「名犬ラッシー」はあながち作り話じゃない?
犬にとって大切な人が何かトラブルに巻き込まれた!
そんな人間の危機を、犬が助けてくれるお話の代表と言えば、「名犬ラッシー」です。1950年代に大ヒットしたテレビシリーズですが、その後も再放送や映画化もされたので、若い人でもご存じではないでしょうか。
そのラッシーにちなんで、タイトルを付けられた論文が発表されました。タイトルは、「ティミーは井戸の中にいる:犬の共感と社会的救援」というものです。
犬は人間の感情を感じ取り、敏感に反応することは知られていますが、犬の中にはただ感じ取るだけでなく、強い絆のある人間が困難を感じていると、助けに来る者もいると言うのが、発表された内容です。
飼い主の泣き声を聞いて駆けつける犬
研究を発表したのは、アメリカのマカレスター大学の研究チームです。
研究者は、
と述べています。
このリサーチのために行われた実験は、次のようなものでした。
参加したのは様々な犬種とサイズの、家庭犬34匹とその飼い主です。犬はゴールデンレトリーバーやラブラドールなど大型犬、シーズーやパグなどの小型犬、そして雑種犬が含まれていました。
飼い主は1度に1人ずつ、透明なドアの向こうに座るよう指示されます。ドアはマグネットで閉まるようになっていて、外側から押せば中に入ることができます。犬には飼い主が見えており、声も聞くことができる状態です。
そうしてドアの向こうに座った人は、童謡のきらきら星をハミングする、または泣き声をあげるように指示されました。
研究チームは、飼い主が泣き声をあげたときの方が、犬がドアを押して開ける回数が多いだろうと予想していました。
結果は、ドアを開ける回数にはハミングと泣き声に、大きな違いはなかったのだそうです。しかし飼い主が泣く声を聞いた犬は、ハミングを聞いたときの3倍の速さで駆け寄って、ドアを開けたのだそうです。
犬はそのように素早く駆けつけた者と、泣き声を聞いても駆けつけなかった者がいました。
飼い主のところに飛んできた犬、来なかった犬の心理は?
飼い主が泣いているのを聞いて飛んできた犬は絆が強く忠実で、駆け寄ってこなかった犬は薄情だったのでしょうか?リサーチの結果からは、決してそんなことはないということが分かりました。
研究チームは、この実験の間の犬の様子を録画して、犬のボディランゲージからストレスレベルを分析していました。飼い主を助けようとドアを開けた犬たちは、ストレスレベルが低かったそうです。泣く声を聞いて動揺はしたものの、そのために行動が妨げられるということはありませんでした。
一方、駆け寄ってドアを開けることをしなかった犬たちは、ストレスレベルが高かったことが見て取れました。
これは、駆け寄っていかなかった犬は、飼い主が泣いていることで、次の行動が起こせないほど動揺していたことを示しているそうです。
どちらの犬の反応も、胸にグッと来て泣けてきそうになりますよね。
まとめ
犬は自分にとって関係の深い人間が、困ったり悲しんだりしていることに気づくと、急いで駆け寄ってきたり、動揺したりするという実験の結果をご紹介しました。
1日の終わりに、仕事や人間関係の愚痴を犬に向かって話していると、黙って寄り添ったり顔を舐めたりしてくれたという経験を持つ人は多いでしょう。
「うちの犬はそんなことはしてくれない」という人も、犬は大切な人が落ち込んでいることに動揺してしまっているのかもしれません。
どちらにしても、犬への愛おしさがいっそう強くなるような研究の結果ですね。
あまり犬に心配をかけないようにしようと、心に誓う結果でもありました。
《参考》
https://link.springer.com/article/10.3758%2Fs13420-018-0332-3
ユーザーのコメント
30代 女性 匿名
愛犬が駆け寄ってきて涙を舐めてくれました。
優しい。