バリ島の犬たち、路上の犬と家庭の犬を比較した研究結果

バリ島の犬たち、路上の犬と家庭の犬を比較した研究結果

バリ島の地元の犬たちは何千年にも渡って、人間の手が入らない状態で自由に繁殖してきました。そんなバリ犬のうち、路上で暮らす犬と家庭で飼われる犬の行動や性質を調査すると興味深い傾向が見えてきたそうです。

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世界の他の地域の犬とは違うバリ島の犬たち

バリ島のビーチの犬

犬が人間の側で生活をするようになって1万年以上の時が経っていると考えられています。その間に犬は様々な形で人間の生活を助け、その目的に合わせて人間は犬を選択して繁殖させ、現在の純血種の犬種を作り出してきました。ですから純血種の犬固有の性質や行動特性は人間の手によるものと言えます。

そしてここに、人間の手が入らない状態の犬の自由意志、なおかつ他の選択繁殖された犬の血が入らない状態で繁殖してきた犬がいるなら、彼らはどんな行動や性質を見せるのか?というテーマがあります。このテーマを研究するのにぴったりの対象がインドネシアのバリ島の犬たちです。

直近の氷河期が終わる前にバリ島に流れ着いた犬たちは、少なくとも約3000年前頃独自の品種に分化したと考えられています。

数千年前、インドネシアの他の島に比べてバリ島を訪れる人間ははるかに少なく、犬たちは他の地域の犬の遺伝子が入らない状態で、島の中だけで自由に繁殖を続けて来ました。

また他の地域と異なり、バリ島の人々は犬たちを積極的に選択して繁殖するという作業もしていない可能性が高いと考えられています。

このような理由からバリ島の犬は、選択繁殖されて作り上げた純血種の犬ではわからない性質や行動の研究対象として最適なのだそうです。

そしてこの度、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究者たちが、バリ島の犬たちの性質や行動特性を研究しその結果を発表しました。

生きる環境は犬にどんな影響を与えるのだろう?

バリ島の寺院の犬

バリ島の犬たちは数千年に渡って、繋がれたり飼育されたりすることなく自由に生きてきました。他の地域ではスズメや鳩が人間の側でごく普通に自由に暮らしているような感じです。

一方、近年はインドネシアの外から、駐在や移住という形で大勢の外国人がバリ島に入ってくるようになりました。彼らの中には道端で暮らすバリの犬を引き取り、西洋文化のやり方で犬をペットとして飼育する人々も出てきました。

これらは同じ遺伝子プールの犬が「人間の手を借りずに自由に生きている環境」「人間の群れの一員として飼育される環境」では、性質や行動にどのような違いが現れるかを調査する格好のサンプルです。

バリ島以外の地域ではストリートで暮らす犬と家庭犬では遺伝子プールが全く違うので、純粋に環境が性質や行動に与える影響がわからないからです。

研究チームは、75項目から成る「犬の性質に関する質問票」に記入してもらい、結果を分析するという形で調査を行いました。

質問票に記入するのは、ペットになっている犬の場合には飼い主、ストリートの犬の場合は犬の福祉のために活動しているNPO団体の人たちです。NPO団体の人々は普段から犬の世話をして個々の犬のことをよく知っています。

こうして60匹のストリート犬と15匹のペット犬の性質についての比較が行われました。

路上と家庭、それぞれの場所で暮らす犬たちの違いは?

バリ島のビーチの白い犬

2パターンの犬たちの性質や行動には明らかに違いが見られました。
路上で暮らす犬たちの特徴は

  • あまり活動的ではない
  • 興奮性が低い
  • 攻撃的ではない

という穏やかなものでした。人間や他の動物を追いかけるような傾向も低かったのだそうです。つまり家庭で暮らすバリ犬たちは、活発で興奮しやすく攻撃的な傾向が強かったということです。

この結果については様々な仮説が立てられます。まず、自由に暮らしていた犬が家庭に閉じ込められたことで十分な刺激を受けられなくなり、興奮しやすく攻撃的になったというもの。または、興奮しやすく攻撃的な性質は、路上で暮らす犬にとっては命取りになるような事故や喧嘩に巻き込まれる可能性を高くするため、穏やかな犬が多く生き残っている可能性もあります。

家庭の中で暮らすことが犬の性質や行動にネガティブな影響を与えているという可能性は、今後もさらに深く広い範囲の研究が必要だと考えられます。

まとめ

バリ島の寺院の薄茶の犬

インドネシアのバリ島で何千年にも渡って、自由に暮らし繁殖してきたバリ犬たち。彼らのうちの路上で暮らす犬と、家庭に引き取られて暮らすようになった犬の性質や行動を比較調査した結果、路上の犬たちの方が穏やかな傾向が見られたという結果をご紹介しました。

家庭に閉じ込められることが犬たちを攻撃的にしたのか、他の要因があるのか、これはバリ犬に特有の傾向なのか、今後もさらに研究が必要であるとされていますが、私たちが普段よく知っている家庭犬とはかなりカラーの違う犬の世界の話は興味深いですね。

《参考》
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0197354

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