犬が知らない人よりも飼い主を選ぶのは「時と場合」による!?
犬と暮らしている愛犬家なら、自分の犬は他のどんな人よりも常に自分のことを選んでくれるはずと思いますよね(思いたいですよね?)。ところが、そんな愛犬家たちの夢を壊すような実験と研究の結果が発表されました。
アメリカのフロリダ大学とアリゾナ大学の研究者によって行われた実験によると、普段は飼い主のことが大好きな犬でも「どちらか好きな方に行きなさい」と選択肢を与えられると、時と場合によっては飼い主を選ばないことがあったのだそうです。
犬と人間の関係性を確認するためのこの研究の詳細をご紹介します。
気になる実験の概要は?
実験は3つのパターンで行われました。参加した犬は数十匹にものぼり、家庭犬のグループとアニマルシェルターの保護犬のグループがいました。犬たちの年齢はさまざまですが、全員が6ヶ月齢以上で、飼い主のいる家庭犬は少なくとも4ヶ月以上その飼い主と暮らしている犬たちです。
実験1「家庭犬が自宅で」
最初の実験は、家庭犬たちが対象で場所はそれぞれの自宅です。犬たちは自由に振舞うことができ、部屋の中には飼い主と、もう一人の知らない人がいます。人間は犬が自分からアプローチしてきた時間の間は撫でても良いというルールです。
多くの犬は飼い主の方に視線を向けるものの、飼い主に近づいて側にいた時間の平均はアプローチ時間全体の3分の1でした。飼い主よりも知らない人にアプローチする犬が多かったんですね。
実験2「家庭犬が研究室で」
実験1と同じことを、犬にとっては未知の環境である研究室で行いました。今度は飼い主の側で犬が過ごした時間の平均がアプローチ時間全体の約80%という結果でした。多くの犬がほとんどの時間飼い主の側にいたということです。
実験3「保護犬が2人の知らない人と」
3つ目の実験は対象が保護犬なので飼い主はいません。犬にとってどちらも知らない2人の人と部屋に入ります。犬は自由に好きな人を選ぶことができるのですが、部屋の中で数分過ごすうちに、ほとんどの犬がどちらか一人の人と即座に結びつき、ずっとその人の側にいました。
犬は好き嫌いだけで人間に近寄るわけではない
実験1と2の結果から考えられることは、自宅という慣れ親しんだ安心できる場所では見知らぬ人に近づいてみる=好奇心や探究心が優先する。反対に、未知の環境では安全性が低いと判断して、より安心できる飼い主の側にとどまったということです。
「そうか、飼い主より知らない人を選んだのはそういうわけか」とちょっとホッとしますね。
犬の選択は、彼らが抱いている感情や周りの環境によって変化します。臆病な犬であれば、どんな状況でも常に飼い主の側を選ぶかもしれないし、自信に満ちた探究心旺盛な犬は新しい人に近づいてみることを好みます。
実験3の結果からは、他に判断の決め手がない時に何かを選択する時には、本能が動機や行動を決定するのに役立っていると考えられます。
まとめ
飼い主を含む2人の人間のうち、犬がどちらでも好きな方にアプローチしても良い時、必ずしも飼い主を選ぶわけではないという、ちょっとショックに聞こえる研究の結果をご紹介しました。
けれどもそれは犬の好き嫌いに基づいての選択ではなく、犬が安心を感じられる馴染みの環境では探究心を優先させて見知らぬ人にオープンになり、慣れない不安な状況では安心できる飼い主の側にいることを選ぶということでした。
新しい環境に来た時には家庭犬も保護犬も、2人の人間のうちどちらかをはっきりと選択するという結果は、犬を訓練する時など多数の人間が行うのではなく特定の人間が担当する方が良いなどの判断の基準になります。
タイトルで脅かしてしまいましたが、犬はやっぱり飼い主が大好きでいてくれるようですね!
《参考》
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jeab.280
http://www.iflscience.com/plants-and-animals/would-your-dog-really-choose-you-over-anyone-else-that-depends-/all/