犬が引き起こす怪我を防ぐために覚えておきたいこと

犬が引き起こす怪我を防ぐために覚えておきたいこと

犬と暮らしていると、咬傷事故とは違う思わぬ場面での思わぬ怪我をすることがあります。そういう怪我を防ぐために、過去の事例や注意事項をご紹介します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

「犬が引き起こした怪我」の経験はありますか?

飛びつこうとするビーグル

犬が引き起こす怪我と言うと、犬に咬まれるということが一番最初に頭に浮かぶかもしれませんが、今回お話するのはそれとは別のアクシデント的な怪我のことです。犬が飛びついてきて尻餅をついてしまった、散歩中に転んでしまった、などは実際に経験したり冷やりとしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

アメリカやイギリスでの傷病記録の統計によると、転倒事故や骨折などに犬が関連している事例は思っている以上に多いようです。

そのような事故を防ぐために、また被害を最小限に抑えるために注意することをご紹介します。

犬が関連する事故はこんなに多く起こっている!

ジャックラッセルテリアに引っ張られる女性

アメリカでは2009年に政府機関の疾病管理センターが過去5年間の救急病院で怪我の手当を受けた人のデータを発表しました。そのデータによると毎年平均して約87,000件のペットが関連する転倒事故が起こっており、その9割近くが犬によるものでした。

怪我の中で最も多かったのは骨折で、次に挫傷が続いていました。ちょっと変わったところでは、犬が庭に掘った穴に落ちて足首を骨折というものもありました。

またイギリスで2012年に発表されたリサーチによると、救急施設や病院での2ヶ月間の聞き取り調査で37人の犬に関連する負傷の患者が確認されました。そのうち26件が骨折で、怪我が起こったシチュエーションで一番多かったのは犬に引っ張られて転んだというものでした。

日本で咬傷事故以外の犬が関連する怪我についての統計はないのですが、犬が吠えたことで通行人が驚いて転倒骨折などした場合の訴訟例は数多く起こっています。犬が咬むこと以外にも管理するべきリスクを意識しなくてはいけないですね。

犬が引き起こした怪我、具体的にはこんな事例が

手当をする医師と包帯を巻かれた腕

事例1

長い間歴代の大型犬と暮らしてきたAさんはいつものように愛犬のロットワイラーと散歩をしていました。リードの持ち手は指に軽く引っ掛けていました。前方に別の犬連れの人が見えた時に「まあ大丈夫かな」と思った次の瞬間、愛犬が走り出しAさんの腕は変な方向にねじれたまま道路に転倒していました。

Aさんは肘の脱臼と利き手の指を複数骨折し、日常生活には支障がないくらいには回復したものの握力の低下と握りこぶしを作ることができなくなってしまいました。

事例2

Bさんはゴールデンレトリーバー2匹の飼い主。左右両方の手の一匹ずつのリードを持って散歩していた時に、犬たちがリスを見つけて左右に分かれて走り出しBさんはリードを離すわけにはいかず前方にあった樹に直撃して鼻を骨折してしまいました。

まるで漫画のような光景ですが、現実に起こると笑い事ではありません。

事例3

Cさんが自宅でスニーカーを履く準備をしていたところ、愛犬のジャックラッセルテリアが「散歩に行くの!?」と全速力で走ってきて、Cさんの手の小指に思い切り頭をぶつけました。その瞬間ボキッと鈍い音がして、Bさんの指の骨は折れていました。

犬が引き起こす怪我は大型犬だけとは限らないという例です。

調査に協力した医師によると、犬が引き起こす怪我で一番よく見られるのは手の指と手首のひどい骨折だということです。

犬といっしょにいる時に思わぬ怪我を避けるためにはどうすればいい?

犬の散歩中に電話をする女性

犬が引き起こす人間の負傷の多くは人間の判断ミスや不注意によるものだと言われています。
具体的にどんなことに気をつけなくてはいけないかを見ていきましょう。

  • できる限り早い段階で犬の訓練を開始して、きちんと最後まで修了させる
  • 犬だけでなく、飼い主自身も訓練に参加して正しい犬の扱い方を学ぶ
  • 犬の体格やサイズにあったリードやハーネスを選ぶ
  • 犬のリードは常に指先ではなく、てのひらでしっかりと握る
  • スニーカーなど犬の散歩にふさわしい靴を履く
  • 伸縮リードは、使う場所と時を選んで正しい使い方を調べてから使う
  • 「よその犬が大丈夫だから」「過去に大丈夫だったから」など犬が常に同じ行動をすると想定しない
  • 犬の散歩中にスマホの操作をしない
  • 散歩中は他の犬、猫、子供、車、道の状態、愛犬のボディランゲージなどに気を配る

ひとつひとつを見ると当たり前のことなのですが、当たり前のことをしっかりと守ることが怪我を防ぐことにつながりますね。

まとめ

柴犬の仔犬

犬が人間を咬むということとはまた違う、犬が引き起こしてしまう怪我の事例や件数の多さをご紹介しました。

心当たりのあることがたくさんありますが、具体的な事例を見るとあらためて背筋が寒くなったり、気持ちが引き締まったりしますね。

犬との日常のちょっとした不注意や油断が思わぬ大きな怪我につながってしまうのは他人事ではありません。

当たり前だと思っていることもしっかりと確認しながら、楽しく安全に犬との暮らしを楽しみたいですね。

《参考》
https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5811a1.htm
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22310043
http://www.dogside.org/html/hoken.html

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