大きな音を怖がる犬は体に痛みを抱えている場合がある
雷や花火などの大きな音や突然の騒音に対して、とても嫌がったり怖れたりするという犬は多いですね。
イギリスのリンカーン大学とブラジルのベロオリゾンテ大学の動物行動学の研究者が、このような音に強く反応する犬の健康状態を調べ、筋肉や関節になんらかの痛む箇所を抱えている犬たちは騒音に対する感受性がより高いということが発見されました。
犬の騒音に対する感受性と体の痛みの相関関係についての研究をご紹介します。
2つのグループの「音が怖い犬たち」の比較
騒音への感受性と体の痛みの関係を調べるために、研究者は20匹の犬の臨床記録を調査しました。犬は似た傾向の犬種で同年代、みな大きな音や突発的な音を怖がる傾向のある個体たちです。そのうちの10匹のグループは筋肉や関節に痛みを伴う炎症などがあると診断された犬たちで、残りの10匹はそのような診断を受けていない犬たちです。
2つのグループの犬たちにいくつかの種類の騒音を聞かせたところ、どちらのグループの犬たちも震えたり隠れたりという行動を見せました。
しかし痛みがあると診断されているグループの犬は恐怖の度合いがより強く、騒音に関して嫌な経験をした特定の場所を徹底して避ける行動が見られました。
また痛みがあると診断されているグループの犬たちが騒音に対して怖がる行動を見せはじめた時期が、痛みのないグループに比べて平均して4年遅いこともわかりました。
「大きな音を怖がる犬は病院で検診を受けて欲しい」という研究者の言葉
2つのグループの犬たちの行動の観察から、騒音によって犬が緊張することで、すでに炎症を起こしている筋肉や関節がこわばったり余分なストレスがかかることで痛みが増幅したのではないかという仮説が立てられました。
さらに犬自身が痛みと騒音を関連付けるようになり、騒音に敏感になったり以前に騒音を聞いた場所を避けるようになるのではないかと考えられています。
騒音に対して怖がる行動が始まった時期が、痛みのある犬の場合は健康な犬に比べて平均して4年遅かったというのは、犬が一定以上の年齢になってから問題行動を見せた場合には、まず体の不調を考慮する必要があるという従来から言われている提案と一致します。
実際に、痛みがあると診断された犬たちの治療が進み症状が治まってくると、騒音に対する恐怖行動も改善されたと報告されています。
若い頃はそんな傾向はなかったのに、犬が雷や飛行機、バイクの騒音などに強い恐怖を見せるようになった場合、まずは動物病院で体のどこかに痛い箇所や炎症を起こしている場所がないかの検診を受けてみて欲しいと研究者は述べています。
まとめ
イギリスとブラジルの研究者による、犬の騒音感度と体の痛みの相関関係の研究をご紹介しました。
大きな音を怖がる犬の全てが筋肉や関節に炎症や痛みがあるというわけではありません。
けれども以前はそんなことはなかったのに、犬が大きな音を異常に怖がったり音がする場所を避けるようになったら、どこか痛いところがある可能性が考えられます。
大きな音で緊張したりストレスを感じることで痛みはさらに強くなる可能性もあります。犬の聴覚は人間よりもずっと優れていますから、ストレスも強いと考えられます。
犬は言葉を話すことができません。痛いところや体の不調があれば、いつもと違う様子で訴えてきます。以前よりも攻撃的になったり吠えたりするようになったら体の不調を疑ってみようというのはよく言われていますが、大きな音を怖がるようになることにもそんな意味が隠れている場合があるんですね。
犬が全身で訴える痛みや不調のサイン、すべて正確に読み取ることはできなくても「何か以前のこの子とは違う、こういう行動をする犬じゃなかった」ということがあれば、まず最初に医療的なチェックをすることの大切さを多くの方に知って欲しいと思います。
今回紹介したような研究結果は、私たち一般の飼い主にとっても犬への理解を深めるためにありがたいことですね。
《参考》
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2018.00017/full