャテリアと猫

世界小動物獣医師会が、犬や猫の遺伝性疾患を少なくし健全なブリーディングを推進するための委員会を設置し、その方針を発表したというニュースをご紹介しました。

幸いなことに、現在では遺伝子検査の技術も多く開発され、少ない手間と費用で精度の高い検査もできるようになっています。健全なブリーディングを推進し、遺伝性疾患や障害を持つ動物を減らしていくためのツールは揃っているので、最も大切なのは人間の意識であると言えるでしょう。

一般の飼い主さんに知っていただきたいことは、「責任を持って繁殖する」というのは、生まれてくる子犬や子猫の行き先を確保すればいいというものではないのです。

ここで挙げたような、遺伝子検査やスクリーニングを実施するというのがまずは第一関門です。
「うちの子の赤ちゃんを見てみたい」という動機で、繁殖を行ってはいけないということが、広く知られるようになってほしいと切に願います。

《参考》 https://www.americanveterinarian.com/news/wsava-urges-use-of-genetic-testing-before-breeding
https://www.wsava.org/WSAVA/media/Documents/Committee%20Resources/Hereditary%20Disease%20Committee/WSAVA-Hereditary-Disease-Committee_Position-Paper-(2018).pdf

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    女性 匿名

    良い事だと思います
    日本はもっと日本のブリーダー(というか繁殖屋)をもっと厳しく取り締まるべき
    口コミで優良ブリーダーと書かれてても、見学に行くとどの犬も檻にいれっぱなしだったり、散歩にはほぼ連れて行かなかったり、ヒート毎に子供を産ませたりしてて日本に本当に良いブリーダーが居るのか疑問に思います
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