出かける前には犬を無視するという説が覆された?
犬を置いて家を出るとき、犬に「行ってくるね」と声をかけたり撫でたりすることは、犬が興奮したり、「撫でられた後はいなくなってしまう」というネガティブな印象になるため、何も言わず無視したまま出かけた方が良い、という説を聞いたことがある人は多いと思います。
この説は、長い間トレーナーなどからも支持され、多くの人に信じられている説でもあります。
けれども、イタリアのピサ大学の研究者が行った予備研究では、この根強く信じられている説とは違う結果が観察されました。
飼い主が不在になる前、飼い主のどんな行動が犬を落ち着ける?
今回行われたのは、予備研究であるため実験の規模は小さいもので、参加したのは犬10匹、飼い主は7名でした。
条件を同じにするため、実験はどの犬にも馴染みのない自宅から離れた場所で行われ、犬たちは実験中はずっとオンリードの状態でした。
それぞれの犬は、各2回の「飼い主が不在になる」実験に参加しました。
まずひとつは、飼い主が不在になる前に、犬を1分間撫でて過ごし、その後、犬と実験者だけを部屋に残して、3分間不在になるというものです。
そしてもうひとつが、不在になる前に犬を1分間無視して、同じように3分間不在になるパターンです。
飼い主は犬から見えない場所に隠れ、実験者から連絡を受けて、犬がいる場所に戻ります。
犬と一緒に残された実験者は、3分後飼い主に連絡をするまで、犬のリードを持ってじっと立っています。
研究者たちは、飼い主不在時の犬の行動の観察、実験前と後の心拍数、飼い主不在時の犬の唾液中のコルチゾール値の測定(ストレスレベルの測定)を行いました。
撫でる?無視?どちらが犬の精神を落ち着けたのか
さて実験の結果はどんなものだったでしょうか?
観察された犬の行動と、唾液中のコルチゾール値が示したのは、撫でられた場合も無視された場合も、飼い主不在中の犬は、それほど大きなストレスを感じていないということでした。
不在中の犬たちのボディーランゲージには、大きなストレスを思わせるものは少なく、唾液中のコルチゾール値にも、大きな上昇は見られなかったとのことです。
しかし、犬たちは撫でられた場合も無視された場合も、飼い主が出て行った後、約90秒飼い主を探すことに費やしました。飼い主不在時間は3分間なので、そのおよそ半分の時間、飼い主を探していたことになります。
飼い主が離れる前に撫でられた実験では、犬たちは「横たわる」「3秒以上の間地面を嗅ぐ」などの落ち着いた行動を見せました。(3秒よりも短い時間の地面を嗅ぐ仕草はストレスシグナルとしてカウントされます。)
また、同じく撫でられた実験の後の犬たちの心拍数は、無視された実験後の心拍数よりも低くなっていました。
この実験結果は、犬が飼い主と離れる前には、無視されるよりも撫でられる方が犬が落ち着いていられる効果を示唆しています。
研究者は、「この予備研究は、飼い主が短時間離れる前に犬を撫でることは、離れている間犬を落ち着かせるポジティブな効果があることを示唆しています。この効果についてより深く解明するためには、さらなる研究が必要です。」と述べています。
予備研究の実験に参加した犬たちは、分離不安のない犬ばかりだったので、今後は分離不安を抱えている犬も、研究の対象としていく予定とのことです。
まとめ
イタリアのピサ大学の研究者が発表した、「飼い主が不在になる前には、犬を無視するよりも撫でてから出かけた方が、待っている間落ち着いて過ごすができた」という結果をご紹介しました。
従来の「出かける前は無視」という説は、実行するのに少し心が痛むものだったので、この結果は嬉しいものですね。
留守番中に犬が落ち着いて過ごせるというのは、犬の福祉に関わる問題でもあります。今後行われる予定の、さらに踏み込んだ研究に期待したいですね。
《参考》
https://www.journalvetbehavior.com/article/S1558-7878(17)30250-2/fulltext
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