最近は、ドッグランを利用する飼い主さんも増えてきていますが、その分ドッグランでのトラブルも多くなってきています。
ドッグランは様々なわんちゃんが集う公共の施設。
きちんとルールやマナーを理解して、皆で楽しく利用したいものですよね。
今回は、ドッグランでのNG行動10個を、その理由と対応とともにご紹介します。
他の人の犬を勝手にさわる、抱き上げる
理由
- 多くの犬は飼い主以外からいきなり触られることに強いストレスを感じるもの
- 飼い主にしか分らない、体の特徴、健康上の問題を抱える犬もいる
- 自分の愛犬の抱き方に慣れている人が、体形の異なる他の犬種を抱くと、無理な抱き方をして犬の体に負担をかけてしまうことも
いきなり頭の上や正面から触ろうとしたり、前脚をつかんで抱き上げたり、仰向けに赤ちゃん抱っこするなど、犬に多大なストレスをかける接し方をするのはNG。
これでは咬まれても文句は言えません。
その子は体のどこを触られるのが好きか嫌いか、弱い部分(関節など)はどこか、熟知しているのは飼い主さんだけ。
気質・性質の面でも同じこと。
人懐っこいのに触ると豹変してガウガウかみつく子もいます。
見た目だけでは判断できません。
元気で人懐っこく見えても、他人が不用意に触ることは慎むべきです。
犬はぬいぐるみ、動くおもちゃではありません。
自らも自分の犬を愛するなら、他の犬と、その飼い主さんを尊重するためにも、勝手に触ったり抱き上げたりしてはいけません。
対策
飼い主さんは、他の人が触りそうになったら
「ごめんなさい。この子は触られるのが好きではないので」
と、角が立たないように断りましょう。
即座に名前を呼んで呼び寄せられるようにしつけておくことも大切。
幼い子どもを連れて来る
理由
- 子どもは、予測できない動きをするので犬を怖がらせる
- 走り回ったり犬を追いかけたりする
- 特に幼い子どもでは、転んだり尻モチをついて犬を下敷きにするケースも
- 甲高いはしゃぎ声を嫌う犬は多い
- 苛立たせて噛み付きの原因にもつながる
子どもを苦手な犬は多いため、小学生以下の子どもの入場は基本的に避けるべきでしょう。
犬種によっては、走り回る子どもに狩猟本能を刺激され、追いかけて噛み付くおそれもあり、実際に事故も起きています。
ドッグランは、子どものための動物ふれあいの場ではありません。
犬のための場所だということを忘れずに。
対策
犬と子どもの両方をきちんと見ていられなければ、入場は控えましょう。
また、小学生以上で、犬との接し方をわきまえている子でも、親が付き添い、相手の飼い主に断って触らせてもらうようにしましょう。
排泄物の放置
理由
- 衛生的に言うまでもなくNG行為!
- 食糞してしまう犬もいる
- 犬にも人にも病気の感染のおそれ
ドッグランによっては、ワクチン証明など求められないフリー利用の場所もあり、中にはワクチン接種していない犬もいるのが現実です。
また、回虫の卵は乾燥にも強いため、放置された排泄物が乾燥してホコリとともに舞い上がり、人の体内に取り込まれてしまうおそれもあります。
排泄物を片付ける重要性をしっかり認識しましょう。
対策
周りとお喋りの間も、自分の犬から目を離さないこと。
排泄物はすぐに処理。
おしっこはドッグランの環境により、水で流したり、上から砂をかけておくなど。
おもちゃ、おやつの持ち込み
理由
- おもちゃやおやつに強く反応する犬もおり、取り合いで流血のケンカになることも
- 所有欲のある犬もいることを忘れずに
- ダイエットや健康上の理由でおやつを制限している犬もいる
- おやつのかけらが落ちていると拾い食いにつながる
おもちゃを、いちどくわえたら絶対に放さない犬もいます。
飼い主さん自身、唸られたり逃げられたりして取り上げることができず、自ら咬まれてしまったり、おもちゃの持ち主に謝ったり、弁償したりの場面も見受けられます。
おやつの持ち込みで特に問題なのが、持病で食べさせてはいけないよその犬も、口にしてしまうおそれがあること。
食べカスが落ちていれば、どれだけ気をつけていても防ぎきれません。
不衛生なだけでなく、何を口にしたか確認できないため、後で体調を崩しても原因が特定できません。
対策
様々な気質の犬がいるドッグランで、おもちゃで遊ぶのはそもそもNG。
このことへの認識が薄い人が多いようです。
同様に、自分の犬、よその犬におやつをあげるのもNG。
おやつを携帯する時は、しっかりした袋やトリーツ缶などに入れる、おやつの入ったバッグをベンチの上などに放置しないこと。
ヒート(発情)中のメスを入れる
理由
- オス同士の流血の大げんか
- 望まない妊娠
オスはヒート中のメスのフェロモンに反応して発情します。
犬の発情は子孫を残すためですから、オスどうしの命をかけた闘いに発展するのは当然のこと。
よほど訓練されていなければ、飼い主の制止も耳に入りません。
去勢したオスでもヒートには反応する子もいます。
対策
♀オーナーさんへ :
自分の犬のヒートのタイミングをきちんと把握して、その間はドッグランには入れないこと。
望まない妊娠を防ぐと同時に、他の犬達への思いやりでもあります。
♂オーナーさんへ :
自分の犬がやたらと執着している♀犬がいたら、引き離し、相手の飼い主にヒート中か確認しましょう。
初めて犬を飼うなど飼い主自身が♀の生理を理解していないこともあるので、その場合は、きちんと理由を説明して退場を促しましょう。
特定の犬への執着やマウント行動を放置する
理由と対策
特にオスどうしに見られるマウントはトラブルになりがちです。
去勢したオスが執着の対象になりやすいようですが、そのオスを巡って、他のオス同士が喧嘩に発展することも多々ありますし、追いかけられている側がキレて大げんかになることもあります。
そうなる前に、飼い主は愛犬を相手の犬から引き離す、または間に割って入り止めることです。
自分の犬が他の犬に執着する場合やマウント癖のある場合は、ドッグランから退場を。
これは他の犬への配慮としてだけでなく、本愛犬をクールダウンさせ、意識を飼い主に引き戻す意味でも必要なことです。
勝手な写真撮影とブログアップ
理由と対策
固いハナシをすれば、法的にもその犬は誰かの所有物なので、断り無く写真撮影やブログアップはNG。
ひとこと「いいですか?」と断るのは、相手を尊重する思いやりでもあります。
自分の犬の気質を理解していない・・・制御できない
理由と対策
狩猟犬、牧羊犬は走るものを追う本能が強いなど、自分の犬種特有の気質を理解しておくのは基本。
どれだけ日頃は大人しい気質でも、突然、本能のスイッチが入って、攻撃的な行動に出てしまう可能性はあります。
相手の犬に致命的なケガを負わせることにもなりかねません。
そうなる前に制御できるよう、トレーニングしておくことが求められます。
また、自分の犬が、何に執着しやすいか、何に興奮しやすいか、あるいはどんなタイプの犬とトラブルになりやすいか、どういう場合にスイッチが入りやすいかを、きちんと把握して、トラブルを避ける努力をするのは飼い主の責任です。
ドッグランに入る前に、どのような犬が中にいるか確認した上で、入る、入らないを判断することも大切です。
大型犬を小型犬コーナーに入れる、またはその逆
理由と対策
ドッグランの多くは、中・大型、小型に分けられているので、それに従うのは当然のこと。
もし事故が起きた場合、どうしても小型犬は不利になります。
実際に、本能のスイッチが突然入ってしまった大型犬に小型犬が首を咬まれ、死んでしまう事故もあり、両者にとって不幸な結果となります。
小型犬は抱いていれば大丈夫、と考える人も多いようですが、自分の目線より高い位置に犬がいると他の犬の飛びつきを助長したり、その時の反応に応じて抱いている飼い主ごと咬んでしまうケースもあります。
きちんとリスクを理解した上で、守るべきルールは守りたいものです。
「犬のことは犬どうしに任せる」という考え方
正しいか、間違いか・・・
実はドッグランでいちばん問題になるのが、こうした考え方。
確かに犬は人間とは違い、彼ら独自の行動パターンを持つ動物ですが、人間と強いつながりを持ち、その中で行動を進化させてきた生き物でもあります。
「犬は群れの動物」
「犬には上下関係がある」
「犬どうしで教育し合っている」
「だから人間は介入せず、犬達にまかせたほうが良い」
と、頑に信じている人もいますが、こうした考え方は、完全に間違いではないまでも、正しくもありません。
犬の全てが犬として正しい行動をしているというわけではない
ペットショップなど不自然な環境で、大切な学習期を長く過ごしてしまったような犬の場合、犬同士の付き合い方が分らない子もいます。
いわゆる“空気が読めない犬”も確かにいて、他の犬のカーミングシグナルを読み取れないことから、トラブルに発展するケースもあります。
トラブルに発展する前に飼い主が気付き、犬の間に入って回避することが必要な場合もあることを忘れずにいてください。
飼い犬をしつけるのは飼い主自身
よく怖がりの子に「うちのはビビリだから、少し教育されたほうがいいんだ」とか、逆に活発すぎる子には「うちのは少し他の子に叱られて教育されたほうがいいのよ」などと言う飼い主がいますが、これは考え方を変える必要があります。
怖がりの子を無理にドッグランに入れることにメリットはありません。
少しずつ怖いものを減らしていくためには、弱い刺激から徐々に慣らすことが必要なので、いきなりのドッグランは不向きです。
エネルギー発散のためだけに、むやみにドッグランを利用すると、問題行動の助長につながることもあります。
人間感覚で犬を判断し、全て犬任せにすると、愛犬や他の犬にストレスを押し付けることになります。
飼い犬を教育するのは飼い主自身であることを忘れないでください。
さいごに
そもそもドッグランは一体何のためにあるのでしょう?
犬に自由運動をさせるため、他の犬との交流を学ぶため、飼い主どうしが親睦を深めるため・・・。
色々な考え方がありますが、犬にとっては必ずしもドッグランが必要とは限りません。
飼い主との信頼関係がしっかりできていて、十分な運動がされているなら、ドッグランに行かなくても何ら問題ありません。
むしろドッグランは、様々な意識の飼い主さんや、様々なしつけレベルの犬が混在していて、問題のほうが多く目立つものです。
ドッグランならではの良い面もあるので、完全否定するものではありませんが、多くのトラブルは飼い主自身の無知と「これくらいなら」「うちの子は例外だから」のルール違反から生じます。
ドッグランのルールとマナーを守ることは、周囲の人や犬のためだけでなく、自分の犬を守ることにもつながります。
自分の犬が大切なように、他の人も自分の犬が大切なのだということ、常に忘れないでいてください。