ミニチュアシュナウザーは病気になりやすい?
ミニチュアシュナウザーは、特別に体が弱い犬種というわけではありません。適切な健康管理を続けることで、元気に生活する犬も多くいます。
一方で、犬種ごとの体質や遺伝的な背景によって、ほかの犬種と比べて発症しやすいと報告されている病気がいくつかあります。
そのため、「病気になりやすい犬種」と一括りに考えるのではなく、ミニチュアシュナウザーにみられやすい健康上の傾向を知っておくことが大切です。
また、犬種として注意が必要な病気があるからといって、すべての個体が発症するわけではありません。体質や年齢、生活環境などによって健康状態は異なるため、日頃の様子を把握し、変化に気づけるようにしておきましょう。
ミニチュアシュナウザーがかかりやすい病気
ミニチュアシュナウザーでは、体質や遺伝的な背景などから、ほかの犬種と比べて発症しやすいと報告されている病気があります。ただし、犬種としてリスクがあるからといって、すべての個体が発症するわけではありません。
ここでは、ミニチュアシュナウザーを飼ううえで知っておきたい代表的な病気について紹介します。
高脂血症
高脂血症は、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)などの脂質が増加した状態です。ミニチュアシュナウザーは、特に血中のトリグリセリド値が高くなりやすい犬種として知られています。
体質的に生じる場合がある一方、糖尿病や甲状腺機能低下症など、ほかの病気に伴って高脂血症になることもあります。また、ミニチュアシュナウザーでは高トリグリセリド血症と膵炎との関連も報告されています。
尿路結石(尿石症)
尿路結石は、尿に含まれる成分が結晶化して結石となり、膀胱や尿道などの尿路にできる病気です。ミニチュアシュナウザーは、なかでもシュウ酸カルシウムを主成分とする尿石ができやすい犬種のひとつとされています。
尿石にはシュウ酸カルシウムのほか、ストルバイトなど複数の種類があり、種類によって形成される仕組みや治療方法が異なります。
そのため、尿石症が確認された場合は、尿検査や画像検査などをもとに状態を確認することが重要です。
膵炎
膵炎は、消化酵素などを分泌する膵臓に炎症が起こる病気です。ミニチュアシュナウザーは、海外の疫学研究などで膵炎の発症リスクが高い犬種として報告されています。
発症にはさまざまな要因が関係すると考えられており、原因をひとつに特定できないケースも少なくありません。
ミニチュアシュナウザーでは高トリグリセリド血症との関連が知られていますが、高トリグリセリド血症だけが膵炎の直接的な原因になると断定できるものではありません。
糖尿病
糖尿病は、インスリンの不足や働きの低下によって血糖値が高い状態が続く病気です。海外の大規模な診療データでは、ミニチュアシュナウザーは糖尿病の発症リスクが高い犬種のひとつとして報告されています。
犬の糖尿病には体質や遺伝的な要因のほか、慢性膵炎やホルモン異常など複数の要因が関係します。肥満や特定の食品だけを直接の原因とすることはできず、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
白内障・進行性網膜萎縮症(PRA)
ミニチュアシュナウザーでは、白内障や進行性網膜萎縮症(PRA)などの眼疾患にも注意が必要です。白内障は、目の中でレンズの役割をする水晶体が濁り、視力に影響を及ぼす病気です。
進行性網膜萎縮症(PRA)は、光を感じ取る網膜が徐々に変性し、視力が低下していく病気の総称です。
ミニチュアシュナウザーでは遺伝的な背景が知られている眼疾患もありますが、詳しくは後述する遺伝性・先天性疾患の項目で解説します。
シュナウザー面皰症候群
シュナウザー面皰症候群は、主に背中の中央付近に面皰(コメド)と呼ばれる黒いブツブツができる皮膚疾患です。ミニチュアシュナウザーで特徴的にみられる毛包の角化異常として知られています。
フケや脱毛を伴うことがあり、二次的な細菌感染によって赤みやかゆみが生じる場合もあります。似た症状を示すほかの皮膚疾患もあるため、見た目だけで判断することはできません。
病気のサインと動物病院を受診する目安
病気の初期には、食欲や元気、排泄など、日常のちょっとした変化として症状が現れることがあります。いつもと違う状態が続いている、症状が徐々に強くなっているといった場合は、早めに動物病院へ相談しましょう。
一方で、排尿できない、ぐったりして反応が鈍いなど、緊急性の高い症状もあります。様子を見てよいか迷う場合も、自己判断で長く待たず、動物病院へ連絡して指示を受けることが大切です。
早めに受診したい体調の変化
食欲が落ちている、元気がない、嘔吐や下痢を繰り返す、水を飲む量や尿の量が明らかに変わったといった状態が続く場合は、早めの受診を検討しましょう。
頻繁に排尿姿勢をとる、尿に血が混じる、排尿時に痛がるといった変化は、尿路結石などでみられることがあります。
また、目が白く濁って見える、暗い場所で動きにくそうにする、背中に黒いブツブツや赤み、脱毛がみられる場合も、一度獣医師に確認してもらうと安心です。
こうした症状だけで病気を特定することはできません。軽い変化に見えても、繰り返す場合や悪化している場合は受診につなげましょう。
すぐに受診が必要な症状
排尿姿勢をとっているのに尿がほとんど出ない、またはまったく出ない場合は、尿道が詰まっている可能性があります。尿道閉塞は短時間で状態が悪化することがあるため、速やかな受診が必要です。
何度も激しく吐く、強い腹痛があり動けない、ぐったりして呼びかけへの反応が鈍い、意識を失う、けいれんする、呼吸が苦しそうといった症状がみられる場合も、緊急性が高いと考えられます。
また、歯ぐきが白っぽい、立てないほど衰弱しているなど、明らかに普段と違う状態がみられる場合は、時間帯を問わず受診できる動物病院への相談を検討してください。
病気の予防・早期発見につなげる健康管理
ミニチュアシュナウザーにみられやすい病気のなかには、日常生活だけで完全に防ぐことが難しいものもあります。
一方で、食事や体重、水分摂取などを適切に管理し、日頃から体の変化を確認することは、健康維持や病気の早期発見につながります。
特別なことを一度だけ行うのではなく、毎日の生活のなかで無理なく続けられる健康管理を意識することが大切です。
食事と体重を適切に管理する
年齢や運動量、体格に合った総合栄養食を適量与え、適正な体型を維持することが健康管理の基本です。フードだけでなく、おやつや人の食べ物を含めた1日の摂取量にも注意しましょう。
ミニチュアシュナウザーは高トリグリセリド血症や膵炎への注意が必要な犬種であるため、脂肪分の多い食べ物や高カロリーなおやつを習慣的に与えすぎないことも大切です。
ただし、健康な犬すべてに低脂肪の療法食が必要なわけではありません。食事内容を大きく変更する場合や、血液検査で異常を指摘されている場合は、獣医師と相談しながら調整しましょう。
水分摂取と排尿の状態を確認する
尿路の健康を保つためにも、いつでも新鮮な水を飲める環境を整えておきましょう。水飲み場を複数用意したり、こまめに水を交換したりするなど、自然に水分をとりやすい環境をつくることが大切です。
また、普段から尿の回数や量、色などを把握しておくと、変化にも気づきやすくなります。飲水量や尿量がいつもと大きく異なる状態が続く場合は、健康状態を確認するきっかけにしましょう。
皮膚や目の変化を日常的にチェックする
ブラッシングや日常の触れ合いを利用して、背中を中心に皮膚の赤みやブツブツ、フケ、脱毛などがないか確認しましょう。
被毛に覆われている部分は異変を見落としやすいため、毛をかき分けながら皮膚を見る習慣をつけておくと安心です。
目についても、濁りや充血、目やにの増加などがないか普段から確認しておきましょう。
見た目だけでなく、暗い場所で動きにくそうにしていないか、物との距離をつかみにくそうにしていないかなど、行動の変化にも目を向けることが大切です。
定期的に健康診断を受ける
高トリグリセリド血症のように、初期には目立った症状が現れにくい異常もあります。
元気に過ごしているときから定期的に健康診断を受け、体重測定や身体検査に加えて、必要に応じて血液検査や尿検査を行うことが早期発見につながります。
検査内容は年齢や既往歴、これまでの検査結果によって異なります。超音波検査などの画像検査についても一律に行うのではなく、症状や健康状態に応じて獣医師と相談しながら必要な検査を受けましょう。
ミニチュアシュナウザーの遺伝性・先天性疾患
ミニチュアシュナウザーには、遺伝的な要因が発症に関わる病気が知られています。
遺伝性疾患は親から受け継いだ遺伝的な要因が関係する病気で、先天性疾患は生まれた時点ですでに存在している異常を指します。そのため、「遺伝性」と「先天性」は必ずしも同じ意味ではありません。
遺伝的な素因があっても必ず発症するとは限らず、病気によって遺伝の仕組みや発症のしやすさも異なります。犬種として知られている疾患や、検査で確認できる範囲を正しく理解しておくことが大切です。
注意したい遺伝性疾患
ミニチュアシュナウザーで知られる遺伝性疾患のひとつに、先天性筋緊張症(ミオトニア)があります。
筋肉を収縮させたあとにうまく弛緩できなくなる病気で、動き始めに体がこわばる、歩き方がぎこちない、立ち上がりにくいといった症状がみられることがあります。
この病気では、骨格筋の働きに関わるCLCN1遺伝子の変異が確認されています。原因となる変異を両親から受け継いだ犬で発症する常染色体劣性遺伝の疾患として知られています。
また、ミニチュアシュナウザーでは、先に紹介した白内障など一部の眼疾患にも遺伝的な背景が知られています。
遺伝性疾患といっても発症時期や症状はさまざまで、生まれた直後には異常が分からず、成長してから症状が現れるものもあります。
遺伝子検査や健康検査でわかること
遺伝子検査では、検査対象となっている特定の遺伝子変異を保有しているかどうかを調べることができます。
病気によっては、検査結果から発症に関わる変異を持たない「クリア」、変異を保有する「キャリア」、発症に関わる変異を両方から受け継いだ状態などを確認できます。
ただし、遺伝子検査ですべての遺伝性疾患を調べられるわけではありません。
検査の対象になっていない遺伝子変異や、複数の遺伝的・環境的要因が関係する病気もあるため、検査結果だけで将来の健康状態を完全に予測することはできません。
また、眼疾患などでは遺伝子検査だけでなく、獣医師による身体検査や眼科検査などが重要になる場合があります。
子犬を迎える際には、可能であれば親犬がどのような遺伝子検査や健康検査を受けているかを確認しておくと、健康状態を考えるための参考になります。
ミニチュアシュナウザーの死因に関する報告
ミニチュアシュナウザーがかかりやすい病気と、実際に死亡原因となりやすい病気は必ずしも一致しません。
死因については、調査した地域や対象となった犬、死因の分類方法などによって結果が異なるため、特定の病気を一律に「最も多い死因」とすることはできません。
日本のペット霊園を利用した犬のデータをもとに死亡原因を調べた研究では、ミニチュアシュナウザーはほかの犬種と比べて、肝臓・胆のう・胆管・膵臓などに関わる「肝胆膵疾患」で死亡する割合が相対的に高い傾向が報告されています。
ただし、これはミニチュアシュナウザーの死因の大部分を肝胆膵疾患が占めるという意味ではなく、個々の犬が将来どの病気になるかを予測するものでもありません。
年齢を重ねるほどさまざまな病気の影響を受けやすくなるため、特定の病気だけに注意するのではなく、全身の健康状態を継続的に確認していくことが大切です。
まとめ
ミニチュアシュナウザーと暮らすうえでは、犬種としてみられやすい健康上の傾向を知りつつ、必要以上に不安にならないことが大切です。
病気の発症には遺伝的な要因だけでなく、年齢や体質、生活環境などさまざまな条件が関係するため、犬種名だけで将来の健康状態を決めつけることはできません。
日頃から食欲や元気、排泄、体重、皮膚や目の状態などを確認し、普段との違いに気づけるようにしておくことが早期発見につながります。
また、外見だけでは分かりにくい異常もあるため、健康なときから定期的に動物病院で状態を確認しておくと安心です。
愛犬ごとの体質や年齢に合った健康管理を続け、気になる変化があれば早めに獣医師へ相談しながら、健やかな生活を支えていきましょう。



