嗅覚を刺激することで犬の行動が変わる?!
アロマセラピーや様々なアロマグッズ、犬のための製品などもたくさん市販されていますね。言うまでもなく犬は嗅覚の発達した生き物ですから、香りや匂いが犬の心や体に影響を与えることは不思議ではありません。
このたび、イギリスのハートプリー大学の研究チームによってアニマルシェルターに保護されている犬たちに嗅覚刺激を与えることで、犬の行動にどのような影響が現れるかという研究の結果が発表されました。
アニマルシェルターのような保護施設は犬にとっては刺激が乏しくストレスの多い場所です。刺激のない生活は犬の脳の働きを衰えさせ、問題行動や譲渡率の低下にもつながるため、保護犬に適切な環境刺激を与えることは保護施設の大きなテーマのひとつです。
嗅覚刺激は実用的かつ効果的だと考えられるのですが、意外なことに犬と嗅覚刺激の研究はあまり多くはないのだそうです。
それだけに今回発表されたこの研究結果の内容はとても興味深いものです。
保護施設の犬と4種の匂いで実験
実験に参加したのはアニマルシェルターで飼育されている15匹の成犬です。
使われた匂いは以下の4種類です。
- ココナッツ
- バニラ
- バレリアン
- ジンジャー
アロマセラピーに使われるようなエッセンシャルオイルではなく、食品としての自然な匂いを採用しています。
4種類の匂いを染み込ませた布と無臭の布を犬に直接嗅がせて、匂いを嗅いだ後の犬の行動を記録観察するというものです。
セッションは1日2時間、翌2日の間を空けて計3日間行われました。
それぞれの匂いの効果は?
4種類の匂いと無臭の布を嗅いだ後の犬の行動には明らかな違いが観察されました。
ココナッツ、バニラ、バレリアン、ジンジャーの4種類の匂い全てが、犬が犬舎の中をウロウロ歩き回ったり吠えたりする行動を減少させました。これらの行動はストレスの指標となるもので、犬のストレスレベルが低下したことが考えられます。
またココナッツとジンジャーの2種類は、犬の睡眠時間を増加させました。
バレリアンは薬用のハーブとして鎮静効果や不眠の緩和に使われるものですが、匂いのみの場合にはココナッツとジンジャーの方が睡眠時間を増加させたのは少し意外な感じです。
いずれにせよ、4種類の匂いの嗅覚刺激は保護犬たちにとってポジティブな効果があったことがわかりました。
まとめ
イギリスの大学による研究で、ココナッツ、バニラ、バレリアン、ジンジャーの嗅覚刺激が保護施設の犬の精神を落ち着けるポジティブな影響があることがわかったという結果をご紹介しました。
ストレスを示すウロウロ歩きや吠え行動が減少することは、シェルターの訪問者に良い印象を与え、譲渡率をアップさせる可能性がありますし、何より犬の福祉の向上につながりますので、この研究が保護施設での嗅覚刺激の使用を後押しするものになりそうです。
この結果は一般家庭でも参考にできそうなのも嬉しいですね。肉球に香りの良いココナッツオイルを塗り込んだり、バニラやジンジャーの香りのハーブティーをスプレーに入れて犬のベッドなどにシュッとひと吹きなどの使い方ができそうです。
バレリアンはハーブティーやハーブチンキなどが市販されていますが、ちょっとクセのある香りなので、お気をつけください。
犬にとって一番大切な感覚である嗅覚、こういう方法で刺激する手もあるということは覚えておきたいですね。
《参考》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159118300297